4年社会 「郷土をひらく」 見沼代用水の開発に携わった井沢弥惣兵衛

(2006年の日記より抜粋)


1月10日(水)   「算数大好き井沢くん」
☆ 明日から4年社会では「見沼代用水」に入る。ここでは、江戸幕府の命を受けてわずか5ヶ月で60キロメートルに及ぶ用水建設を完成させた(陣頭指揮をとった)、井沢弥惣兵衛(いざわ・やそべえ)という人物にスポットを当てていくことになる。  
☆ ここでの学習は、主に「マンガ」である。明日は時代背景と井沢の幼少期のエピソード、あばれんぼう将軍吉宗との出会い、吉宗に頼まれて無謀とも言える難工事にとりかかる決心までを、すべてノートにマンガチックに丁寧に描いていく作業だ。
☆ 井沢少年のキャラクターを子どもの中に明確にイメージさせるため、「算数大好き井沢くん」というキャラクター設定をする予定。下のノートはなぐりがきだけど、黒板には丁寧に描きます。


☆ 明日の授業で、子ども達が井沢弥惣兵衛という人間に感情移入できるようになるか否か?あとは私のやり方にかかっている。
 

1月11日(木)   「算数大好き井沢くん・・・・・・その後」
 

☆ 授業の後、自分の板書を写真に撮った。            

☆ 今から380年前、武蔵の国・尾間木(いまのさいたま市)に、両側を台地にはさまれ、まん中に芝川という細い川の流れる、こんな土地があった。
☆ その二年後、この湿地に八丁堤というダムのようなものが作られた。しかし八丁堤の上流の村も下流の村も、相変わらず水不足に悩まされ、ダム撤廃を求める声が絶えなかった。
☆ こんなに水を貯めているのに、なぜ水不足に悩むのか?それはここの地形の特徴によるものだった。
☆ この土地は、すべて中心の芝川に向かって傾斜していた。(断面図を描いて説明)だから、真ん中をいくら水が流れても、それは使える水ではなかったのである。
☆ 話かわってその40年後、紀伊の国に算術の得意な少年がいた。ある日少年は父とともに寺に向かう途中、亀ノ川にさしかかった。この川が洪水の絶えないあばれ川であることを父に聞いた少年はこう言った。「川をまっすぐにして水を全部海に流してしまえば?」と。
☆ その30年後、少年はこの時の言葉を本当に実現した上に、亀池という灌漑池を作り、人々に感謝された。その少年の名前は井沢弥惣兵衛といった。
☆ その仕事ぶりを見て、当時のとのさま(紀伊藩主)が、大いに感心した。そのとのさまが、後の八代将軍吉宗だった。
☆ 和歌などよりも算術や馬術の好きだった吉宗は、同じく算術にたけ、仕事をバリバリこなす井沢という男に興味を持ったのだった。
☆ やがて将軍になった吉宗は、井沢を江戸に呼び、自分のもとで働かせた。
☆ ある日、吉宗は井沢にこう言った。「江戸は米がまだまだ足りない。もっと米がとれるようにできないものか? ・・・弥惣兵衛、おまえならできるはずじゃ。」
☆ 弥惣兵衛は考えぬいた。江戸の近くであそんでいる土地はないか?・・・・・・・・そして悪評高い見沼ため井に目をつけた。
☆ 「あの広い広い池を全部田んぼに変えてみよう!」
☆ その決心が大変な苦労の始まりだった・・・・・
☆ どんな苦労が待っていたのか?それは次回につづく。

☆ 明日の授業では、井沢弥惣兵衛のこのもくろみが、いかに実現困難なものであったか、という学習をする。はるか60キロメートル離れた利根川から、わずか5ヶ月で水を引いてこなければならないという条件。さらにその途中にはいくつかの川が行く手を阻んでいる。そこにはあきらめる条件しかころがっていない。それをやってしまった井沢という人間は、存在そのものが奇跡としか思えない。
☆ 来週は5ヶ月で60キロメートルの水路を作るということがいかに大変かを身体で実感する学習をする。つまり、学校所有の畑に区画をつくり、深さ1.1メートル幅8メートルの穴を、昔の土木用具を使って掘ってみるのである。この作業により、用水作りが気の遠くなるような仕事であるという実感を身体に持たせる、予定。

 

1月15日(月)       
☆  明日の4年社会で穴掘りをするため、学校の畑に9つの区画を作った。エリア全体で8M×7M、8mは見沼代用水の幅である。昔の道具に近いクワとジョレンを使って掘れるところまで掘ってみる。掘った土を運ぶ作業もやってみる。きついに決まっているので子どもから文句がいっぱい出ると思う。



 ☆  見沼代用水は60キロメートルを150日で掘った。ということは一日約400メートル。写真の地点からスタートして向こうに見える校舎を越え、その約5倍先の距離(近所の河原ぐらいまで)掘らなければならない。本当に信じられないような作業日程だ。

 

1月16日(火)        
☆  意外と子ども達は、穴掘りに熱中した。狭くていいから、とにかく深く掘るように言った。でも45分間で掘ることができた深さは、せいぜい50センチ程度だった。
   畑地なので、掘った穴をすぐに埋めた。埋める作業はあっけなく数分で終わった。教育委員会から借りた、昔の「たたき板」という道具で埋めなおした地面を叩いて
   固めた。片付け終えたあと、いつまでも残って何やら作業している3人組がいた。