書きかけの記事がまだ残っている。
○ 2015年のニューヨーク・ボストンの旅行記
○ パワハラにあった僕の愛弟子の後日談
また3月14日の記事で現在はレトロゾールの効果測定中でしばらく病気のことは書くことがないと言った舌の根が乾かないうちに、病気のことを書かなければいけない出来事が起こってしまった。
タイトルに偽りはなく、癌が頭に転移した疑いが出たのである。
頭といっても脳ではなくて頭皮、・・・いわゆる皮下転移の疑いである。
 
話は昨年の11月まで遡る。
227 再発疑惑(その11)「さらに悪化」
239 頭が痛い
の記事で書いたように、気がつくと左後頭部にたんこぶのような大きな「できもの」ができていて、枕に頭がつけられないほど痛んだ。
これが2016年11月1日のことで、その時は頭を強く打った心当たりがあったので多分たんこぶだろうと思ってそのままにしておいたところ、ほどなくして腫瘍は小さくなり痛みも消失していった。


それから1か月経った12月ごろ、また同じ場所に同じような大きさの腫瘍ができ、同じように痛み始めた。
癌患者にとって「できもの」というのはビビる病変なので(これはおかしい・・・)と、教授先生は不在だったが大学病院に予約外で行って頭のCTを撮ってもらった。
触診してもらったところ、脳ではなく頭蓋骨の外側らしいようなことを言っていた。
 
後日教授先生の診察では撮影した頭のCTを見ながら特に所見はないということだったが、2016年11月7日にとったPET-CTでは後頭部が光っていた事実を知らされた。
「炎症でも光るからねぇ。特にめまいなどの症状がないなら問題ないと思うよ」
とけろっとした教授先生の物言いに初めてかすかな不信感を覚えた。
後頭部が光っていたなんて初めて聞いた。
この時の「できもの」も間もなく消失したが、またその1ヶ月後に同じように発現し、これまでと同様、3~4日後には消失した。

さらにその1ヶ月後にまた大きくなってきたので、(一体なんなんだこれは)と、とうとう我慢できなくなって、大学病院ではなく地元で有名な脳神経外科へ行ってもう一度頭のCTを撮ってもらったが、結果は異常なし。
もしこれが癌だったら大きくなったり小さくなったりすることはないとは思っていたが、何だか分からない大きなできものが頭にできたり消えたりするのはきまりが悪いし、MAX大きいときには痛みもある。

ネットで調べてみると、
○ PCなどで長時間同じ姿勢をとり続けることやストレスからでも僕のような腫瘤ができて痛みを発することがある
○ その他、良性の脂肪種、粉瘤の可能性がある
などの記述を見つけ、気になるなら皮膚科か形成外科を受診することとあった。
12月いっぱいまで仕事が極限状態まで忙しかった僕は、これを読んできっと姿勢やストレスからくるものだと自分を納得させた。
仕事のピークも過ぎたので、これから体が落ち着いてくれば自然に治るだろうと、もうしばらく様子を見ることにした。
 
さて、僕の足の陥入爪の闘いについては、
「259 激痛!陥入爪手術(その10)「To be,or not to be. 」で、町医者に見切りをつけたことを書いて終わりにしたつもりだった。
ちょっと辛口なことを書いてしまったが、爪が食い込んでいた部分にガーゼを詰めてくれたおかげで炎症も痛みもすっかり消失し、ケモの若干のシビレが残るものの陥入爪はほぼ治癒したと言ってもいいほどに回復した。
しかし詰められたガーゼは12月26日から2017年3月まで一度も交換していない。(医師に不信感を持った僕が病院に行かなくなったからなんだけどね。)
頭のことをネットで調べていて、「皮膚科or形成外科へ」と書いてあったことを思い出し、詰めたままの足のガーゼも気にはなっていたので、一度はさよならしたつもりになっていた皮膚科へ2ヶ月ぶりに訪れて、ついでに左後頭部の「できもの」を相談してみようと思いたった。
 
2017.3.13
振替休日を取って会社を休んだ僕は、皮膚科の前に心療内科を訪れた。
ステージⅣを宣告されてじわじわと気持ちが落ち込んでいった僕だったが、薬の力も借りてようやく事実を受け入れることができたのか、段々と気持ちが落ち着いてきていた。
それでも生きる希望や仕事への意欲は昔ほど戻ってこないし、時々とんでもなく悲しくなるほど気分がぐっと落ち込むこともある。
しかし精神薬に頼ることを癖にしたくなかったので、服用を中止する方向で先生に相談するつもりだったが、気分が落ち込んだ時の為に飲める頓服的な抗うつ剤があれば欲しかった。
しかし抗うつ剤にはそういった薬はなく、ある程度の血中濃度を維持しなければ効果がないということだった。
考えた末、単身赴任騒ぎのゴタゴタや仕事も一旦落ち着いたので、抗うつ剤のサインバルタと抗不安薬のメイラックスはもういらないということを先生に申し入れた。
抗うつ剤は急に止めるとよくないらしく、毎日1錠飲んでいたのを二日に1錠にして血中濃度を下げていくようにと言われたので、今回は15日分だけいただいた。
あとはお守りとしてデパスを頓服としていただいて、これで一旦終診にしてもらった。
 
そして次に向かったのが皮膚科だった。
相変わらず腫れぼったい浮腫んだ顔(失礼)をしていた先生に、今日は二つ相談がありますと言って、まず最初に足の陥入爪を見てもらった。
ルーペでガーゼを詰めた右足親指を観察し、「うん、これで治ったね」と2ヵ月ぶりにガーゼを外してくれ、伸びた親指の爪をニッパのような器具で切ってくれた。
「治ったね」と言う言葉を聞けて嬉しかったけど、ガーゼを外せば爪がまた食い込んでくるのではないかという不安は残る。
 
「さて、あとの相談というのは?」
ということで、約1ヶ月周期で発現する左後頭部の「できもの」と痛み、過去2回頭部のCT検査をしてもらって異常がなかったことを相談した。
左後頭部の「できもの」を触診した先生は、
「CTは脳を見るから頭皮のことは分からないんだよ、MRIじゃないとね。触った感じだと粉瘤のような良性腫瘍の感じがするね。」
とおっしゃったので、これについてはほっとした。

ついでに1か月ほど前に自分で気づいた左側頭部におできのような1センチくらいの固いしこりも見てもらった。
同じように触診した先生の浮腫んだ顔色が一瞬にして変わった。
「これはおできとかにきびとかできものとかではないね。僕は癌の皮下転移を強く疑うよ。ん?これもそうじゃないか?」
と、前額部と前頭部の小さなしこりを見つけられた。
全部で3ヶ所、左後頭部の大きなものを入れると4ヶ所あることになる。
「そうなると左後頭部の腫瘤もきちんと検査してもらったほうがいいね。大学病院だっけ?形成外科に紹介状を書くよ」
と言ってくれたが、癌が頭皮とは言え頭に転移している可能性があると聞いて呆然自失となった。

「先生、左後頭部のできものの生検って注射器で吸い取るようなもんですか?」
と聞くと、
「いやいや、切開して摘出するから日帰りでできるとは思うけど、1週間は頭を洗えないよ。そんな簡単なものじゃない、手術するんだよ」
というお話だった。
 
いただいた紹介状を持って家に帰り、妻にこのことを話すと妻の目からほろっと一筋の涙がこぼれた。
かわいそうに・・・軽度とはいえ義父の胃がんの発覚と言い、僕の転移と言い本当に心配ばかりかけている。

それにしてもこの半年の間で縦郭リンパ節への転移が分かり、今は頭皮への転移が疑われている。
顔つきのいい男前の癌だと思っていたがTAMの効果が切れた途端、仮面を脱いだ結婚詐欺師のように僕の財産(QOL)を少しづつ奪いにかかってきたようなそんな気がしてきた。
いや、微小転移とは言え腋窩リンパ節に20個も転移し、脈管・リンパ管への浸潤、硬がんってことを考えれば、最初から札付きのワルだったのかもしれない。

教授先生の「年単位で悪くなっていくよ」という言葉がまた頭の中に響いてきた。
家に帰るとさっきもらったばかりの抗うつ剤のサインバルタとデパスを飲んだ。