今年初めての診察になるが、1月も下旬になれば、もう「明けましておめでとうございます」というご挨拶はもうそぐわないな。
前回の診察では1年4か月ぶりにCEAが10.0を超え、教授先生はこれはよろしくない傾向だと「うんうん」うなっていたけれど、果たして今日の腫瘍マーカーはどうなっているのだろうか。
諦めの早い僕は前回の記事ですでに、
「フェマーラ、おつかれさん」
的なことを書いて、次の治療へ進まざるを得ないことを嘆き、また一つ命のタイマーが進んだことを寂しがっていたのだが、この診察での一番の関心ごとは、
「次の治療はなんだ?」
ってことだ。
まだ使えるホルモン療法があるのか?それともケモに進まざるを得ないのか?
男性乳がんは女性に比べて戦いに使える武器が少ないので、大事に使っていこう・・・というのが、再発治療が始まった時の教授先生の方針だった。
僕はヘタレのビビり野郎なので、いつも次の治療に対する興味は半端なかった。
真っ暗闇の中を突っ走るジェットコースターのように、いつ上昇して、いつ急降下し、いつ右に曲がり、左に曲がるのか、予めコースを知っておくのと知らないのとでは恐怖の度合いがまるで違う。
次の治療ではどんなことをされて、どんな副作用が出るのか・・・。
しかし、予習熱心な僕でも次の治療がどこへ向かうのかまるっきり想像がつかない。
男性であろうが女性であろうが、再発予防のための標準治療はある程度確立されていて、僕の場合はEC→パクリタキセル→ハーセプチン→放射線というフルコースを歩んできたが、こういう道をたどるだろうなってことはある程度想像がついた。
しかし再発治療は予防のそれとは全くその目的が違う。
ガイドラインによれば、再発した患者は、
○ 腫瘍の性格(ホルモン療法の有効性、HER2たんぱくの発現・・・等)
○ 転移巣の場所とその広がり
○ 再発までの期間
○ 術後薬物療法で何をしてきたか
○ 現時点での症状の有無
などの、
① 患者の個別性
② エビデンス
③ 患者の希望
を考慮して決定される。
つまり、患者一人一人のオーダメイドと言えなくもない・・・がゆえに、次の治療の予測ができない。
臨床経験豊富な教授先生は、僕の次の治療はどのように考えているのだろうか。
それが今日の診察で明らかになるだろう。
さて、いつものように採血をしてもらうべく診察券を受付機に挿入すると、画面に「本日、この検査はありません」と表示される。
「は?」
(ポートのフラッシュのオーダー漏れはこれまでに何度もあったけど、採血のオーダーなんて普通忘れるものか?)と思ったのがまず最初に思ったことで、次に、(ひょっとして新しい治療が始まるから、今日は血液検査がないのだろか?)・・・だった。
急にドキドキしてきたが、いずれにせよ、腫瘍血液内科の受付へトコトコ歩いて確認にいかなければならない。
診察券を受付に出すと、
「先生に確認してもらいますが、今、システム障害が発生していてカルテがすぐに出てこないんです。ちょっとお待ちいただけますか?」
と受付前の待合室に座らされて20分ほど待った。
なるほど、目の前の大きなモニターには、「システム障害発生中」の文字が流れている。
しばらくして名前を呼ばれたが、やっぱりどうも、オーダー忘れだったようだ。
さっきの採血場所へ戻って受付機に診察券を通すと、何事もなかったように整理券が発行された。
やれやれ、とんだ時間のロスだ。
時計の針を早送りして、時は11:50。
ホントは僕の予約時間は10:00なんだけど、時間どおりに名前を呼ばれたことなど一度もない。
それはさておき、ノックして診察室へ入る。
さて、気になるCEAの数値は・・・。
はい、9.5で前回より下がってました。(脱力)
読者のみなさま、すいません・・・ご期待に沿えなくて。
教授先生も、「前回10を超えたので注意していたけど、今回下がったね。じゃ、今の治療を継続だな」ってことになった。
なんだかバンジージャンプで長い時間をかけて飛び出す覚悟を決めたのに、一歩を踏み出したとたん、「あ、風が強くなったので中止ねー」って言われたような気分だ。
つまんないたとえでごめんなさい。
はい、それではいつものようにグラフをアップします。
とはいっても安心できるほど下がったわけではなく、0.6ポイントという微妙な誤差の範疇ではあるので土俵際ぎりぎりなのは同じだ。
それでも、なんだか1か月寿命が延びた気がするんだけどね(笑)