2014年にこの病気になって以来、「このまま仕事ばっかりして死んでたまるか!」と、忙しくて休みがとれない・・・なんて言い訳ばかりして行動してこなかった自分を改めた。
残りの僕の人生は、「見たい、行きたい、やりたいこと・・・」は、絶対に先送りしないことを誓った。
今から考えると、自分の命に真正面から向き合えた瞬間だったのかも知れない。
一番最初の旅は2015年で、僕が学生時代に留学していたアメリカ、ボストンへの旅だった。
抗がん剤の副作用でスキンヘッドになり、さらに体中の痛みを医療用麻薬で抑えながらの旅だったが、いつかもう一度行きたい・・・と思いながら20年以上が経過していた第二の僕の故郷を再訪できて感涙した。
その後、海外旅行だけでも、
・ シンガポール/マレーシア
・ 韓国
・ カンボジア
・ タイ
・ カナダ
と、これまでの時間を取り戻すかのように続き、この旅を「行かずに逝けるか!」と題してブログにアップしてきた。
「このまま死んでたまるか!」と思って始めたことだけど、海外旅行以外にも国内旅行や数々のお芝居もたくさん見に行くことができ、このまま死んだとしても悔いが残らないだろうと思うようになってきた。
子供がいない家庭だが、結婚して10年になる妻ともたくさんのいい思い出を残すことができた。
初発から6年目。
乳がんのステージⅣの10年生存率は15%程度だ。
この数字を証明するかのように僕の病状も順調に進み、初発の抗がん剤以来、2019年から再び高額療養費制度のお世話になることになった。
もう十分過ぎるほど遊んできたのでそろそろ遊びは控え、これからの治療と、やがて残されることになるであろう妻のためにもお金を残しておきたい。
でも、あともう一つだけ・・・。
「世界で一番大きな船でクルーズをしたい」という妻の夢を叶えてあげたい。
計画は3年前から始まり、これまで各種旅博や旅行会社、セミナー等の参加に参加して勉強を重ね、ようやく本年2020年に予約するところまでこぎつけた。
船はロイヤルカリビアンインターナショナル社の「ハーモニー・オブ・ザ・シー」という22万トン級で、最大8,000人が乗ることができる。
アメリカのマイアミ発着で、途中グアテマラやメキシコにも寄港し、全部で10日間ほどの旅だ。
大手旅行会社に申し込んだ時点で僕たちを含めて10人の申し込みがあり、最小催行人数は15名だったのでツアーはまだ成立していないが、祈るような気持ちで今日まできた・・・が。
そう、新型コロナウイルスである。
ダイヤモンドプリンセスやアムステルダム号が連日報道されているように、これだけクルーズ船に悪いイメージがつくともうだめだろう。
6月に出発する予定だったが、最小催行人数なんてとてもじゃないけど集まらないに決まっている。
妻はもう、ひどい落ち込みようだ。
代わりにどこか違う場所へ旅行する・・・というわけにもいかない。
倫理的にもこの感染が落ち着くまでは旅行なんて計画すべきじゃないだろう。
「年単位で弱っていき、月単位で急変する可能性がある」・・・と、主治医から言われている僕にとって、待つしかないというこの時間はあまりにももったいない。。。