吉祥寺駅地下にて、久しぶりにショートケーキを食べた。

ショートケーキとは名ばかりで、見た目は白無垢のような白いクリーム上にスリムな苺がスタイル良くのったモンブランのようである。しかも中身には可愛らしいお楽しみ付きだから、退屈気味の私をなおときめかせた。

 

 

お菓子とはなんとも可愛らしい響きだろうか。

 

祖父と手をつないで甘い甘いお菓子を両手にいっぱい提げて、

鼻歌混じりの帰り道を歩いたのはいつの日か、

その甘さを思い出せば懐かしくなる。

甘さが少しだけ、苦さに変わる。

 

苺の酸っぱさがしばし思い出に浸った私を引っ張り返してくれた。

酸味の後に、ほのかな水みずしい果汁の甘さが舌にしびれて、爽快だった。

そういえば、爽やかな世とかいて、そよという名前の女の子がいた。良い名前だと思った。

辛いこともある世の中だけど、甘みだけではないけれど、トランプ氏の何万倍のような壮大な力に誰かが簡単に揺られてバラバラになってしまうこともあるけれど、それでも私たちは爽やかな世の中をこれからも見ていけるのだろうか。

苺の酸味と果汁の甘みが、ただの壮大な空想になってしまったけど、本当にショートケーキは美味しかった。

それは、事実である。

 

ショートケーキの『ショート』、実は『脆い、崩れやすい』などというような意味合いが込められているらしい。なるほどな、たしかにモンブランより脆そうだ。

それを聞けば聞くほど、先ほどの甘く幸せで、爽やかな世界がいと脆そうに感じてならない。

まあ、そんなの心配するだけの無駄であるが。

 

で、美味しいものを食べたら、何か思いついたので、暇な人は拝見ください↓

 

―ショート ショート ケーキ―

あの子が泣いていたのは、いつのひだっただろうか、もう思い出せない。

僕の散らない思い出が甘く腐ってく。

 

握ったつもりだと思っていた手が離れていた。冷たかった。

確かに温かみを感じていたはずなのに。

 

あの子はショートケーキに似ている。

綺麗で創りものみたいで、甘くて、酸っぱくて。

思い出しやすい味だ。

だから辛い。

 

--私が病気なんて嘘だ、みんなみんな悪いウソなんだよ。

             だからそんなに心配しないで、大丈夫だから。---

 

何がウソなものか、美しさ、儚さ、無邪気さ、優しさ、ぜんぶぜんぶ本物だったじゃないか。

チョコレートの濃厚な脂っぽい甘さでハイになって誤魔化したって、忘れられない。

必ず君の思い出が、僕をビターに染める。いつだってそうだった。

嘘つきの君の甘さがほんとのウソを全て甘く塗り替える。

 

だからほらまた、苦い雨が降った。

 

そうだ、君は『ショートケーキ』なんかじゃ足りない。

 

--ショート(儚くて)、ショート(脆い)、ケーキだ。--

 

 

 

完。

 

はい、閲覧有難うございました。