こういうタイトルの記事をネットニュースで見つけて読んでみたけど、僕はこの病気になって一度も「よかった」なんて思ったことがなかったので、全くその気持ちが分からない。
記事は、胸の胚細胞腫瘍と急性リンパ性白血病を患った21歳の大学生の闘病を紹介したものだった。
曰く・・・空が青かったり、パンがおいしかったり、朝気持ちよく起きられたり、生きている今この瞬間はかけがえがない。
つまり、「がんにこの世界の美しさを教えられた」と。
「キャンサーギフト」という言葉をこの病気になって知った。
癌?贈り物?
日本語を直訳しただけでは全く意味が分からない。
癌になって「家族の絆が強くなった」とか、失うばっかりではなく、何かを得られたことを「キャンサーギフト(癌からの贈り物)」と言うらしい。
でも僕にはなんとかして癌を美化しないとやっていけないからと、癌患者の誰かが無理に作った言葉のように思えて仕方がない。
もし癌じゃない人がキャンサーギフトという言葉を使いたいのなら、毎日酒を飲み、タバコを50本くらい吸ってみるといい。
僕は癌になってから食生活を見直した。
酒、肉、乳製品、精製品の摂取をやめて、体にいいものを食べるように心がけるようになった。
これ以上病気になりたくないからと、会社の1年に一度の健康診断さえ憂鬱だった僕が、進んで人間ドックを受けるようになり、インフルエンザの予防接種だって欠かさず打つようになった。
こういう変化のことをキャンサーギフトって言うのだろうか?
反面、人工的に作り出された薬剤を毎日10錠以上飲むようになり、月に1度はランマークの注射だって打つ。
そして半年に1回はCTやらPET-CTやらで被爆するし、リンパ浮腫が怖かったので僕の唯一の趣味だった筋トレだってやめざるを得なかった。
蓄積された薬の副作用の影響で仕事だって満足にできなくなりつつあるし、何より多くの人に心配とご迷惑をおかけしている。
得たものより失ったもののほうが多く、体にいいことより悪いことのほうが多い。
癌になってよかったことなんてないじゃないか。
しかし、「癌でよかった」・・・とは思ったことがある。
それは僕がセカオピを受けたある有名な医師が、「癌ってそんなに悪い病気じゃないよ」と発した言葉がきっかけだった。
日本人の三大疾病は癌、急性心筋梗塞、脳卒中で、癌以外は発病すると即死ぬか、麻痺などの重篤な後遺症を患う可能性が高い。
それに比べれば、「癌はまだ死ぬ準備ができるからいいでしょ?」ってことらしい。
癌になってまだ日が浅かった時分に、「死ぬ準備ができるでしょ?」って遠回りに言われたことにショックを受けたが、今となっては得心する。
うん、癌でよかったと。
ブログを始めてから、がんを放置する人がいるのを知った。
僕は乳がんなので必然的に女性主のブログを読むことが多いのだが、
「癌は自分自身の分身なのだから、悪いものじゃない。逆に体の悪いところを教えてくれたり、悪いものを体外へ押し出そうとしているのだ」
というのを読んだ時、まるでインチキ宗教の教本でも読んでいるような薄ら寒さを覚えたものだった。
女性は子を産むようにできているが、体内にできた子はまさしく女性の血肉を分けた細胞が分裂してできたもの。
女性は同じように癌までをも自分の子のように愛おしく思うのだろうか。
癌になんてならないほうがいいに決まっている。
いや、あったあった。
癌になって保険がおり、住宅ローンを支払わずに済んだことが癌になって唯一よかったことかな。