『アダムとイブのリンゴは割り算のはじまり』 | 一寸笑閑話

一寸笑閑話

日常のなかの、考えや、思いつきを書き散らしています。

 
 エデンにある黄金のリンゴを食べて 楽園を追放された「アダムとイブ」。
 彼らは930歳まで生きて、子孫を増やした、といいます。

 『旧約聖書』のなかでも「創世記」はメジャーな話だから、私くらいでも何とか頭の隅っこにあるんですが、聞きかじりな知識でしかなくて、はっきり読んだわけじゃありません。

 日本に この「失楽園」(小説のほうじゃなくて、アダムとイブの話です・笑)が伝わったのは いつなんでしょう?

 江戸時代の算数が、日本独自の発展を遂げて、『和算』とよばれ、世界でもトップレベルの水準にあったことは、以前、『ねずみは何びき?』の記事に書きました。

 その江戸時代の算数のバイブルともいうべき『塵劫記(じんこうき)』。
 これは、吉田光由(みつよし)という和算家が著したんですが、その吉田由光のお師匠は 豊臣の家臣で毛利“勘兵衛”重能(しげよし)といって、最古の和算家だといわれています。
 
 町人向けの算術書であり、そろばんをさらに広めたのが『塵劫記』であるといわれますが、師であった毛利重能は、その著で子弟へのテキストとして使用した『割算書』で、割り算の起源を説いています。


『そもそも、“割り算”というものは、「寿天屋辺連(じゅてやべれん;ベツレヘムのこと)」というところに、智恵と徳とをもたらすという名木があって、その霊験あらたかな果実のひとつを、人類の祖先である夫婦が ふたつに分けて食べた、ということに由来するのである。』

 つまり、アダムとイブが1つのリンゴを二つに分けたことが割り算のはじまりだ、というから、面白いでしょう?

 実際は リンゴはベツレヘムではなく、エデンにありますから、ちょっと違いますが、ともかく、江戸時代の人々は そう信じたにちがいありませんね。

 最近、冲方 丁(うぶかた・とう)さんの『天地明察(上)(下)』を読んで、ますます和算に興味を持ちました。
 
 『天地明察』じたいは、日本初の国産の暦が発明される過程を描いていますが、伏線には和算があります。ドラマチックに描かれ、そこには『算聖』と称された 関孝和が やはり天才として出てきます。
 主人公である、安井算哲=渋川春海 を通して、江戸の人々や暮らしが いかに活気があったか、うかがい知ることもできます。

 堅苦しい時代小説なのに、ちっとも それを感じさせないテンポの良いストーリーは、やはりすごいと思います。
 お話に出てくる和算の問題も、西洋数学の公式や定理を使わずに解けるというから 驚きでした。

 同じ難しいにしても、例えや問題が身近な内容の和算のほうが、西洋数学より よっぽど楽しく学べるにちがいない(事実、江戸時代は和算が日本じゅうで老若男女問わず、大フィーバーだったのだから)、と 思いました(^_^;)。