完レポになりますので、閲覧にはご注意ください。



♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.o.+゚♪゚+.



夜、泊めてもらっていた重衡様の屋敷で目が覚める。

「お水を飲みに行こう」

立ち上がろうとしたら、知盛様からしっかりと抱き寄せられてしまった。

「あの、知盛様。私、お水を」
知盛「わかった。口づけがほしいんだな」
「いえ、あ、んんぅ」

否定しているのに、しっかりとくちびるを寄せられてしまう。

知盛「俺は喉が乾いたら、お前と口づけをしたくなるがな」
「そうなんですか?あ、んん」

また、深く口づけを交わされた。

知盛「まなのくちびるは濡れていて、やわらかくて、甘い香りがする。上等な酒を飲んでるようだ。しかも、交わせば酔うしな」
「そんな……っ」

また口を重ねられた。
不思議と、それで本当に喉の渇きを忘れてしまう。

「本当ですね」
知盛「そうだろう?しかし、これには難点がある」
「はい?」
知盛「やりすぎると、身体が乾いてします」
「ダメです。知盛様」

放っておくと、本当にこのまま水が飲めなくなると思って、私は知盛様の胸に手をついた。

「本当に喉が渇いているんです」
知盛「そうか。じゃあ、仕方ないな。俺が水を持ってきてやろう」
「え、そんな。私が行きます」
知盛「いや、冷えるから、ここで待っていろ」

知盛様は私を残すと、さっさと出ていってしまう。

「ありがとうございます」

私は知盛様の持ってきた湯のみを取ろうとした。
けれど、知盛様はそれを自分で飲んでしまう。

「ええ!?」

なんのイタズラなのかと思って非難めいた声をあげると、知盛様はニヤリと笑った。
そして、無言のまま私のくちびるにくちびるを重ねてくる。

「うん。んっ」

ごくりと喉が鳴って、自分が水を飲まされているのだと気づいた。

知盛「どうだ?飲めたか?」
「は、はい」
知盛「じゃあ、今度こそ、俺の乾きをいやしてもらおうか?」

そう言うと、知盛様は私を身体の下に敷きこんだ。
そして、今度は身体中に口づけされることになる。
結局、知盛様の乾きがおさまるには、私が意識を手放すくらいの時間が必要だった。

翌朝。
かすかな足音が聞こえてくる。

(……ん)

私は身じろぎした。
けれど、体を動かせない。

(何……重たい……)

気付くと、知盛様の腕が私の腰をしっかり掴んでいて、動けなかった。

「えっ、知盛様……重たいです」

私はそっと腕を放そうとしたが、なかなか解けない。

(……子供みたいな寝顔して……)

私は知盛様の寝顔をのぞきこんだ。
少し無精ひげ。

「ふ……ふふふ……」

何だか可愛く見えて、私は彼の髪を撫ぜた。

知盛「……ん」

知盛様が身じろぎする。

「起きた?」
知盛「う……ん」

知盛様はもう一度、私の腰を抱えなおして、また寝入った。

重衡「おやおや」

気付くと、格子をあけて重衡様が立っていた。

「し、重衡様」

私は慌てて自分の衣服の胸の前をしっかり締め直した。

重衡「知盛兄者、まるで子供みたいにぐっすりだね」
「はい」
重衡「この人がこんなに深く眠るのを見るのは、子供のころ以来だ」

重衡様は優しく微笑み、知盛様の顔を見つめている。

「そうなんですか?」
重衡「ずっと長い間、わずかな物音でもすぐに起き上がるような人だったよ。戦場ではほとんど寝ないし」
「……」
重衡「それがこんなに安らかな顔をして眠るようになったんだね」
「はい……」

私は知盛様の髪を撫ぜながら、少しだけ耳を触った。

知盛「……ん」

知盛様はかすかに目を開いた。

知盛「まな……いたずらをするな」
「ふふふ、もう起きてください」
知盛「……くちづけをしてくれたら、起きる」
「そんなことを言ってもいいんですか?」

私が言うと、知盛様は目をはっきりと開いた。

知盛「何だって?」
「だって」

私が重衡様を見遣ると、彼がヒラヒラと手を振る。
知盛様は、今度はしっかりと目を見開き、慌てて起き上がった。

知盛「重衡!お前、いつのまに来た!?」
重衡「ずいぶん前から。兄者の寝顔を見ていたよ」
知盛「なっ……!」

知盛様は真っ赤になった。

重衡「兄者は意外に甘えん坊なんだなあ」

にやにやと重衡様はからかうように笑う。

知盛「お前っ……こ、これは、ちょっと、たまたまで……!」
重衡「朝、くちづけをしてもらわないと起きられないんだ」
知盛「こ、こら!」

彼は完全に立ち上がり、重衡様のほうへ上掛けを投げた。

重衡「あははは!教経たちにも教えてやろう!」

重衡様は廊下を跳ねるようにして行ってしまう。

知盛「お、おい!待て!」

知盛様は慌ててその後ろを追いかけていった。

(にぎやかで幸せな朝……これからもこんな平和な朝を迎えられますように……)

私は自分のお腹を撫でながら、そう願った。