今年もインフルエンザの予防接種を受けてきた。
毎年、手術をした病院で、元主治医(執刀医ではない外科の先生)の問診で打ってもらっていたのだが、さすがにここの病院の患者ではなくなって(耳鼻科には通っているけど)2年も経つと気が引けるようになってきた。
かといって現在の主治医がいる大学病院では打ってくれない。
「そういうのは違う病院でやってくれる?」
と、相談した教授先生に冷たくあしらわれたのは昨年のことだった。
こういうこともあり、今年は会社の案内に従って社の産業指定医の小さな診療所で打ってもらうことにした。
指定された日時に行くと、その時間帯だけ社員のためだけに診療所を開けてくれて待ち時間もほぼなし。
お値段は3,000円ほどなので、まあ相場だろう。
診療所につくと、待合室で待っていたのは当たり前だけど顔見知りの社員のみ。
ただ雑談するような間柄でもないのですぐに受付に行くと、問診票と体温計を渡される。
アナムネには「マンマカルチ」と書いた。
「乳がん」って文字は、見るのも見られるのも書くのも嫌だ。
待っていると名前を呼ばれたので処置室に入ると、以前、残業のしすぎで面談をしてもらった女医さんがそこにいた。
この女医さんは他にも一ヶ月に一度、職場環境のチェックで総務部員と一緒に事務室を回ってくるので、顔だけはよく知っている。
僕が書いた問診票を見て、
「マンマカルチ・・・、乳がんで間違いないですね」
と、以前面談した僕の顔を覚えていたのかどうかわからないが、そうつぶやいて看護師から注射器を受け取った。
健側の腕をまくって差し出すと一瞬チクンとした1秒後には「はい、終わりました」…はやっ。
しかしワクチン注射ってやつは、穿刺の痛みよりも打ってから2〜3日後までしばらく痛い。
でもこれで今年の冬は大丈夫だ。
それにしても、あれだけ注射が嫌いだった僕が進んで注射を受けに行くようになったなんてホントおかしなものだ。
おかしいついでに言えば、病気になってから食事や健康に気をつけるようになるなんて自分でも苦笑してしまう。
健康って当たり前のものではなく、実は不断の努力で得られるものなんだってことが、病気になってから分かるなんて皮肉だね。
僕の部下はみんなたばこを吸う。
インフルエンザの注射に誘っても、「注射は嫌いなんで・・・。」と逃げる。
今、健康そうに見えているのは単なる偶然でしかないのに。
でも昔の僕もそうだったのだ。
大きな病気になって命の長さを真剣に考えるようになるなんて、当時は夢にも思っていなかった。
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インフルエンザの注射を打った二日後、コンコンと咳が出だした。
肺転移ではなく、これは間違いなく風邪の前兆だ。
僕は昔から喉が弱く、大きな声を出すだけですぐに声が枯れるし、そこからよく風邪を引いていた。
思い当たる節と言えば、先日の「岡山マラソン」の時かな。
ケモ施行以来、マスクはすっかり習慣化して夏場でもつけているし、手洗いもアライグマがびっくりするほど洗っているのでまたいつものように喉をヤラれてしまったのだろう。
コンコン言う僕を妻がまるで病原菌でも見るかのように、
「家の中でもマスクして私にうつさないように気を遣ってよー。」
と顔を見るたびに言う。
(インフルエンザの予防接種に行かないくせに…)と、心中毒づいてみるが、彼女の言い分が正しいだけに全く腹ただしい。
今のところ空咳だけで終わりそうな気もしているが、妻への当てつけのように自室に閉じこもってこの記事を打っているところだ。