私は普通のサラリーマンだった
自慢はほとんどなかったが、あるとすれば、50に届きそうな年齢からは想像できないほどに真っ黒い髪がしっかりと生えていたことだ。
ある日、部下の大学卒の者に指摘された。
「部長、珍しく白髪が一本生えていますよ。」と。
私は外見にあまり興味がないので、そのままにしておいた。
しばらくして、2年は経っただろうか、また違う部下から言われた。
「部長、白髪が目立つようになりましたね。黒い方が部長らしいですよ。」と。
その頃にはもう、私の白髪は髪全体の3割を超えていたように思う。
しかし、私は外見にあまり興味がないのでまたそのままにしておいた。
それからさらに月日は流れ、私は退職することとなった。
部下から送られた言葉は
「部長のトレードマークのフサフサの白髪は、私たちのなかで<仕事のできる人>の象徴でした。」
というものだった。
私は思った。
白と黒、これは音も立てず、長い月日を経て誰も知らないうちに変わっていくものなのだ。
そして、黒は白に変わるのだ。