心に龍をちりばめて (新潮文庫)/新潮社

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[STORY]
小柳美帆はエリート記者の黒川丈二との結婚を目前に、故郷の福岡で同級生の仲間優司と再会する。中学時代「俺は、お前のためならいつでも死んでやる」と唐突に謎の言葉を口走った優司。今その背中に大きな龍の刺青と計り知れぬ過去を背負っていた。時間や理屈を超え、二人の心に働く不思議な引力の正体とは――。恋より底深いつながりの核心に迫り、運命の相手の存在を確信させる傑作。人の業であったり、欲望を色濃く描きつつ、
心の支えを自分以外の誰かに求めることの難しさ、不確かさが表現されていた。
「自分なんてどうだっていい――美帆は肝心なときは必ずそう思う。意志の力によってではなく、ごく自然に思える。胸の芯に巣食う投げやりな心が、いつか人生を台無しにしてしまいそうでたまに恐ろしくなる。一方で、それが自分のほんとうの強さのような気がするときもあった」(p.133)
この部分を読んだ時、ドキッとした自分がいた。
「自分なんてどうだっていい」という投げやりな心が空恐ろしくもあり、
でもこれが自分の強みなのかもしれないと思う瞬間が、まさに私にもあるから。
美帆と優司の恋は、「好き」なんて言葉が口にされることなく進んでいったけれど、
お互い一緒にいるのが当たり前のような感じで、その揺るぎない関係性に憧れた。
★★☆☆☆