今でも後悔していること・・・、それは「がん」になったことを会社に報告したことだ。
僕は社員数が4,000名程度の一部上場企業に勤めている。
頻繁ではないがテレビコマーシャルも流していて、この業界では少しは名が売れた会社だ。
そんな会社の僕の仕事は、社の本業から少し外れた特殊な仕事をしていて、会社の組織からは独立するような形で、社外の別のビルに分室のようなものを与えられていた。
僕を筆頭に、4人だけのこじんまりとしたみんな仲良しの部署だった。
僕がこの病気になったことは、迷うことなくこの4人には報告するつもりだった。
そもそも4人しかいない部署で隠しとおせるはずもないし、それにこれまで共に難しくて大変な仕事を乗り越えてきた同志たちに隠し事をしたくはなかったからだ。
この4人なら病気のことをちゃんと理解をしてくれるだろう。
手術前、病気のことを会社へ報告するかどうかをこの4人に相談したところ、「報告すべき」という意見だったので、僕はあまり深く考えることなく当時の上司に報告した。
僕の報告を聞いた上司はすぐに、
「そういう話を聞いた以上、担当執行役員と担当取締役とその上司の専務と人事担当役員には話しておかなければいけない」
と言われた。
僕の本心は、癌というのはそれだけでインパクトのある病気だし、周りの人にむやみやたらに心配をかけたくない。
ましてやワイドショー的なやじ馬の鑑賞の対象にされても困るので、ホントはこの話は上司一人の胸だけに収めておいてほしかったのだ。
しかし、病気のせいで他のことを考える余裕がなかった僕は、この上司が全く尊敬できない気の小さい上司だと言うことをすっかり忘れていた。
役員とはいえこれだけの人間に話が伝わるということは、これはもはや秘密を保てるレベルではない。
遅かれ早かれ僕のことを知っている人は、僕の病気のことを伝え聞くことになるだろう。
その証拠に僕が手術で入院していた時、役員しか知らないはずなのに役員以外の同僚やら部下たちがお見舞いに来た。
お見舞いに来ていただいたことには感謝しないといけないのだろうけど、反面、まだ廃液を抜くためのドレーンバックをいつも吊下げ、パジャマ姿の惨めな病人姿を晒したくはなかったというのも本音であった。
追い返すわけにもいかず10分程度雑談に応じていると、どうやら「癌」だということはぎりぎり伏せられていたようで、なぜか胃にポリープができたということになっていた。
しかし・・・。
それから数ヶ月後、ズラを着用して明らかに髪型が変わり、さらに10キロ以上痩せた僕を見て、詮索好きな人たちによって、僕が「癌」だということはたちまち社内に広まっていったようだ。
さすがに僕に直接、
「癌になったの?」
と確かめるような不躾な人はいなかったが、僕の部下の4人にはあれこれ聞いてきた人がいたようだ。
「たいちさんってなんの病気をしたの?癌なの?」
と。
部下の4人には迷惑を掛けたが、そこは上手にとぼけてくれたみたいだ。
でもこういう話は社内から社外へと・‥、つまり取引先やら下請会社にもじわじわと噂が広まっていった。
僕が悔しいと思うのは、社内や競合会社のライバルどもで、
「たいちのやつ、もうこれで終わりだな。ざまあみろ。」
なんて思われているのかと思うと、悔しくて涙が出そうになる。
また社の人事担当役員からも、
「たいちくんの今の仕事が病気の原因なら、もっとストレスの少ない部署へ異動させたほうがいいのかなぁ」
というような発言をしていたということが漏れ聞こえてきたりもした。
年次的にはそろそろ昇進してもいい頃なのだが、そんな場合じゃなくなってきた。
先輩方のブログを見ていると、遠回しに退職を勧められたり、契約社員に身分変更させられたり、不本意な部署に異動させられたり・・・と言うような記事を読んだことがあるが、我が社ではそういうことはなかったのでまだ良心的と言えるのかもしれない。
僕が病気になったことを一人の上司に報告したことが、もはや僕を知る人には周知の事実となった。
僕は報告したことをものすごく後悔している。
不幸にもこの病気になってしまった方には、「世間への病気のカミングアウトは慎重にしてほしい」と老婆心ながらアドバイスをさせていただく。
僕が「癌」であることを知ってしまった人は、決して忘れることはないだろう。
折に触れて記憶が蘇るに違いない。
しかし僕はこれ以上望まない噂を立てられないために、機会があるたびに火消しに努めている。
つまり、たいちの癌は、癌の中でも大したことがなかったのだと。
「乳がん」というのも恥ずかしいので、僕が立てたストーリーは、
○ 胸骨の裏に小さな腫瘍ができた。
○ 手術で腫瘍を摘出したが、良性か悪性か鑑別がつかない。
○ 残っている可能性があるので、念のため抗がん剤のような強い薬を打った
○ 現在は特に治療をしておらず、経過観察のために定期的に通院しているが元気いっぱい!
というものだ。
「人の噂も75日」というし、僕の場合は手術から1年以上経つのだからそろそろ心配しなくてもよくなるのだろう。
長くなったが、もう少し。。。
僕がいる4人だけの仲良しの部署で、僕のこの病気について必ず理解してくれると信じていたが、これは僕が甘かったかもしれない。
3週間に一度の点滴や副作用がきつい日には会社を休まざるを得なくなったり、体力の低下で行かなければいけないロケハンに行けなかったりすると、やはりこれを面白くないと思う人が出てくる。
これが部下であり、長年の親友だと思っていた人にそんな不満を持たれるとなおさら辛い。
口には出せない僕への不満が溜まっているようだが、それは分からないこともない。
僕が戦力外になることで、確実に誰かの負担が増しているのだから。
僕は社員数が4,000名程度の一部上場企業に勤めている。
頻繁ではないがテレビコマーシャルも流していて、この業界では少しは名が売れた会社だ。
そんな会社の僕の仕事は、社の本業から少し外れた特殊な仕事をしていて、会社の組織からは独立するような形で、社外の別のビルに分室のようなものを与えられていた。
僕を筆頭に、4人だけのこじんまりとしたみんな仲良しの部署だった。
僕がこの病気になったことは、迷うことなくこの4人には報告するつもりだった。
そもそも4人しかいない部署で隠しとおせるはずもないし、それにこれまで共に難しくて大変な仕事を乗り越えてきた同志たちに隠し事をしたくはなかったからだ。
この4人なら病気のことをちゃんと理解をしてくれるだろう。
手術前、病気のことを会社へ報告するかどうかをこの4人に相談したところ、「報告すべき」という意見だったので、僕はあまり深く考えることなく当時の上司に報告した。
僕の報告を聞いた上司はすぐに、
「そういう話を聞いた以上、担当執行役員と担当取締役とその上司の専務と人事担当役員には話しておかなければいけない」
と言われた。
僕の本心は、癌というのはそれだけでインパクトのある病気だし、周りの人にむやみやたらに心配をかけたくない。
ましてやワイドショー的なやじ馬の鑑賞の対象にされても困るので、ホントはこの話は上司一人の胸だけに収めておいてほしかったのだ。
しかし、病気のせいで他のことを考える余裕がなかった僕は、この上司が全く尊敬できない気の小さい上司だと言うことをすっかり忘れていた。
役員とはいえこれだけの人間に話が伝わるということは、これはもはや秘密を保てるレベルではない。
遅かれ早かれ僕のことを知っている人は、僕の病気のことを伝え聞くことになるだろう。
その証拠に僕が手術で入院していた時、役員しか知らないはずなのに役員以外の同僚やら部下たちがお見舞いに来た。
お見舞いに来ていただいたことには感謝しないといけないのだろうけど、反面、まだ廃液を抜くためのドレーンバックをいつも吊下げ、パジャマ姿の惨めな病人姿を晒したくはなかったというのも本音であった。
追い返すわけにもいかず10分程度雑談に応じていると、どうやら「癌」だということはぎりぎり伏せられていたようで、なぜか胃にポリープができたということになっていた。
しかし・・・。
それから数ヶ月後、ズラを着用して明らかに髪型が変わり、さらに10キロ以上痩せた僕を見て、詮索好きな人たちによって、僕が「癌」だということはたちまち社内に広まっていったようだ。
さすがに僕に直接、
「癌になったの?」
と確かめるような不躾な人はいなかったが、僕の部下の4人にはあれこれ聞いてきた人がいたようだ。
「たいちさんってなんの病気をしたの?癌なの?」
と。
部下の4人には迷惑を掛けたが、そこは上手にとぼけてくれたみたいだ。
でもこういう話は社内から社外へと・‥、つまり取引先やら下請会社にもじわじわと噂が広まっていった。
僕が悔しいと思うのは、社内や競合会社のライバルどもで、
「たいちのやつ、もうこれで終わりだな。ざまあみろ。」
なんて思われているのかと思うと、悔しくて涙が出そうになる。
また社の人事担当役員からも、
「たいちくんの今の仕事が病気の原因なら、もっとストレスの少ない部署へ異動させたほうがいいのかなぁ」
というような発言をしていたということが漏れ聞こえてきたりもした。
年次的にはそろそろ昇進してもいい頃なのだが、そんな場合じゃなくなってきた。
先輩方のブログを見ていると、遠回しに退職を勧められたり、契約社員に身分変更させられたり、不本意な部署に異動させられたり・・・と言うような記事を読んだことがあるが、我が社ではそういうことはなかったのでまだ良心的と言えるのかもしれない。
僕が病気になったことを一人の上司に報告したことが、もはや僕を知る人には周知の事実となった。
僕は報告したことをものすごく後悔している。
不幸にもこの病気になってしまった方には、「世間への病気のカミングアウトは慎重にしてほしい」と老婆心ながらアドバイスをさせていただく。
僕が「癌」であることを知ってしまった人は、決して忘れることはないだろう。
折に触れて記憶が蘇るに違いない。
しかし僕はこれ以上望まない噂を立てられないために、機会があるたびに火消しに努めている。
つまり、たいちの癌は、癌の中でも大したことがなかったのだと。
「乳がん」というのも恥ずかしいので、僕が立てたストーリーは、
○ 胸骨の裏に小さな腫瘍ができた。
○ 手術で腫瘍を摘出したが、良性か悪性か鑑別がつかない。
○ 残っている可能性があるので、念のため抗がん剤のような強い薬を打った
○ 現在は特に治療をしておらず、経過観察のために定期的に通院しているが元気いっぱい!
というものだ。
「人の噂も75日」というし、僕の場合は手術から1年以上経つのだからそろそろ心配しなくてもよくなるのだろう。
長くなったが、もう少し。。。
僕がいる4人だけの仲良しの部署で、僕のこの病気について必ず理解してくれると信じていたが、これは僕が甘かったかもしれない。
3週間に一度の点滴や副作用がきつい日には会社を休まざるを得なくなったり、体力の低下で行かなければいけないロケハンに行けなかったりすると、やはりこれを面白くないと思う人が出てくる。
これが部下であり、長年の親友だと思っていた人にそんな不満を持たれるとなおさら辛い。
口には出せない僕への不満が溜まっているようだが、それは分からないこともない。
僕が戦力外になることで、確実に誰かの負担が増しているのだから。