初発の時にリンパ浮腫を警戒し、唯一の趣味だったジム通いをやめた。
その後、ケモやホルモン療法の副作用で徐々に体力が低下し、慢性のしびれや間接痛、ひどい凝りにずっと悩まされてきた。
ところが先日、旅先で宿泊したホテルのジムで久々に軽く汗を流したところ、血流が改善したのかしびれが軽減し、間接痛がなくなり、可動域が大きくなった。
また、心地よい筋肉痛が肩や腰のひどい凝りから解放してくれた。
「いやー、どんな薬よりもやっぱり運動が一番だな」と改めてその効果を実感し、感動のあまり目がうるむほどだった。


若い頃のようにボディービルダーのような体を目指そうとは思わないが、これからは定期的に体を動かすことを決意したのだけど、問題は骨転移。。。
腰椎に3ヶ所の骨転移があるが、こんな僕でもジムに行ってもいいのだろうか・・・と、ずっと悩んでいる。
前回の診察日に教授先生に伺うと、
「ウェイトリフティングはなぁ・・・」
という医者としては当然の反応で、逆に「問題ないから行ってきな」って言われるほうが不信感が募るだろう。
だれもが「大丈夫!」という太鼓判を押せないのならジム再開はやめておいたほうがいいに決まっているが、ずっと悩まされてきたものがすっと薄皮をはぐように良くなったこの心地よさは捨てがたい。

現在は週に1度のペースで、月会費ではなく1回あたりの料金で利用ができるジムに通い、低負荷の軽い運動をしているが、これから継続的に通うのならいずれ割高になってくる。
このまま月会員になってもいいのだけど、ここのジムは余りに狭すぎる。
だから少し本気になってジム探しを始めているが、病気前と違って僕が考えないといけないことは、ヅラと左胸がないことだ。
ヅラをかぶったまんまではトレーニングはできない。
なぜだか分からない人のために解説すると、頭皮に汗をかいてヅラがスリップしやすくなり、かつそれが運動中は気づきにくい環境下であること、そして日常生活では予想もしないハプニングがジムでは起こる可能性があるということだ。
もしそんな事故が起こってしまったら僕はもう恥ずかし過ぎて、2度とこのジムの敷居はまたげないだろう。
家から直接ジムに行くのだったら最初からヅラを脱いでいくので問題ないが、会社帰りに立ち寄ることを考えると、どこかで安全にヅラが脱げる環境がほしい。
トイレの個室でもいいのだけど、入る前には髪の毛があって、出てきたときには髪の毛がないことがバレない程度の適度な混雑具合が必要だ。


ジムの更衣室があまりに混雑していると左胸がない僕は服が脱げなくなるので、ここはあまり混雑してほしくない。
ジムの更衣室なんて自分のトレーニングの成果を確かめようと大きな鏡でポージングしている人をよく見かけるが、こうなってみると迷惑な話だ・・・っと、かつての自分を棚にあげて言っておく。
着替えが終わったらさっさと帰ってほしいものだ。

そしてこの歳で女性にモテたいとは思わないけど、ハゲを晒しても全然気にならないような属性が多いほうがいい。

要約すると・・・。
人の多い繁華街から離れたところにあり、若い女性が気軽に来られるようなオシャレで清潔でイケメンのスタッフがいるようないわゆる「フィットネスクラブ」ではなく、初心者が怖気づくようなゴリラのようなマッチョが「うぉっ!」とか「いえいっ!」とか奇声を張り上げながらバーベルをあげているジムが、僕が理想とするジムだ。

そうなるとやっぱり以前通っていたあのジムしかない。
ただ以前通っていたところは繁華街にあったので、今度は少し離れた場所にあるところにしようかと、今、真剣に検討しているところだ。
ここなら会員数もそんなに多くなさそうだ。

ただね・・・。
ステージⅣのがん患者で50歳まで生きられるかどうかという人がさ、いまさらしんどい思いをして体鍛えてどーすんのって言う思いはある。
いずれベッドに寝たきりになるんだよ。。。
これから長生きするのならまだしも・・・なんて、以前なら考えもしなかった思いが湧き起っているのも否定できない事実だ。