1か月に1度の診察日がやってきた。
この1か月の間の体調で気になっていたことと言えば、
○ 足の力が入らず、ふらふらとした貧血のような症状がある
○ 吐き気や軽い頭痛がある
ことだった。

吐き気や頭痛については心因性のもの・・・若しくは先日心療内科で処方されたサインバルタの服用を始めたせいもあるのかな・・・と思っていた。
特に朝、会社に行く時は決まって体調が悪くなるので一度血圧を測ってみたところ、150/100だった。
もともと高血圧気味ではあったのだが、自分でも驚くような数値だった。
2~3日続けて測ってみてもやはり数値は高いままで、ネットで調べてみるとどうも「脳の血管障害」の時の症状とよく似ている。
・ 高血圧
・ 吐き気
・ 頭痛・・・。

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さて、病院に着いていつものように採血をし、教授先生の診察を受けた。
気になるCEAは・・・。
(前々回)25.4
(前回)18.4
(今回)14.0
ほほー、明らかにレトロゾールが効いている。
現金なもので、効果が目に見えて分かるというのはなんだか生きる気力まで湧いてくる。
「素晴らしき哉、ホルモン療法!」と心の中で叫ぶ。

 

術後の再発予防のための薬物療法としてEC~nab-PTX~HER、そしてホルモン療法はTAMをやってきたが、どこまで続くのか分からない真っ暗なトンネルの中をひたすら進まされているような気がしていた。
しかし頭皮にできた腫瘤が小さくなり、腫瘍マーカーの数値も下がってくると、遠くのほうから一縷の光が差してきたように思える。
その反面、光が差してきてもトンネルからは出られないことも分かっている。
その光は生きる希望ではあっても、外光とはつながってはいない。
でも真っ暗な中を手探りで進むよりも、その光を頼りにして少しでも明るい道を進めるにこしたことはないね。

ホルモン療法の効果は半年~1年と言われていて、いつまでも癌の頭を押さえ続けるだけの力はない・・・と、思わずはしゃぎそうになる自分をしっかり戒める。

診察のあとはケモ室で2回目のランマークの注射とポートのフラッシュをやってもらったが、今日は採血の時もそうだったけど、なぜか注射の「チクっ」が妙に不快でイラっとしてしまった。

高血圧のことは教授先生には言わなかった。
教授先生は腫瘍のこと以外について、自分の興味がないことは冷淡であることが分かっていたし、 それに7月3日には別の病院で生活習慣病検診を受けることになっていたこともある。

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最後に・・・この日は小林麻央さんがお亡くなりになったことが発表された日である。
僕は彼女のブログを読み続けてはいなかったが、最後の記事の写真を見ると3日後にお亡くなりになるとは思えないほど穏やかな笑みを浮かべていた。
最後に「愛している」という言葉を残し、このまま微笑みながら旅立ったのだろうな・・・と思うと、最後まで愛に生きる女性の美しさに感動した。

癌で亡くなるというのは、どうしても壮絶な最後をイメージしてしまう。
食事を取ることもできずにがりがりに痩せ細り、癌によるすさまじい痛みと満足に呼吸すらできない苦しみ、そして最後はモルヒネで意識を飛ばしたままこの世を去ってしまう・・・特に僕のようなステージⅣともなると、いくら頭を振っても打ち払うことのできない最後を想像する。

小林麻央さんも例外ではなく、ブログに残されていたように顎への転移や高熱に苦しみ、そして悶絶するような痛みと、決して楽な闘病生活ではなかったはずだが、最後まで持前の明るさを失わなかった。
更にはブログを通じて癌で苦しむ患者に希望を与え、癌で死ぬことの陰惨なイメージを見事に払しょくしてしまった。

僕には決して真似することはできないが、彼女の癌患者としての命の使い方は僕の心に深く刻みこまれた。