どうしてがんになったのか。
がんに罹患した患者はすべての人が自問したに違いない。
僕も例外ではない。
がんであることを告げられた時は世の中のすべての神仏を恨んだ‥といっても普段信仰していないのだから、恨まれた神仏もびっくりしただろう。

がんが分かったとき、
「何で俺ががんなんだよ。俺よりもっと悪いことしてる奴がいるだろうに‥。もっと自堕落な生活をしている奴がいるだろうに。」
と、毎日のように泣いていた。
がんは10年かけて育つというので、10年前のことをなんども思い返してみたりもした。

これだけ医学が進んでも、なぜがんになるのか分からないらしい。
がんになったのはただ運が悪かったのだ‥という研究結果もあるそうだ。
ただ、がんになったおかげとは言いたくないが、死を真正面からとらえ、限りある人生を一瞬一瞬大切に生きたいと思えるようになった。
いつかやろうと思っていたことは、今すぐやろうと思うようになった。
体に悪いものは口にせず、正しい食生活をしようと思うようになった。
お風呂で体をゆっくりと温めるようになったし、体を冷やさないように気をつけるようにもなった。
安穏に暮らしていればこうしたことを本気で考え、実践もできていなかったであろうと思うと、病気になったこともそれなりに意味があったとも考えたりする。

僕の人生の途上に突如左乳の中に現れ、世間から「悪性腫瘍」と呼ばれて忌み嫌われている奴が、僕にとってどんな意味があるのかを考えてみた。

病気になって以来、僕が肝に命じている言葉がある。
これから何度もこのブログでご紹介することになると思う。
「病気になったことが不幸なのではない。病気に負けることが不幸なのだ」