2016.3.8
月に一度のポートフラッシュのため、クリニックを訪れる。
今日はどのくらい混んでいるのだろうとドキドキしながら自動扉を開けたが、待合室は6割ほど埋まっている程度だった。
前月、前々月のように座るところがなく、寒風吹きすさぶ中、病院の外で待つ人もいたことを考えるとどうやら混雑(検診)のピークは過ぎたようだ。
それでも1時間は待たされたけどね。
診察室の中の先生も落ち着きを取り戻され、以前の慌ただしさなら相談どころか雑談を口にするのも憚れるほどだった。
あまりの混雑ぶりにこのクリニックを選んだことを後悔しそうになっていたのだが、これくらいなら全く許容範囲だ。
CVポートへはこれまで3人の先生から穿刺をされたが、一人は椅子に座ったままのスタイルで、他の二人はベッドに寝かされてから穿刺された。
ケモのためにルートを取る時はヒューバー針だったが、今はフラッシュだけなのでシリンジを使われている。
僕はベッドに横たわり、服を肩まで思いっきりまくりあげ、右鎖骨下のポートを十分に露出させた。
全摘した左胸を露わにするのにはやはり抵抗があって、少し服で隠しているところが自分でもいじらしい。
今日の先生は穿刺の前に全摘した左胸をぎゅっぎゅっと強く押さえて触診をしてくれたが、これが儀式だったとしても嬉しい安心感があった。
イソジンでポート周りを消毒したあとシリンジで穿刺されたが、穿刺中に先生から「痛いですか?」と声を掛けられた。
採血の痛みを1とすれば、ヒューバー針の痛みは0.7くらい、シリンジは1.3くらいだろうか。
どうこういうほどの痛みではない。
続けて先生から、
「たいちさんは身内に乳がんの方がいらっしゃるのですか?」
と聞かれた。
これは遺伝のことを仰ってるんだなぁと思ったので、
「母方の父が膀胱がんでしたが、がん家系ではないと思います。遺伝子検査はしなかったのですが、カウンセリングは受けました」
というと、大きくうなずかれていた。
「実は生まれながらの陥没乳首を気にしてて、しこりが見つかる少し前から頻繁に触るようになっていたので、僕はこれが悪かったと思っている・・・」
というと、
「癌ってそんなに単純なものじゃないよ」と一笑された。
穿刺の後は絆創膏を貼ってくれた。
服を整えながら、
「このクリニックで男性乳がんの方はいらっしゃいますか?」
と聞くと、
「開院してから300人の乳がんを発見したけど、過去に3人いました。男性乳がんは1%って言うけど、まさに統計どおりだね。」
とお答えになられた。
もう少しで(その方は存命ですか?)と聞きそうになったが、寸でのところで自制した。
採血も写真も今回はなしで、タモキシフェンはまだ1か月分残っている。
陥入爪は不思議にも自然に膿出がとまり、ようやく落ち着いてきた感じだ。
痛み止めのロキソプロフェンは丁重にお断りして、診察室を後にする。
先生にはまだまだ山ほど聞きたいことがあるのだけど、それはこれからの診察で追々お聞きすることにしよう。