みなさま、明けましておめでとうございます。
新型コロナウイルスの新規感染者は毎日のように過去最高を更新し、変異株の出現でますます収束の兆しが見えない中でのお正月はまったくおめでたい気分になれませんが、ブログ開設当初の2016年から書き綴ってきたこの年頭所感も今年で5回目になります。

5年前に初発の手術を終えた頃は、自分のステージと5年生存率を見ては悲嘆に暮れ、すっかり死ぬつもりでいましたが、今年の5月30日で術後丸7年を迎えることになります。
しかしながら腫瘍マーカーや定期的に撮る画像を見ると、病状は緩徐ながらも確実に進行しており、現在のホルモン療法(フェソロデックス+イブランス)では抑えることが難しくなってきました。
11月からは主治医の判断で女性の閉経前に使われる「リュープリン」を打ち、男からでもわずかに滲み出る女性ホルモンを遮断し、何とか乳がんの進行を遅らせようとしているところですが、まだ2回目を打ったところで評価するところまで至っていません。
ちなみにリュープリンは前立腺がんにも使われ、精巣から分泌されるテストステロンという、男にとっては非常に大切なホルモンを抑制する効果もあるようです。
副作用は軽微・・・だと聞いていましたが、打った直後の嘔気や関節痛のほか、男性ホルモンも女性ホルモンも共にいじらているせいか、更年期障害の症状が地味に辛い感じです。
何をした・・・というわけではないのですが、日常的に疲れやすくて倦怠感がひどく、ジムに行く気力すらすっかり失せてしまい、今後も高い会費を払い続けるかどうか今も迷っているところです。

リュープリンで効果がないとなると、次は「エンハーツ」という抗がん剤と分子標的薬をミックスした新発売の薬を使う・・・と、主治医から告げられています。
エンハーツは第一三共が創薬したとってもいいお薬で、無増悪生存期間の中央値は19.4ヶ月(2020年12月10日プレスリリース)と発表されました。
これは僕のように過去、各種の抗がん剤やホルモン療法をやってきた患者にとっては驚くほどいい数値です。
もちろん僕に効果があるかどうかは打ってみるまでは分かりませんが、客観的奏効率は61.4%と、決して低い数値ではありません。
治ることがないステージⅣのがん患者にとっては垂涎の薬ですが、その反面、エンハーツが効かなくなったらもう終わりなんじゃないかと、僕は密かにカウントダウンのタイマーを作動させました。

死ぬんだ・・・と覚悟していた術後5年目のハードルは意外にも悠々と超えることができましたが、10年目のハードルは相当高いものになるだろうなと感じていて、例の僕の非常によく当たる正夢の「50歳」という節目の年がいよいよ現実のものになってきています。(現在48歳です。)
命があっても「年単位で弱り、月単位で急変する可能性がある」という
主治医のお話が現実のものになってきている今、いつまでも今のQOLを保っていられる自信がないので、明日のお正月当番の出勤を利用して、自分のデスクを整理してこようと考えています。

乳がんは圧倒的に女性に多い病気で、しかも男性乳がんは比較的高齢者に多いということもあり、当時ネット上にあった「男性乳がん」に関する情報は、個人が作ったものも含めて決して多いものではありませんでした。
現在は多少認知されつつありますが、僕がブログを立ち上げたきっかけは、人一倍ヘタレの僕がびびりながら受けてきた治療経過を残し、後に続く男性乳がん患者の不安を少しでも解消できれば・・・と思ったからでした。
ところが先日、テレビ番組の「サワコの朝」にゲスト出演していたアナウンサーの笠井信輔さんがこんなことを言っていました。
笠井信輔さんはステージⅣの悪性リンパ腫でしたが、ご本人の言によれば、現在は完全寛解状態にあるそうです。

(以下、MBSのHPから引用)
「私の場合は、抗がん剤を打った後半、そして打ち終わってから大体1週間から10日位が非常に厳しかったです」

と振り返った一方で、

「今の抗がん剤は本当にいい薬が出来ていて効くんです。20年前とか30年前は、吐き気止めがちゃんとしていませんから、皆さん、もどしながら抗がん剤治療を受けているんですよ。でも、今、吐き気止めがとてつもなく開発されていて。私はほとんど吐き気が無かったです」

と、患者の苦しみが大きく軽減された現在の治療事情を説明。

「がんサバイバーの中で言われていることは、先輩に経験談を聞くのはとても大事なこと。でも、5年前、10年前の先輩に聞いちゃダメ。5年前、10年前の本読んじゃダメ

と、がん治療が日進月歩で発展していることを訴えました。
(引用終わり)

これを聞いた時は、僕がこのブログで膨大な時間を費やして書き綴ってきた記録の全てが否定されてしまったように感じてショックを受けましたが、でも確かに笠井さんのおっしゃるとおり。

・・・おっしゃるとおりなのですが、これまでブログを書き続けてきたモチベーションが否定されてしまったようで、少ししょんぼりしてしまいました。


新しい年にふさわしく、癌との最終決戦に向けた決意に満ち溢れた年頭所感・・・とはいかず、いつもの如く、もやっとさせる内容で申し訳ありません。

最後に少しだけ明るいお話をして終わります。

 

「ケセラセラ」って言う古い歌をご存じですか?
2019年に97歳でお亡くなりになったドリス・デイという女優さんが、ヒッチコック監督の「知りすぎていた男」(1956年)という映画の中で歌っている有名な歌です。
「なんとかなるさ」って言う意味のこの歌のとおり、今年はそんな気持ちでゆるゆると過ごしたいと思っています。

この歌の歌詞をご紹介して、今年の年頭所感を終わります。

本年もどうぞ、生暖かく見守っていてくださいね。

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「ケセラセラ」
私がまだ少女だった頃
母に尋ねた事がある
私は何になるのかを
可愛くなれるかと
お金持ちになれるかと
すると母はこう言った

ケ・セラ・セラ
何であろうと
未来は見えなくても
ケ・セラ・セラ
なるようになるものよ

大人になって恋に落ちた時
恋人に尋ねたことがある
この先に何があるのかと
2人は虹を掴めるのかと
毎日繰り返し
すると恋人はこう言った

ケ・セラ・セラ
何であろうと
未来は見えなくても
ケ・セラ・セラ
なるようになるものさ

今、母になった私に
子どもたちは尋ねる
自分は何になるのかを
ハンサムになるのかと
お金持ちになるのかと
そして私は優しく答える

ケ・セラ・セラ
何であろうと
未来は見えなくても
ケ・セラ・セラ
なるようになるものよ

「洋楽歌詞和訳・ときどき邦楽英訳(意訳)」から引用しました。