小説(小さな奇跡)
満開の桜並木。 ひらひらと、風に揺られて花びらが舞い散っている。 その様子を楽しそうに男の子が見上げていた。 私も立ち止まり、桜を見上げようとした瞬間、「お姉ちゃん、桜好き?」 少し離れた所にいたはずの男の子が、私のスカートを引っ張っていた。「え?」「だから、お姉ちゃん、桜好き?って聞いてるの?」 スカートを左右に引っ張りながら、男の子はにっこりと微笑んだ。「あっ、ごめん。桜、大好きだよ」 私はかがんで、男の子の頭に手をのせた。 男の子は顔を真っ赤にして、満面の笑みを浮かべた。「ありがとう。来年も絶対に見に来てね」 その時、急に勢いよく風が吹いてきて、私は反射的に目を閉じた。 目を開けた時には、もう男の子はいなかった。 私は立ち上がると、「絶対に来るからね」 そう言って、桜の木を見上げた。