2016.9.10
飛行機乗り遅れ事件の次の日のことである。

現在通っているクリニックは土曜日でも17時まで診察をしてくれているので、仕事をしているサラリーマンにとってはありがたい。
僕も今日は単身赴任元の自宅を少しゆっくりめに出て、いつもとは違う空港から13:00発の飛行機に乗って、クリニックの最寄駅までリムジンバスで向かった。
クリニックに着いたのは15:55だった。

いつものように待合室で待っているが、数十分後にははっきりと分かるはずの腫瘍マーカーの結果のことが、どうしても悪い方向に考えが向いてしまう。
本を開いてみても全く頭に入らず、知らず知らずの間に握りしめた両拳には汗がじっとりと滲んでいた。
仕方がないのでガラケーの電話帳を開き、名前が入力してある欄の「○川○夫」という名前を次々と姓の欄と名の欄に分けて打ち変えるというあまり意味のない単純作業に没頭し、考えることをやめようと努力していた。
(それにしても今日の待ち時間は長いな。ひょっとして悪い結果だっただけに僕を一番最後に診察して、これからのことをじっくりと話をされるつもりではなかろうか)と時計を見るが、まだ1時間ほどしか経っていない。

結局名前を呼ばれたのはいつもと同じ、1時間30分後だった。

診察室に入ると机の上にはすでに腫瘍マーカーの検査結果が置いてあり、先生からやや緊張気味の表情で、「やっぱり同じ結果が出ました」とお話があった。

 

気になるCEAの数値は8.1→8.9と、この1か月で微増していた。
CA15-3も基準値内ではあるが、半年前の7.4→17.4と倍増している。(※ 画像からは切れているが。)
このクリニックでは初めて検査した1CTPも4.9と高値を示しているが、これはもともと僕は高値安定型であることは分かっていたし、誤差のある検査なので先生も重要視していないとのことだった。

以下、先生の話を要約する。
○ 2回検査してCEAが高値を示したということは、再発は間違いないと思う。
○ 現在のホルモン療法である「タモキシフェン」が効いていないことが考えられるので、女性の閉経後に用いられる「アロマターゼ阻害薬」に変えたほうがいいのかもしれない。
○ 前縦隔に腫瘍があったとのことだが、設備のある病院でCTではなくPET-CTで全身をスキャンしたほうがいいと思う。
○ 診療情報提供書を書くけれど、単身赴任先の自宅近くの病院がいいか?

とのことで、どうやら僕は本日をもってこのクリニックをクビになってしまったらしい。
もともとタモキシフェンの処方とポートのフラッシュ、そして乳腺の専門医がフォローしてくれるところを探していたので、再発の可能性が濃厚になった今、クビになったところでなんの文句もない。
先生には丁重にこれまでのお礼を言ってクリニックを後にした。

さて、これからどうしようか。。。。
正直現在のところケモの副作用以外に体調の変化はないのだが、こうしてCEAに異常値として表れてくるようになるといつまでも元気でいられる保証はない。
このまま何かの症状が出るまでほったらかすという手もあるが、このせいで「手遅れになった」という事態は避けたいのでこれはNG。
とすると、すぐに病院と主治医を決めて精査してもらわなければいけない。

病院の選択肢は4つ。

① 単身赴任先の病院を選ぶ
・ 当初の予想に反し、1か月に何度も単身赴任元へ出張している現状を考えるとわざわざ慣れない土地で病院を探す理由はない。
(つまり、僕の地元の病院でも通院できる)
・ 仮に入院することになったとしても、すぐに家族の援助が期待できない。
・ しかし田舎の単身赴任元とは違い、選ぶのに困るほど優れた専門病院がたくさんあるのも事実である。

② 全摘手術を受けた病院(単身赴任元)を選ぶ
・ 癌の告知からケモが終わるまでの僕のカルテが残されており、どの診療科でも一目で僕の治療歴を把握することができる。
・ 但し僕の主治医だった執刀医はすでに退職し、代わりの先生は熱心ではあったが残念なことにただの外科医の資格しかない。
・ この前、2回ほど形成外科を訪れた際にケモ室を覗いてみると2回とも電気が消えていた。
扉の前の「火元責任者」の名前が、お世話になったがん化学療法認定看護師から知らない人の名前に変わっていたのできっと退職されたのだろう。
・ しかし何よりこの病院は自宅から歩いて5分という至極便利な場所にあり、家族の負担も大変に楽。
・ 僕も病院の中にどこに何があるのかを熟知しているので別荘のような感覚がある。

③ 大学病院
・ 遺伝子カウンセリングと先日のLVAのお話を聞きに行ったことがあるので、雰囲気はある程度分かっている。
・ ②の病院から歩いて15分ほどの距離にあり、家族の負担もそれほど大きくない。
・ ②の病院とも病院同士で交流がある。
・ もちろんリニアックやPET-CTなどの設備も整っており、厚労省が定める「がん診療連携拠点病院」である。

④ 市民病院
・ 前にセカンドオピニオンを受けたことがある新しい病院である。
・ もちろんリニアックやPET-CTなどの設備も整っており、厚労省が定める「がん診療連携拠点病院」である。
・ ただ、人口島にあってアクセスが非常に悪く、東京で言えばゆりかもめのような無人列車とバス、後は自家用車しか手段がなく、家族の負担が大きい。(もちろん、僕自身も通院しにくい)

ということで、診療情報提供書を書いてもらうのに上の4つの選択肢から選ばないといけないのだが、妻とも相談の上、今回は③の大学病院を選ぶことにした。

明日から10日ほど北九州へ出張することになるので、すぐに病院へは行けないのだが、また進捗があれば報告する。