完レポになりますので、閲覧にはご注意ください。
選択肢は記載しておりません。




♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.






私が意識を取り戻してから数時間後。
眠っていてもいいと言われたけれど参加したい気持ちを押し通し、今後についての話し合いの席についた。

流輝「今回の絵画は守れたが」
流輝「まだまなの博物館から盗まれた作品は取り戻せていない」
宙「ジュリアから取り戻すためには、アジトを調べないとね・・・」
健至「もしくは、トレードを持ちかけたところを襲うとかな」
流輝「いや、相手は銃なんてものを持ち出すやつらだからな。それは最終手段だ」
拓斗「何か策はあるのかよ」
流輝「今のところはゼロだな」
流輝「ただ、向こうは何故かレドーナの作品に執着している」
流輝「恐らくオレ達が保管している作品を盗みに入るだろう」
ボス「何より、予告状を出してまでブラックフォックスに関わりを持ってきたんだから」
ボス「また向こうから仕掛けてきそうだよね」
流輝「そうだな・・・。ジュリアも変なヤツだな」
流輝「オレたちを挑発するような真似をしなければ、もっと簡単に盗めただろうに」
宙「そうなんだよねー」
宙「日本に盗みに来たことがないから、接点があるとは言い難いし」
「有名だからじゃないでしょうか?」
流輝「まあ、それはあるかもしれないな」
(なんとしてでも取り戻したいのに・・・そうだ)
「ジュリアの故郷ってロシアなんですよね?」
流輝「そうだ」
拓斗「・・・ジュリアの故郷を調べれば何か手がかりが掴めるかもってことか」
ボス「・・・よし、じゃあこうしようか」
ボス「オレと宙、健至で黒狐に保管してある絵画を死守」
ボス「それから、流輝とたっくんとまなちゃんでロシアに調査に行ってきてよ」
「え・・・私もですか?」
流輝「おっさん、人選の根拠はなんだ」
(というか、簡単に流輝さんは仕事休めるのかな?)
ボス「相手の情報に触れた方がプランを立てやすいだろ?」
ボス「たっくんも向こうでジュリアに関しての情報をかき集めるだけかき集めて」
拓斗「で、こいつはなんでだよ」

蛭川さんが私を指す。

ボス「まなちゃんは休養もかねて」
ボス「少しジュリアから離れた方がよさそうだからロシアでゆっくり過ごして」
「・・・はい」
(私が焦っていること、見透かされてるんだろうな・・・)
流輝「オレと拓斗2人で十分だ。お前は来なくていい」
「え・・・」
「行かせてください、流輝さん」
流輝「オレに頼んでも仕方ないだろ。お前の体調次第なんだからよ」
「それなら大丈夫です。もう、どこも痛くありませんから」
流輝「あのな・・・治ってるはずないだろ?意識失うぐらいの衝撃だったんだからよ」
「それは・・・その、打ち所が悪かっただけなんで」
流輝「・・・それが問題だって分からないのか」
「・・・すみません。どうしても行きたいんです・・・」
拓斗「・・・オレたちの足を引っ張らないって約束できるなら来れば?」
流輝「おい、拓斗・・・」
「はい!私、頑張りますから!」
流輝「・・・・・・」
流輝「絶対、無理はするなよ」
「はい!ありがとうございます!」

大きな溜め息をつきつつも、流輝さんは私の同行を許してくれた。



そして数日後、ロシアに到着した私たちは、例の寄付金事件とジュリアとの関連性を調査するため、寄付をうけた孤児院をいくつかまわることにした。


施設の子供たちに、流輝さんが流暢なロシア語で何か話しかける。
すると子供たちはニコニコと笑顔で答える。

拓斗「何て言ったんだ?」
流輝「寄付金をくれる謎の人物は、僕たちのヒーロー!・・・だとよ」
「ヒーロー・・・」
拓斗「じゃ、そのヒーローを疑ってるオレたちは悪者か?」
流輝「そうなるな」
拓斗「好都合だ。オレは昔からヒーローが嫌いだったんだ」
流輝「ハハ!拓斗らしいな」

2人は笑い合っているけど、まさかそのヒーローのことを窃盗犯だと疑っているとは子供たちに言えるはずもなく、私たちは孤児院を後にした。


「結局、寄付している人物の正体は掴めませんでしたね」
拓斗「そうだな」
「でも、やっぱり子供たちにとってはヒーロー的存在なんですね」
「まあ、自分たちの暮らしを支えてくれているので、当然かもしれませんけど・・・」
流輝「・・・・・・」
「ね、流輝さん!」
流輝「ん・・・ああ、そうだな」
(流輝さん、さっきからずっとこんな感じ・・・)
流輝「それで、拓斗。次はどこに行けばいいんだ」
拓斗「ん・・・ここから一番近い孤児院は・・・ここだな」
流輝「よし。タクシー捕まえて行くか」
(・・・何となく、流輝さんの態度がいつもより冷たい気がする・・・)

私の気持ちに気付いているのかいないのか、流輝さんは黙々と、蛭川さんと次に向かう場所の打ち合わせをしていた。


「ふぅ、足パンパンです。疲れましたね」

いくつかの孤児院をまわり終え、私たちは宿泊先のホテルに到着した。

流輝「あ・・・疲れたし、オレ寝るわ」
流輝「夕飯は適当にそれぞれとるってことで」

流輝さんはひとり、ホテルの部屋へと向かって行ってしまう。

「あ、流輝さん・・・」
拓斗「・・・・・・」
拓斗「何か今のお前らキモい。その辺散歩して頭冷やしてこい」

そう言うと、蛭川さんは流輝さんの手から部屋のキーを奪い取る。

流輝「おい!」
拓斗「じゃーな」

蛭川さんは手を振りながら立ち去ってしまった。

流輝「・・・ったく、しょうがねーな」
「あの、疲れてるんだったら無理しなくても・・・」
流輝「エルミタージュ国立美術館でも行くか」
「・・・え?」
流輝「前から行きたがってただろ」
「・・・覚えていてくれたんですか?」
流輝「オレは無駄に頭がいい男だからな」
「流輝さん・・・!」
流輝「じゃあ、行くか」
(・・・よかった。やっぱりいつもの流輝さんだ)
(冷たく感じたのは、私の勘違いだったのかな?)
(最近、ジュリアのことで皆ピリピリしていたし・・・)

高まる気持ちを抑えつつ、私たちは美術館に向かった。


「わー・・・まさかこの目で本物が見られるなんて・・・」

歴史の中で磨かれてきた絵画に目を奪われ、感嘆の声が漏れる。

流輝「大げさすぎだろ」
流輝「ほら、あっちにも面白い絵があるぞ」
「あ、待ってください!」

先に歩き始めた流輝さんを追いかけながら、腕を絡める。

流輝「オマエは本当にオレのことが大好きだな」
「そう言う流輝さんだって、私の事大好きですよね?」
流輝「おい、この絵オマエにそっくりだぞ」
「ちょっと、無視しないで下さいよ」
「っていうか、これ老婆の絵じゃないですか!」

ムッとする私の顔を見て、心底可笑しそうに笑い出す流輝さん。

(こんな楽しい時間、いつぶりだろう・・・)
(最近はミッションでバタバタしてたから、デートなんて久しぶり・・・)

そう思いながら、流輝さんの顔を見つめていると・・・

「んが!」
流輝「顔。ニヤついてる」

流輝さんが私のほっぺたを摘み、イタズラっぽい笑みを向ける。

「りひはん・・・はらひてくらはいお・・・」
流輝「怒ったりニヤついたり、忙しい奴だ」
流輝「ここに拓斗がいたら、絶対キモいって言われてるぞ」
(確かに、蛭川さんなら絶対言うだろうな・・・)
「でも、楽しくてついニヤついちゃったんです」
流輝「お、可愛いこと言ってくれるじゃん」
流輝「そうだな・・・オレもまなといると楽しいよ」

流輝さんは優しく微笑むと、そっと私の頭を撫でた。

流輝「日も暮れてきたし、そろそろ戻るか」
「はい」

私たちは美術館を後にした。


横を歩く流輝さんに、手を繋ごうと手を差し出す。

(あれ・・・)

流輝さんは何か考え事をしているのか、私の行動に目が向いていないようだった。

(いつもならすぐ気付いてくれるのに・・・)
(仕方ない、諦めよう)
「はぁ・・・」
流輝「・・・溜息なんて吐いてどうかしたのか?」
「いえ、なんでもありません。ちょっと疲れただけです」
流輝「・・・そうか」

流輝さんの反応に、なぜか胸に棘が刺さったようにチクッと痛みが走る。

(普段なら気にするようなことじゃないのに・・・何でだろう)

流輝さんの横顔を見つめ考えていると、タイミングよく携帯が鳴った。

流輝「悪い」
「いえ」

流輝さんは携帯を取り出し、通話ボタンを押した。

(蛭川さんかな)
流輝「・・・なんだと?」
流輝「いや・・・でも・・・」
流輝「ああ、わかった。頼む」

携帯を切ると同時に、流輝さんは厳しい瞳を向けてきた。

「何かあったんですか?」
流輝「黒狐に保管していた絵が盗まれた」
「え・・・そんな!どうして」
流輝「詳しい話は分からない」
「そんな・・・すぐに帰りましょう」
流輝「オレもそう言ったが、今は少しでも多くの情報を探って帰ってきて欲しいと頼まれた」
「そんな・・・」
流輝「・・・とにかく、ホテルに戻ろう。拓斗にも報告しないと」

流輝さんの言葉に頷き、ホテルへの帰路を急いだ。


翌日、私たちは引き続き孤児院をまわっていた。

拓斗「もう飽きた・・・」

三軒目の孤児院に到着したところで蛭川さんがそう呟く。

「そんなこと言わずに、行きますよ!」
(まあ、ここまでなんの情報も得られないと飽きてくるのは仕方ないけど・・・)

とにかく今は、ジュリアに関する情報が必要なのだ。
流輝さんは蛭川さんのぼやきに構わず、一人孤児院に入って行った。
急いであとを追うとそこには・・・

「・・・え?」
流輝「どうした?」
「流輝さん、蛭川さん」
「あの絵画、私の博物館から盗まれたレドーナの作品です」
流輝「なんだって?」
流輝「どういうことだ・・・」
保母「どうかされましたか?」

部屋の奥から50代半ばぐらいの優しい顔をした女性が出てきた。

「え?日本語がお出来になるんですか?」
保母「ええ・・・昔日本に住んでいたことがあるんです」
保母「玄関の方からあなたたちの会話が聞こえてきたもので・・・」
流輝「失礼しました」
流輝「私たちはある人物を探しにロシアに来ているのですが」
流輝「この絵についてお聞きしたいんです」
保母「ああ、これはつい先日この孤児院に送られてきた絵です」
保母「2年前くらいだったかしら」
保母「多額の寄付金と一緒にレドーナの作品が送られてくるようになったんです」
拓斗「コピー作品っていう可能性はないのか?」
「・・・確かに、これは本物です。私の博物館から盗まれたものです」

流輝さんは私の顔を見て頷くと、保母さんに事情を説明する。

保母「まぁ、そうだったんですか。それならお返ししないとね」

保母さんが飾ってあった絵を取り外そうとした瞬間、一人の少年が絵画の前で手を広げ、それを阻止しようとする。

ロミオ「それはお母さんの絵だからダメ!」
保母「ロミオ・・・?」
ロミオ「先生、この絵はお母さんがくれたものなんだよ!?あげちゃわないで」

何を言っているのかわからないが、涙ながらに訴える少年の様子から、必死に絵を守ろうとしている様子が伝わってきた。

流輝「・・・このロミオって子供、お母さんの絵をとらないでって言っているぞ」
「お母さん!?」
「そのお母さんって、まさかジュリア・・・」
流輝「いや、ジュリアから絵を買った人物が寄付した可能性もあるけどな」
流輝「でも、この短時間で取引が行われたとは考えにくい」
拓斗「・・・こんな簡単に足がつくなんて、ジュリアってバカだろ」
(もしも私たちの憶測が正しければ、ジュリアはこの子のために・・・)

流輝さんも蛭川さんも同じ考えに至ったのか、神妙な顔つきで泣きじゃくるロミオを見つめていた。



有力な情報を手に入れ、私達は日本に帰国した。
そして、孤児院での出来事をブラックフォックスのメンバーに伝える。

宙「レドーナの作品だけは売らずに、その孤児院に寄付してるってこと?」
健至「でも、何でそんなことしてるんだろうな・・・」

孤児院にいた、ロミオという少年の言葉を思い出す。

「あの子・・・”お母さんの絵を取らないで”って言ってた・・・」
宙「・・・え?」
「もしかしたら、ジュリアが絵を寄付するのは自分のことを忘れてほしくない・・・っていう息子へのメッセージなんじゃないでしょうか・・・」

顔を上げると、流輝さんと目があった。
流輝さんは何も言わず、ゆっくりと頷く。

流輝「・・・多分そうだろうな。ジュリアは何らかの事情で、息子であるロミオに会うことが出来ない」
流輝「だから、ロミオとの思い出の絵を送ることで、少しでも自分のことを思い出してほしい・・・」
流輝「恐らく、こんなとこだろ」
健至「もしそれが本当だとすると・・・」
健至「今回盗まれた絵画も、その孤児院に寄付される可能性が高いってことだな」
流輝「ああ。そうなる前に、必ず取り戻すぞ」

流輝さんの激にメンバーみんなは力強く頷いた。