2016.1.20
僕にはSASがあるため前の病院でCPAPの治療を受けていたのだが、今回の単身赴任でやはりこれも転院ということになり、CPAP契約業者の紹介で単身赴任先の耳鼻科に行ってきた。


SASの治療と言ってもCPAPを保険診療として使い続けるために、1か月に1回、儀式として医師の診察を受けないといけないというもので、これまでは、
「具合はどうですか?がんばってCPAPを使ってくださいねー」
と、鼻の穴を見せて終わっていた。

単身赴任先の病院でもそんな感じだろうと訪れたのだが、まあ、いろんな意味で大変だった。

まだ新しさを感じさせる耳鼻科を訪れると、待合室には7名くらいの患者さんが順番を待っていた。
その中に奇声をあげて狭い待合室を走り回るがきんちょが2~3匹・・。
受付で初診である旨を告げ、前の病院で出してもらった紹介状と保険証を差し出すと、問診票の記入をお願いされる。
問診票には過去の病歴を記入する欄があり、いくつかの病名が書かれている中に「悪性腫瘍」があった。
一瞬どう書こうか迷ったが、「悪性腫瘍」のところに○印を打った。
続いて現在も治療をされていますか?という質問に対しては、現在は寛解中なので「いいえ」。
正確に言えばフォロー中で、タモキシフェンを服用しているので「はい」なのだろうけど、ここで一つ嘘をついたのかもしれない。

書き上げた問診票を受付に提出すると、しばらくして制服を来た若い女性の事務員さんが僕のところまでやってきて、問診票の補足質問を始めた。
「えっと、たいちさん・・・これなんですが。」
と、さっき書いた問診票の「悪性腫瘍」のところを指さす。
「部位はどこなんでしょうか?」
ほれ、きた・・・・っていうか、困ったな。
他の患者さんが大勢いる待合室で「乳がん」だなんて、言いたくはない。
咄嗟に、「胸なんです」
・・・と言った僕の答えで納得してほしかったのだが、
「ああ、肺ですか?」
「ああ、肺なんです。」
と2回目の嘘をついてしまった。
さらに、「手術は受けられたのでしょうか?全摘ですか?」としつこく質問を重ねられる。
「はい、一昨年全摘の手術をしました。」
と、これは本当のこと・・・。
ただし肺ではなく乳房なのだけど。
「今、飲んでいらっしゃるお薬はありますか?」
という問いには思わず、
「はい、ホルモ・・・。」
と言いかけてしまったが、慌ててごまかした。

事務員さんが退散したあと、いよいよ診察室に入って先生の診察になる。
先生は前の病院の先生が書いてくれた紹介状と、さっき僕が書いた問診票をじっと見ておられたが、
「肺をとっちゃったんだね・・・、そりゃ、呼吸が苦しいね。CPAPの圧力を少し下げておかないと肺に負担がかかっちゃうといけないからね。」
と、すっかり僕が肺がんであることを信じている様子で、僕は嘘をついたばつの悪さと申し訳なさにうつむいてしまった。
あとは鼻の中を見られて鼻腔内が荒れていることを指摘された。
ケモ中に頭髪と一緒に鼻毛も全部抜けてしまったのだが、まだ完全には復活しておらず、この時期は特に鼻腔内が乾燥して炎症を起こすのだ。
先生は鼻の中に器具を突っ込んで薬を噴霧してくれた。

そして、耳の穴まで覗いてくれた先生は、
○ 次回、受診時に鼻のレントゲンを撮らせてほしい。
○ 鼻炎のためのお薬を1週間分出すので、薬がなくなった頃に再受診をしてほしい。
○ 鼻水を採取したので、これに菌が混じっていないか検査に出す。
○ 帰りにネブライザーをやって帰ってほしい。
と、儀式のつもりでやって来た僕は、先生のこの勢いにすっかり面食らってしまった。

疲れてヨタヨタと病院を出た僕は、自分の病気を「肺がん」だと嘘をつき、あの診察の場で訂正できなかったことを悔やんでいた。
待合室で、「ここでは言いたくないので、先生に直接言います」となぜ言えなかったのか。
もうすでにこの病院へ行くのがいやになってきた。

患者と医師の間には信頼関係が必要だ。
次回1週間後の診察の時に、
「ごめんなさい、実は僕、乳癌なんです」
と、お詫びと訂正をすることを心に誓った。

ああ、それにしてもまったく面倒な病気になってしまったものだ。。。