ここ最近、なんとなーく男性乳がんの話題をよく目にする。
自分の興味があるトピックスがネット上に自動的に出てきているだけなのかもしれないが、まずは一つ目。

① ビヨンセのお父さん
アメリカのポップ界の歌姫であるビヨンセさんのお父さん、マシュー・ノウルズさんが乳がんの闘病中であることを告白し、男性も健診に行くように強く促した…という記事を読んだ。
シャツの胸の部分に水玉のような血液が付着しているのを不審に思って受診したところ、ステージ1Aの乳がんが判明し、2019年7月に除去手術をしたようだ。
術後の経過は順調で、今後、反対側の胸も予防的に切除する予定だという。(たいち注:驚!)

キャンサーネットによると、アメリカで乳がんと診断された女性は300万人以上いるそうだ。
今年だけでも浸潤性乳がんと診断された女性は268,000人で、男性乳がんの診断がついたのは2,670人。
アメリカ疾病対策センター(CDC)によれば、米国で乳がんと診断される女性は毎年約24万5,000人いて、男性は約2,200人いると発表されている。
乳がんが原因で亡くなった女性は毎年約4万1,000人で、男性では約460人いるらしい。

ひるがえって日本では・・・。
ワコールによると、2015年に乳がんと診断された女性は89,400人と10年前に比べると3倍近く増加し、1年に約14,000人が命を落としているらしい。
日本乳癌学会の登録では、2015年に乳がんと診断された女性は87,000人で、そのうち男性は560人だったそうだ。

10月は乳がん月間だ。
男性乳がんは珍しい・・・とずっと思っていたけど、数字だけを見ると希少がんほど珍しくはなく、かといって多いというほどでもない。
乳がんは女性特有の病気・・・という先入観がなければ、実はどこにでも誰にでも起こり得る病気なのかも知れない。

② メンズBCの会
キャンサーネットジャパンが、男性乳がん患者の集まりである「メンズBC」のウェブサイトを開設した。
イメージロゴはピンクリボンにハットと靴を履かせた形をしていて、そのアイデアが実に面白い。
ちょいと覗いてみると体験談はあるし、会合の案内はあるし、男性乳がんに関する記事の紹介もあるし、非常に為になるサイトだと感じた。
医療関係者が関与していることで情報の正確性にも信頼がおける。

思い起こせば5年前。

僕が乳がんを患った頃は仲間もおらず、相談できるところもなく、僕だけではなくって妻までもが孤独な思いをしていた。
情報を求めてありとあらゆる先輩女性のブログを読み漁り、そのたびに一喜一憂した。
唯一親身になってくれたのが、がん化学療法認定看護師さん。
ケモによってこれまで経験したことのない副作用が次から次へと現れたが、当時の主治医との間にいいパイプ役になってくれ、皮膚科や薬剤師さんなど他科ともよく連携を取ってくれて、非常に頼りになる看護師さんだった。

僕がブログを立ち上げたのは、孤独な胸の内を吐き出すところから始まっている。
もともと他人に心を打ち明けることが苦手な僕は、ブログという自己表現方法が性に合っていたようだ。
今だから告白するけど、僕のブログの一番最初はある出会い系サイトの日記コーナーから始まっている。
結婚する前のずっとずっと前に興味本位で利用したことのあったサイトのIDとパスワードがまだ生きていたことが偶然分かり、そこに投稿したのが本当の一番最初だったのだ。
でもすぐに、

「自分の居場所はこことちゃうやろ」

ということが分かり、ジュゲムさんに引っ越しをして本格的にブログを始めたのだった。

ブログの目的は、メンズBCさんの使命とビジョンによく似ている。
すなわち、
「男性乳がんの存在を幅広く知ってもらい、自分の体験を通じて正しい情報を発信すること」
だった。
自分自身が「男性が乳がんだなんて気味が悪い」と思っていたくらいなので、仲間ができるなんて全く期待していなかったけど、意外にもこんな僕を多くの同病の女性が見守ってくれ、励ましてくれた。
ブログをここまで続けることができたのは、本当にみなさまのおかげです。

逆に・・・、メンズBCさんのような信頼のおけるサイトができ、定期的に会合が催されるような仕組みができたのなら、僕がブログを続ける意味も半分に減ったな・・・とそんな気もしてきている。
もとより女性の死亡原因の第一位である乳がんの情報は、その真偽はともかく、体験談や治療のことなど他のがんとは比べものにならないほど膨大な量がこの電子空間に漂っている。
僕が書いた「フェソロデックス!おけつ硬結!」なんて記事を書いたところで珍しくもなんともなく、そこに価値があるとすれば僕が「男」だからだ。
でも僕にとって変わるものができたのなら、その役割は喜んで譲りたいと思う。(って、すごく偉そうに書きましたね(笑))

あ、ちなみにこのブログはこれからも続けていきます。
数か月前に全記事をアメンバー限定記事にした時にたくさんの方からメッセージをいただいたが、その中に、
「これまでずっと見守ってきました。見守ることくらいしかできないけど、これからもずっと見守っていきたいので・・・」
というメッセージを読み、このブログはもう僕だけのものではなくなったんだな・・・って気持ちを新たにした。
僕には心配してくれている人に、病状を伝え続ける義務がある。

それでも死の1か月くらい前には、このブログはきれいさっぱり畳みたい…とも思っている。
経験したことはないけれど、自分はもうすぐ死ぬんだなってことくらいは、その時になれば分かるんでしょ?
あとはブログのやめ時の判断さえ誤らなければいい。
死の実況中継まではするつもりはないし、ましてやそんな状態の時に記事を発信する自信もない。
その時はその前後の記事から察してくださいな。

以前に書いた記事ではこのブログをどうしようか迷っていたけど、今は全部削除しようと思っている。
信頼のおける他人に削除してもらうような心理的負担をかけるわけにはいかないので、それも死ぬ1か月くらい前には準備をしておきたい・・・って僕は何を言っているんだろうか。

今後のブログは情報発信よりも、診察日を中心とした自分の体験に重きを置いていくことになるだろう。
アップする記事の本数は減るかもしれないけど、これからは量よりも内容を大事にしていこうと思っている。

※ 今日の記事はアメンバー限定記事ではありません。
アメンバー限定記事は、ブログやプロフィールをきちんと書いておられる方に限定公開しています。
若しくは、メッセージを頂ければ柔軟に承認させていただきますね。