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ブラックフォックスメンバーが揃い、私はジュリアのことについて話し始めた。

「ジュリアが次に・・・もしくはいつか狙う作品が分かりました」
流輝「どういうことだ?今回のミッションの絵に関係しているのか?」
「いえ、それは違います」

最初は半信半疑ではあったけれど、こうして話していると自分の考えが正しい気がしてくるから不思議だ。

「レドーナの作品がジュリアの狙いです」
宙「ん~、確かにジュリアが今まで盗んだものの中にレドーナ作品はあるけど」
宙「何でそれだけが狙いだってわかるの?」

更科くんお言葉に頷き返し、盗品リストを指差す。

「確かに、ジュリアはレドーナ以外にもたくさんの芸術家の作品を盗んでいるけど」
「それはカモフラージュのためだと思うの」
健至「カモフラージュ?」
「はい。元々、絵本絵画は他のジャンルに比べてとても数が少ないんです」
「だからジュリアはレドーナの作品を狙っていることがばれるのを恐れていた」
拓斗「それで?」
「だから、他の芸術家の作品もカモフラージュのために盗んでいたけど」
「レドーナの作品は数が少ないからどうしても他の芸術家の作品よりも盗む比率が高くなる」
「作品名の一覧でみるとわからなかったけど、作者名一覧で見るとその差は歴然です」

説明しながら、ジュリアの盗品リストを作者名別に並べ替えた資料を出す。

宙「ほんとだ…レドーナのグラフだけ突き抜けてるよ」
「もしもジュリアがランダムに複数の芸術家の作品を盗んでいたとしたら」
「作品数の多い他の芸術家の作品よりも数の少ないレドーナ作品を多く盗んでいるのはおかしいと思いませんか?」
健至「確かに、横山の言うとおりかもな」
拓斗「こいつにしては、まぁまぁな推理だ」
「それと、私の博物館から盗まれた物もレドーナ作品だったんです」
「他にも高価なものはあるのに、それだけを狙ったんです」
流輝「・・・決まりだな」
ボス「ああ、俺もその線でいって良いと思う」
流輝「・・・となると、日本という慣れない土地だ」
流輝「協力者も少ないだろうから、ジュリアがカモフラージュのために余分な盗みをする確率は低い」

確かに、ジュリアが今まで日本で美術品を盗んだ経験はない。

流輝「拓斗、日本にレドーナ作品がある場所はどこか調べろ」
拓斗「言われなくてもやってる」
拓斗「横山の博物館と・・・もう一カ所だけしかないらしい」
健至「じゃ、次の犯行はそこか。流輝、やったな」
流輝「ああ、まな。お手柄だ」
「よかった・・・。お役に立てて、嬉しいです!」
流輝「この仕事が片付いたら、ご褒美にまなが喜ぶこと、たっぷりしてやるよ」
「ど、どんなことですか?」
(流輝さんの言葉っていちいち、エッチなんだよね)
流輝「さあ?まなが思い浮かべることをオレに言えばいいんだ」
流輝「質問する必要なんてないだろ?」
「お、思い浮かべてなんていません・・・!」
流輝「ウソつけ。顔が赤いんだよ」
宙「あのさーふたりで、イチャイチャするのは勝手だけど、僕たちのことも考えてよ」
拓斗「場所をわきまえろ、キモイ」
健至「まあ、最近じゃ、当たり前の光景になりつつあるけどな」
「ご、ごめんなさい」
(流輝さんと話すとどうも、ふたりだけの世界みたいになっちゃうんだよな・・・)
流輝「まなが喜ぶことはしてやりたいんだよ」
宙「みんなの前でイチャイチャすることだ?」
流輝「ああ」
「何、勝手に言っているんですか!違いますからね!」

みんなの中から笑い声があがり、からかわれていたことに気が付いた。

流輝「ま、まなをからかうのもここまでだ」
流輝「これで、ジュリアにこの前の雪辱を果たすことができるな」
宙「うん。今度は真剣にやるよ」
拓斗「当然、勝つのはオレたち」
健至「日本の宝を守るのはオレたちの仕事だからな!」
(よかった。これでブラックフォックスの汚名を返上できる)
(そして・・・博物館に絵が戻ってくる・・・!)

伊吹ちゃんの喜ぶ顔が目に浮かぶようだった。


それからというもの、夜になると私たちは交代で博物館を見張った。
「今日も現れませんね」
(ここまで何もないと不安になってくるな)
流輝「そう焦るな」
流輝「向こうにもおそらく準備のために時間が必要なんだろう?」
流輝「それに他の場所で盗まれたっていう連絡はないんだ」
流輝「まなの読みはあたっている」
「だといいんですけど・・・」
流輝「ったく、心配性だな。ま、お前らしいけど」
「ふふ、そうですか?」
流輝「ああ。さてと、今日も何も何事もなく終わりそうだな。車に戻るぞ」
「はい!」

ジュリアがいつ現れるか分からない緊張感の中、いつも通りの流輝さんの傍にいると安心することができた。



そして、ある晩。

(今日は稲垣さんが見張りか。連日徹夜だから寝不足だな・・・)

今日も何事もないのだろうと思っていると、緊急アラームが鳴り響いた。

健至「絵が盗まれた。そっちで逃走経路を確認してくれ」
拓斗「了解。・・・大丈夫だ発信機は正常に動いている」
(上手く罠にひっかかってくれた!)

盗まれることを予想し、本物のレドーナの絵を、発信機つきの贋作にすり替えておいたのだ。

流輝「オレたちもすぐに追う。深追いすんなよ」
健至「わかってるよ。待ってるから、早く来てくれ」
健至「追いかけたいのを我慢してんだからな」

稲垣さんとの通信が切れ、流輝さんがモニターから視線を外し私たちの顔を見つめる。

流輝「聞いた通りだ。行くぞ」

車は発進し、途中で稲垣さんを拾い、私たちはジュリアたちを追った。


ボス「・・・おっ、ターゲット見つけた」
流輝「よし。ここで降ろしてくれ」
流輝「あいつらを捕まえるのには十分な距離だ」

車が止まり、流輝さんと共に下りる。
すると、待っていましたと言わんばかりに、発砲音が響いた。

「な・・・何・・・?!」
流輝「銃弾だ。みんな無事か?」
宙「僕は大丈夫だけど、タイヤが・・・」
健至「車を捨てるしかないな」
流輝「皆、まなを連れて逃げろ」
「流輝さんは!?」
流輝「オレは最後だ」
宙「まなちゃん、早く!」

見れば、他のメンバーは既に走り出している。

流輝「安心しろ。俺もすぐに追いつくから」

そう言って、ポンと頭を撫でてくれる。

「・・・わかりました。必ず無事でいて下さいね・・・!」

流輝さんの言葉を信じ、走り出そうとした瞬間・・・

ジュリア「待ちなさい。私に用があるんでしょう?」

立ちふさがったのは金髪の美女だった。

(この人が・・・ジュリア・・・?)

流輝さんがジュリアから守るように私の前に立つ。

流輝「なんだよ。自分から自首しようってことか?」
ジュリア「ふふ・・・あの絵ね、偽物だと分かっていてわざと盗んだのよ」
ジュリア「あなたたちとお話がしたくてね」
流輝「オレたちに何の用だ。なぜ、予告状なんて出したんだ」
ジュリア「まあ、覚えていないなんて寂しいわ」
ジュリア「あなたとは前にもお会いしたことがあるのに・・・」
流輝「・・・・・・」
ジュリア「でも、覚えていないのなら仕方ないわね」
ジュリア「次に会うときまでには、きっと思い出してね・・・」

そう言ってジュリアは片手を振り上げ、何かをこちらに投げつける。
それが煙幕を発生させる道具だと気が付いたときには遅く、周りが白い霧に包まれていた。

(そんな・・・このままじゃ取り返すことができない。伊吹ちゃん・・・!)
「だめ!絵を返して!」
流輝「止めろ、まな!」
(諦めることなんてできない・・・返して・・・!)
部下「邪魔だっ!」
「・・・・・・っ!!」

ジュリアを追いかけようとした瞬間、頭部に強い衝撃がはしる。
その瞬間、殴られたのだと分かった。
逃げないといけないのに、体が思うように動かず、足が縺れる。

流輝「まな!」

流輝さんの声が遠くから聞こえる。
返事をしたかったけど、激しい痛みがそれを許さない。
私は遠のく意識の中、そっと目を閉じた。



(痛・・・・・・っ)

体を動かそうとすると、頭に激痛が走る。

(どうしてだろう・・・あれ・・・私ベッドに寝てる?)
(眩しい・・・朝?いつの間に・・・)

ジュリアを追ってからのことを必死に思い出し、自分が殴られたことを思い出した。

(あのまま私意識なくしたのか・・・起きてみんなに謝らないと・・・)

起き上がろうとすると頭がガンガン響き、思わず声が出てしまう。

「・・・うぅ・・・っ」
流輝「起きなくていい、寝てろ」

声の方に顔を向けると、流輝さんが心配そうに私を覗き込んでいた。

「流輝さん・・・ごめんなさい」
流輝「謝らなくていい。もう少し寝てろ」
「いえ・・・大丈夫です・・・。そjんなことより絵は?」
流輝「はぁ・・・お前、今回変だぞ」
流輝「どうしてあんな、無茶なことをしたんだ?」

覗き込み問うその表情は怖いぐらい真剣で、私はつい目をそらした。

「それは・・・」
(私が勝手に伊吹ちゃんのために動いているのに、それを言い訳にしていいの・・・?)
(・・・・・・そんなこと言えない)
「なんとしてでも取り返したかったんです」
流輝「自分の博物館の絵画が大切なのはわかる」
流輝「けど、怪我なんてしたら意味ないだろ」
「・・・はい。流輝さんの言う通りです」
流輝「どうして、そこまでして取り返したいんだ?」
「え・・・」
流輝「自分の博物館の絵だからって、そこまで必死になる理由がわからない」
「・・・・・・」
流輝「・・・言えないってことか」
流輝「・・・そうか、わかった」

そういうと、流輝さんは立ち上がり部屋から出て行こうとする。

「あの・・・流輝さん・・・」
流輝「いいからお前は休め」
流輝「オレがいたらドキドキしてゆっくり眠れないんだろ?」

いつものようにイタズラっぽく笑う流輝さん。

「・・・はい、そうさせてもらいます」
流輝「何かあったら、すぐ言えよ」
「ありがとうございます」
(いつもと同じように、優しい流輝さん)
(でも、何となく違って見えるのは・・・)
(本当は隠し事なんてしたくない。でも、言い訳はしたくない・・・)

流輝さんの態度が気になりつつも、再び異常な眠気が私を襲う。

「流輝さん、ごめんなさい・・・」

朦朧とした意識の中で、私はそう、呟いた。