おばあちゃん家から坂を下ったところに、
小さな池（沼？）がある。

昔はここにウシガエルがたくさんいて、
僕たちが大阪から帰ってくると、
地元に住んでいた従兄弟が
カエル釣りを教えてくれたりしたものである。

エサには蝉を使う。
つかまえた蝉を地面に叩きつけて、
気絶してるのを釣り針につける。
そしてそれを池に放り込むのである。

そうするとどこからともなく
カエルが近づいてきて、パクリと食う。

当時は「カエル飛び大会」
みたいなのがあって、
大きなカエルをつかまえると、
その大会に出場させていた。

地面に描かれた円の真ん中にカエルを置いて、
後ろからプレッシャーをかける。
そして3回ジャンプした距離を競うのである。

これはさすがに都会では
なかなか見れない競技であろう。

そんな思い出のあるこの池だが、
子どもの頃はなにか得体の知れないものが
住んでいるような気がしたものである。

茂みの奥に、巨大な何かがいるんじゃないか…。
そんな妄想を抱いていたものだから、
夜に池の前を通るのはちょっと怖かった。

今ではもうそんな妄想も抱かなくなったけど、
それはそれでちょっとさびしいものである。

僕が「何かいる」と思っていたあの頃は、
やっぱり何かいたんじゃないだろうか。

少なくともあの頃の僕は、
「何かがいる池」としてこの池を眺め、
この池とつきあっていたのだから、
僕に影響を与える「何か」は、
確かにこの池にいたことになる。

そういう「何か」を無視できるのが
大人になるということなのだとしたら、
大人の世界とはずいぶん
味気ないもののようにも思える。