タオ島行きの船に何とか乗り込めたまではよかった。

しかし、キャメロンハイランドから30時間の大移動だったため、ここにたどり着くまでにかなりの体力気力を消耗してしまったのは、すでに述べました。


夜中一度、真っ暗に消灯された船中を夢遊病者のようにトイレに起きた以外はがっつり熟睡して朝日とともに目が覚めた。

よく寝たおかげか、わりと清々しい寝起きだったのだけど、足の下に敷いて寝てたバックパックを引き寄せたとたん、はっとする。

そう、あの重かったはずのバックが軽いのだ。。


もうその時の心情は、もう一度寝て夢だと思いこもうとしたほど。

でも案の定というか、、バックの中をどんなに探しても私のラップトップコンピューターや携帯、周辺機器が入っていた袋がない。。がっぽり抜かれていたのだ。。


うぉぉぉぉ~~~!!! やってしまった。。寝ている間か、それとも夜中に一度トイレに行った隙に取られたのか。。

違う意味で明日のジョーごとく真っ白になった。


でも、そうしていられまいと思い、すぐさま船員に警察に連絡するよう言いに行ったが、警察なんてかかわりたくないのか、そういう盗難ごとは日常茶飯事だからかまってられないのか、英語まったくわからない振りして、聞く耳もたない。


くそーーー!!と思っていると、英語の少し出来る地元の人が、事情を察して「船の中ではどうにもならないから、島に着いたら警察に行くといいよ。」と、わかりきった助言をくれる。

私も一度海外で盗られた物が戻ってくるとは思ってはなかったが、しかし島に着くまでどーにも出来ない状況はフラストレーション溜りまくりで、、あれは体に悪かった。


4月16日朝7時半着岸

念願のタオ島について私が一番最初におこなった事は、もちろんポリスステーションを捜し歩くとこだった。港の周りにいる地元の人に聞きながら歩くが、みな「あー、あっち」と指差すだけで心もとない。。

まだほとんどの店が閉まっている道をテクテク歩いていると、前からドイツ人っぽいおじさんがレンタルバイクに乗ってやってきた。

こいつならば英語できるだろう!とすぐさま呼び止め、警察署の場所を聞くと、「あそこはこっからちょっと遠いよぉ・・まぁあの道曲がって道なりに進めば着くけど。」と言って去って行った。

そうか・・・遠いのか、、タクシーも通らないしなぁ。。と思って歩いていると、そのドイツ人のおじさんが引き返してきて、警察まで乗っけてってあげようとスクーターの後ろに乗っけてくれた。

ここまで来たらもう怖いものはない。が、未舗装のジャングルの中みたいな道をモトクロス並にぶいぶい走っていく。おいおい・・こんな所に本当に交番あるのかよぉ・・と不安になってきた頃に、「あそこだよ」と降ろしてくれた。

本当に茂みと言うかジャングルの中の空き地みたいな場所に立ってる交番だった。

ドイツ人おじさんにお礼を言って、いざその交番に入ったが、早番のおまわりさんは英語がほとんど出来なくて「英語のもっと出来る同僚がいる時間に出直してくるといいよ」と返される。。苦労して探してきたのに!!


でも、キャメロンハイランドから出て丸二日シャワーも浴びれてないし、一刻も早く荷物を降ろして汗臭いTシャツを着替えたかったので、そのおまわりさんに教えられたジャングル道をひたすら宿目指して歩いた。

てくてく30分歩いてようやくバンガローの宿がたくさん見えてきた。

疲れはてていたけど、なぜか意固地になり、英国人バックパッカーに習い、4、5件ほど宿を回って確認して歩いた。最終的にはいい感じに開けたビーチ沿いでセブンイレブン(東南アジアではコンビニといえばほぼセブンしかないのです。半島制圧してる感じだった。)にも程近いバンガローに落ち着いた。

でもどこの宿でもそうだったけど、スタッフが無愛想でホスピタリティーのかけらもない。

何が微笑みの国だ!!と内心悪態をついいたほど。。


まぁそんなこんなでも、ようやく宿で荷物を降ろしシャワーを浴びてさっぱりすると、荷物を取られた悔しさから少し開放された。

確かに取られたのは悔しいが、もっと酷い事にだってなりえたのだから、と。

世界中を旅してる人の中には石で頭をぶたれて倒れている間に荷物強奪されたり、飲み物に睡眠薬入れられて昏睡してる間に身包み剥がれたりって話も聞いたし。

それに比べれば、私の場合は不幸中の幸いというか、怪我もなく、取られた携帯もパソコンもパスワードを入力しないと立ち上がらないように設定してるし、取られたそれらも海外保険で全てカバーしてもらえるのだから、悔しがってるより、これをこれからの教訓にすれば良いのだと思えてきた。


少し休んだ後、テレフォンカードをセブンイレブンに買いに行き、親に電話して携帯の使用停止をドコモに連絡するようお願いした。そして、その後もう一度30分歩いて交番に向かった。

今度は少しまともな英語を話すおまわりさんが駐在してて、保険を申請するのに必要な盗難届けのレポートを作成してくれた。ただ私が英語で書いたレポートをおまわりのお兄さんがタイ語で書き直す、という至って単純な作業だったけど。

おまわりさんが話すには「ここに勤務し始めて3ヶ月もたたないけど、僕が担当しただけで君で4人目だよ。あのスラーターニーからのナイトボートで盗難されたと言って来たの。」と言う。なんじゃい、それ!泥棒船やん!と突っ込むと、「いやー近いうち立ち入り検査しないとなーと思ってたところだったんだよねー」とおおらかにい言う。

腹が立つけど、そうとも知らず最終回の明日のジョーみたいな状態で船に乗り込み熟睡してしまった私も馬鹿だったのだ。。

やはり、ミチコさん、ゴートン、アレックスやバカボンまでが言ってたように『Lonly Planet』のガイドブックを持っておくべきだったのだ。。教科書みたいな英語ばっかの本だけど。

見知らぬ土地に行くにはまず正しい情報を得ておくのは大事なことなのだと身にしみて感じた。


そうこう話していると、欧米人のお兄さんが「あの~僕も用事がありまして・・」と肩を落としてやってきた。ああ・・そうか、あなたも昨日のナイトボートでやられたのですか。。

と、勝手に想像して、席を譲って私は交番を後にしたけど、間違いなく5人目の犠牲者だったんだろう。。きっと。


かよわい日本の女の子だけじゃなく、あんなガタイのでかい欧米人の男の人でも盗られるのだから仕方がないか、と私は肩の荷が少し下りて宿への帰路についたのでした。