僕の健側は右側だが、採血の時に穿刺される肘正中皮静脈のあたりをふっと見ると、その部分の皮膚がこんもりと盛り上がっているのを見つけた。
真正面から見ると目立たないので今まで気づかなかったが、少し角度を変えて陰影をつけるとよく分かる。
思い当たることは一つしかない。
この病気になってから2019年5月で5年目を迎えるが、1か月に最低一度、同じ場所を繰返し繰返し穿刺されたことの結果だろう。
同じ血管に何度も穿刺されると血管が硬くなる・・・というのを聞いたことがあるが、これはこういうことなのだろうか。
いわゆる「採血タコ」ってやつか。
別に痛みもなく、採血時に困ったこともないのでその時は感慨深げに見つめただけだった。
それが健康診断の前日のことだ。
さて・・・平成27年から会社の健康診断がある度にこういうタイトルで記事を書いてきたが、今回で5回目になる。
再発が分かるまでは、
「もう病気はいやだ!早期発見、早期解決だ!」
と、気合を入れて自主的に半日ドックを受けたりしたが、再発後、教授先生から、
「人間ドックどころか、健康診断すら受ける意味がない」
って言われてからすっかりテンションが下がってしまった。
教授先生の言葉の意味はいろいろあると思うが、何事にも悲観的な僕は、
「ステージⅣの癌患者・・・(治る見込みがない、いずれ死ぬ)なのだから、高いお金と痛いのを我慢して健診を受ける意味なんてない」
と、そう解釈した。
健診は労働安全衛生法で決まっていることなので受けないと会社の総務部がうるさいが、それからは最低限の項目しか受けていない。
教授先生の言葉に拗ねたわけではなく、教授先生の言い方はどうあれ、確かに一理あると納得した上でのことである。
健診は会社で受ければ自己負担はないが、僕は片乳なしだから同僚の前で服を脱ぎたくなくて、毎年手術をした病院で受診している。
けんぽの補助を使っても3,600円ほどの自己負担が発生するが、いたしかたあるまい。
1週間ほど前に病院から当日の案内と問診表、そして検便容器が自宅に送られてきた。
健診の2日前から2回にわたって便を取るのだが、自分のものでもこの作業だけは本当にいやだ。
保管しておくのも、持ち歩くのも、受付に提出するのもいやだ。
ま、それはさておき、健診当日。
僕は最低限の項目しか受けないので検査衣に着替えることもない。
問診表を持って、まず先生に診察してもらう。
毎年不愛想な先生(人間ドックの時だけ丁寧だった)の3分間診察だったが、今回は温和で優しそうな先生が診てくれた。
問診表にも書いたけどカルチであることを伝えると、血圧を測り、甲状腺のあたりを触診された。
「はい、力を抜いてーー。そうそう、らくーに、らくーにしてー・・・」
っと、まるで催眠術にでもかけようかというような口調には思わず吹き出しそうになった。
次に採血だが、ここでびっくりするような出来事があった。
採血が終わってから小さな絆創膏を張られ、
「しばらく押さえておくように」
という看護師さんのいつもの決まり文句を聞き流した僕は、待合室で雑誌を読んでいた。
そして何気に採血された腕に目をやると、ちっちゃな絆創膏が真っ赤な血液で染まっていてその周囲に血液が薄く広範囲にこびりついていた。
「ええっー!」
とちょっとビビり気味に看護師さんにみてもらうと、穿刺した部分の血液自体はもう止まっているようだった。
腕にこびりついた血液を看護師さんが、
「すいません、すいません」
と恐縮してアルコール綿で拭いてくれたが、
「いやいや、僕も圧迫していなかったので・・・」
とお互い恐縮しあった。
半袖の袖の部分にも血液が染みこんでしまっていたが、濃い紺のシャツだったので目立たなかったのは幸いだった。
看護師さんが一生懸命拭いてくれたけど長年の採血経験の中でも初めての出来事で、これは「採血タコ」と何か関係があるのだろうか?
いずれにせよ・・・教訓!
採血後は、必ず圧迫止血をすること!
最後に胸部X-Pを撮って、これで終了。
後日郵送で、いつものように「右肺野部にポート有り」っていうコメント付きで返ってくるのだろう。
前回は左肺にあるはずの影のことは一言も触れてなかったが、今回はどうだろうか。
最近息苦しさを感じることがあって胸水が気になっているのだが、もし本当に溜まっていればさすがに見落とされはしないだろうね。
来週は5週間ぶりの教授先生の診察がある。
採血の時は十分注意しておくことにしよう。
※※※※
この記事を書いた日の夜のこと、健診を受けた病院の名前が入った茶封筒がマンションの集合ポストに入っていた。
赤いスタンプで、「健康診断結果」とある。
簡単な検査だったとはいえ、たった2日で結果が届いたのには少しビックリした。
何か妙な胸騒ぎがしたのかその場で封を切ると、中から肺のX-P画像がプリントされたものが入っていた。
いつもならこんなプリントは送ってこない。(胃カメラの時は送ってきたけど。)
自分の肺が写ったプリントを何気に眺めてみると、「えっ!」と僕はその場で固まってしまった。
(続く)