2014年7月にヅラを着用するようになってから3年が過ぎた。
初代ヅラは初心者ということもあって、大手スヴェンソンの医療用全頭ウィッグをセミオーダーで購入した。
吉本新喜劇が大好きな僕は、頭の薄い「もりすけ」がヅラをわざと派手に飛ばして笑いをとっているのを見ていて、首を振ったり強風が吹くと飛ぶことがあるのかと聞いたが、そんな心配はないとのことだった。

<もりすけ(吉本新喜劇)>

 

事実そんな心配はなかったが、強い風が吹くとヅラが飛ぶことよりもヅラと頭皮の境界線が丸見えになることのほうが心配だった。

2代目ヅラは、ウィッグ屋さんと提携している美容院でスヴェンソンの半額くらいの既製品を購入した。
ヅラの取扱いに慣れてきたということと、髪の毛に復活の兆しがあったからである。
でも予想に反して髪の毛は未だ復活していないけどね。。。
既製品のウィッグはセミオーダーと違って、S・M・Lの3つのサイズしかない。
頭の大きさを計ってもらい、僕はMサイズを購入した。
スヴェンソンのヅラしか知らない僕は最初の頃こそ不安だったけど、今やすっかり慣れてしまった。

 

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我が社には1か月に1回、部長以上の幹部だけ各フロアに1名、土曜日に半ドン出勤する当番制度がある。
先日、僕が当番にあたった時のことである。
僕の部下2名も休日出勤して、僕に遅れて出社してきた。
そして僕が座っている島のずっと右奥のほうにも、部署が違う総合職の女性が出社していた。
広いフロアに僕を含めて4名がいることになる。
肩が凝った時のいつもの癖で、首を左右に勢いよく振った時のことだった。
あろうことかヅラがすっぽ抜けてしまったのだ。
最初は自分に起こったことが信じられず、次に考えたことは「ヅラがバレた!」ことをどう取り繕うかということだった。
床に落ちた黒い何かの小動物のように見えるヅラをすぐに拾い上げ、急いで頭の上に乗っけてそっと部下の顔を伺った。
僕はデスクトップパソコンを使っていて、正面と右手に大きな2面のモニターが設置してあった。

<僕のPC(画像処理しています)>

 

この右斜めに座っている僕の部下は、そのモニターが邪魔をして普段から顔が見えないのだが、そのおかげで僕の異変にはどうやら気づいてないようだった。
もう一人の部下は、この写真の右手側に僕に背を向けて座っていた。(もともとそういう歪な座席配置なのだ)
右奥の女性職員は僕の席からは遠く、また自分のPCに集中していたようで、これまた異変には気づいていなかった。

そう、奇跡的に「セーフ!」だったのだ。

「セーフ!」「セーフ!」「セーフ!」
僕は何食わぬ顔でそそくさとトイレに向かい、鏡に向かってちゃんとヅラをセットし直したが、今になって心臓がバクバクしてきてその場にへたり込みそうになった。
これが普段の平日だったらと思うと血の気が失せる。

アナウンサーの小倉智昭が「とくダネ!」の番組の冒頭でお辞儀をした際に、ヅラを落とすガセ映像をYou Tubeで見たことがあるが、まさに気分はオヅラそのものだった。



そっかー、既製品は頭にジャストフィットしていないからこういうことがあるんだネー。
もちろん僕の頭を激しく振る癖は、少なくともヅラ着用中は厳しく自粛することにしたのは言うまでもない。

[余談]
確か「人志松本のすべらない話」だったと思うが、綾小路きみまろがこんな話をしていた。

きみまろにカツラを紹介してくれた先輩が亡くなり、告別式に行って遺影を見ると…
「カツラをかぶってない姿を初めてみたんです。
棺の中を見てくださいと言われて見ると、こっちはカツラをかぶっている。
よく見ると、そのカツラはいつもよりズレていた。
かわいそうだと思ってカツラを戻してあげようとしたら、カツラがしっかりしていて顔が動いてしまった。」
で、みんな大爆笑していた

きみまろはその時に自分の人生を重ねたという。
「もし自分が亡くなったら、遺影と棺の中を同じにしてくれと、家族に頼んだ」
そうだ。

然もあらん。
僕なら遺影は病気になる前の髪の毛があった頃のものを、そして三途の川を渡る時までうっとおしいヅラをかぶりたくないから、ヅラは棺の中には入れるなとお願いしておきたい。