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目を覚ますと、部屋には誰もいなかった。
窓がないので天気がいいのかも分からない。
時計を見ると、朝だった。
(宝生さんはどこへ行ったんだろう・・・・・・)
慣れない部屋で少し不安になった。
ベッドから降りて、私は身支度を整えた。
呉葉「まな。起きたんだね」
「宝生さん」
部屋に入って来た宝生さんは、私を抱きしめて頬に口づけをした。
呉葉「いつでもこうして君に触れることができるんだね」
宝生さんはとても嬉しそうで、私を抱きしめたまま離れようとしない。
(そっか・・・・・・私は宝生さんと思いが通じ合ったんだ)
昨晩のことを思い出して、頬が赤くなってしまった。

凪「まなさん!おはよう」
突然、比奈森さんの声が聞こえ私は驚いた。
その後から、みんなも部屋に入ってきた。
「あ、あの・・・・・・宝生さん」
呉葉「どうしたの」
「離して頂けると、ありがたいのですが・・・・・・」
みんなの前で、抱きしめられていることが恥ずかしくて仕方なかった。
呉葉「どうして?このままでも問題はないと想うけど」
気にする様子もない宝生さんに、私は何度もお願いした。
すると、寂しそうな表情を見せながらも離れてくれた。
(よかった・・・・・・みんなの前では恥ずかし過ぎるから)
弓弦「ここで話をすると、まなちゃんが疲れた時に休めないから・・・・・・上で話そうか」
呉葉「まな。今から朱里のことで話をするから」
「分かりました」
みんなは部屋を出て、礼拝堂へ向かっていった。

私もみんなについて部屋を出ようとした。
呉葉「まな」
「はい」
宝生さんに呼ばれ振り向くと、抱きしめられて首に口づけをされた。
「・・・・・・!」
私は恥ずかしくて何も出来なかった。
頬が真っ赤になり、とても熱かった。
呉葉「まな」
(宝生さん・・・・・・)
少し離れていただけなのに、こんなに私に触れようとする宝生さん。
呉葉「ずっと君に触れていないと心配だな」
「えっ」
呉葉「君は僕だけのまなだから」
「宝生さん」
呉葉「でも、君が困っているようだからこの辺にしておくよ」
残念そうにしていたが、宝生さんは私から離れてくれた。
呉葉「これから毎日、君に口づけをするよ」
「えっ」
呉葉「僕の気持ちを君に伝え続けたいから」
(そんな・・・・・・毎日だなんて)
呉葉「いけないかな?」
「い、いえ・・・・・・」
私は小さく頷いて返事をした。
それに満足して、宝生さんはやっと部屋を出てくれた。



呉葉「まな。ここにおいで」
「はい」
私は宝生さんの隣に座り、みんなと向き合う形になった。
いつも明るい雰囲気のみんなは真剣な表情をしており、少し緊張した。
呉葉「昨日、まなにこんな物が届いた」
宝生さんは、亜蘭さんの手紙を取り出した。
呉葉「とても品のない手紙だよ・・・・・・手に取るのも気分が悪い」
そう言って、宝生さんが手紙を手放した。
すると、落ちていく手紙が砂のように消えていった。

呉葉「朱里の居場所を見つけるんだ」
礼拝堂に声が響くのと同時に、張り詰めた空気が広がった。
宝生さんからなのか、私は張り詰めた空気に体を強張らせた。
弓弦「呉葉」
呉葉「何?弓弦」
弓弦「朱里の居場所だけど、レブナントの調査を進めれば過激派の動きが分かると思うんだ」
呉葉「・・・・・・そうだね」
呉葉「では、レブナントの調査は弓弦に任せるよ」
弓弦「分かったよ」
「あの、調査とは何をするんでしょうか」
呉葉「どの辺りに出没するのか調べて、排除するんだよ」
「排除?」
呉葉「そう。レブナントを放っておいたら、人間を襲ってしまうから」
私は心が苦しかった。
私欲の為に帝国軍の人が作り出したもの。
(同じ人間なのに・・・・・・どうしてそんなことができるのだろう)
私の気持ちを察したのか、宝生さんは私の頭を撫でた。
呉葉「君が思い悩むことはないよ。人間も吸血鬼も私欲に負ける者はいるのだから」
「宝生さん」
私に向かって微笑むと、宝生さんは話を続けた。
呉葉「他の者は周辺の見回りを徹底してもらうよ」
朔弥「分かりました。横山の護衛は引き続き呉葉様が?」
呉葉「まなは僕が守るよ」

凪「呉葉さま・・・・・・どうしてまなさんの血を飲まないの?」
「・・・・・・えっ」
焔「そうだぜ。俺達はずっと呉葉様に言ってきてるじゃねえか」
凪「呉葉さまが血を飲んじゃえば、朱里もまなさんに手を出すことができないし・・・・・・呉葉さまはもっと力を得ることができるんだよ?」
朔弥「宝生家の血族は皆、呉葉様のお力の繁栄を望んでいる」
弓弦「み、みんな」
話は私の血の話に変わっていた。
宝生さんが私の血を飲めば、亜蘭さんは手を出せない。
呉葉「・・・・・・」
「あ、あの・・・・・・私が宝生さんに血を飲んでもらったら、亜蘭さんに狙われることはないんでしょうか?」
焔「ああ。お前の血の効力は一度きりだからな」
(だったら、その方がいいのでは・・・・・・)
咬まれるのは痛いかもしれない。
けれど、それを我慢すれば亜蘭さんのことが解決するはず。

「宝生さん。私・・・・・・」
呉葉「僕は飲まないよ」
「えっ?」
呉葉「僕はまなの血を飲まないと決めているから・・・・・・」
弓弦「呉葉・・・・・・」
「何故ですか?」
私は率直な疑問を宝生さんに尋ねた。
呉葉「まな」
「私の血は、飲みたいとは思わないのでしょうか」
亜蘭さんがこれほどまでに狙う血を、宝生さんは欲しいと思わないのかと、やっぱり疑問に思う。
呉葉「君の血はとても魅力的だよ。気を抜くと理性が飛んでしまいそうなくらいにね」
頬に宝生さんの手があてられた。
呉葉「きっと・・・・・・美味しいんだろうね」
「だったら」
呉葉「だけど、僕は血を飲まないと決めているんだ。君の血を飲まなくても僕は平気だよ」
「宝生さん」
宝生さんが血を飲まないと言ってから静かになった。
みんな何か言いいたげな様子ではあったが、口を閉ざしている。
弓弦「今は朱里の居場所を突き止めることを考えよう」
柊さんの一言で、話し合いは終わりを迎えた。
みんなは礼拝堂から出て行った。
弓弦「呉葉。君が決めたことに反対はしていないよ。僕は君の気持ちを分かっているつもりだから」
呉葉「弓弦・・・・・・」
柊さんは笑顔で頷いて出て行った。

二人きりになった礼拝堂はとても静かだった。
呉葉「まな」
宝生さんは私を引き寄せて抱きしめた。
呉葉「ごめんね、君に不安を与えるような話をして」
「大丈夫です」
呉葉「凪や焔の言うことは間違ってはいないよ・・・・・・宝生家の一族はみんなそう思っているからね」
「宝生さん」
呉葉「君の血を飲めば、僕の力は増して一族の繁栄に繋がる」
「それでしたら・・・・・・私の血を」
私は宝生さんの役に立てるならば、血を飲んでもらっても構わないと思った。
「私でも、何かのお役に立てるのなら」
呉葉「まな・・・・・・君は何も気にしないで」
呉葉「気持ちは嬉しいけれど、僕は君の血は飲まないと決めているんだ」
宝生さんは私の首筋に口づけをして顔を埋めた。
呉葉「僕が君の血を飲んでしまえば・・・・・・君を吸血鬼にしなくてはいけない」
「えっ・・・・・・」
呉葉「人間は吸血鬼に咬まれて大量の血を吸われると、もう人間として生きて行くことは出来ないんだ。もちろん大量に吸えばの話だけど」
「どういうことでしょうか」
宝生さんはまた首筋に口づけをした。
「んっ・・・・・・」
優しく何度も何度も、唇が私の首筋にあてられる。
呉葉「僕が君から大量の血を吸血しない限りは、君は人間のままだよ。少量なら問題ないんだ。でもね・・・・・・」
唇が耳元へ移動し、耳にそっと触れた。
私は体中が熱くなった。
呉葉「僕は君みたいな魅惑的な血を前にして、少量しか吸血しないなんてそんな自信はない・・・・・・」
(・・・・・・!)
私は安易に血を飲んでもらえば解決すると思っていた。
大量に血を飲まれたら吸血鬼になってしまう。
(そうだったんだ・・・・・・)
そのことを知って、私は怖く感じた。
亜蘭さんは、私の血を沢山飲んで吸血鬼にしようとしているのだと。

呉葉「君が吸血鬼になれば・・・・・・」
私は吸血鬼という言葉に反応して体を強張らせた。
呉葉「永い永い時間をずっと一緒に過ごすことができる」
(永い時間・・・・・・ずっと)
宝生さんは、果てしなく永い時を生きていく。
私は人間で、限られた時間の中でしか生きていけない。
呉葉「君と同じ時間を過ごすことができれば、どんなに幸せだろうね」
「宝生さん」
(私も、宝生さんとずっと一緒にいたい)
呉葉「けれど・・・・・・僕は今のままでも十分幸せだから」
宝生さんは少し体を離して私を見つめた。
呉葉「僕は今の君がとても好きなんだ」
私を見つめる宝生さんは、とても優しい表情をしていた。
呉葉「君には人間として生きて欲しい」
「宝生さん」
呉葉「いつか君が永い眠りにつく日まで、僕は君の側にいたいんだ」
人間として生きることを望む宝生さん。
私は人間と吸血鬼という種族の違いに苦悩して心が揺らいでいた。