前回のお話し
 
 
今日はゆう子さんのお休みの日です。
毎日僕のご飯とお水を
新しく変えてくれます。
ゆう子さんの手にも久しぶりに乗りました。
ゆう子さんの手はじいちゃんとは違い
細くスベスベしています。
でも僕はじいちゃんのちょっと
ごつごつした手の方が好きです。
 
 
 
休みの日なのでゆう子さんは
じいちゃんの病院に行くそうです。
僕も連れて行ってほしいと
朝からゆう子さんにすり寄ってみましたが
鈍感なゆう子さんには
気づいてもらえなかったようです。
 
 
 
仕事の日は面会の終了時間に間に合わず
ばあちゃんのいる施設の『一休さん』に
行くのが精一杯のゆう子さん。
 
 
 
喜ぶと思いばあちゃんに
『明日はおじいちゃんのお見舞いに一緒に行こう』
と誘うとばあちゃんから思いもしなかった
言葉が返ってきたようです。
 
 
 
『行きたくない。
お父さんの病院には
女の人がお見舞いに来てるかもしれへん。』
 
理解できないゆう子さんが
よくよく聞いてみると
じいちゃんが浮気をして
ばあちゃんがいないことをいいことに
女性と会ってると暴走いえ
妄想しているようなのです。
 
 
 
そう言えば、数ヶ月前にも
ばあちゃんがデイサービスに行っている間に
マンションに女の人が来てる形跡があると
言っていたことを思い出しました。
 
 
 
ばあちゃんが言うには
食器棚のいつもと違う所に
珈琲カップが片付けてあったり
バレンタインにはチョコレートをもらっていたり。
 
しかもばあちゃんは相手の女性を
知っていると言うではありませんか。
 
 
 
残念ながら僕がまだこのうちに
来る前の話のようなので
ゆう子さんがだんなさんの
けいちゃんに話しているのを聞いて
僕は、『じいちゃんまじか?』
と少なからずショックを受けました。
 
 
 
それはゆう子さんも同じだったようで
『どんな人?何才くらいの人?』
と畳み掛けるように聞くとばあちゃんは
悪びれる様子もなく
『ゆう子くらいかもう少し若い人』
 
 
 
ゆう子さんは
『それはないわ〜私より若い人が
禿げたおじいさんと
なにが楽しくてお付き合いする?
おじいちゃんもう83歳やろ。
ありえへんわ!ないない。絶対ないわ!』
 
 
 
それを聞いてもばあちゃんは
納得できない様子でした。
しばらくすると
じいちゃんが家を出て行った。
女の人の所に行ったに違いない
と電話がありました。
ゆう子さんは腰を抜かすくらい驚いたそうです。
 
 
 
 
じいちゃんに確認すると
浮気を疑うばあちゃんから
ひつこく問い詰められ
根負けしたじいちゃんは
その日1日ホテルに避難したそうです。
 
 
 
ゆう子さんが聞くとじいちゃんは
「こんなじいさん相手にする人おると思うか?
そんなことあるわけないやん。」
その通りやなとゆう子さんもうなづいたようです。
 
 
 
しかしばあちゃんの妄想には困ったものです。
でももしかしたらじいちゃんは若い頃は
遊んでいたのかもしれません。
 
 
でも今や
 
妻が妬くほど亭主モテず。
 
 
 
ばあちゃんがそんなことを言ってるあいだも
じいちゃんはゆう子さんがお見舞いに行くと
開口一番
 
『おばあちゃんどうしてる?変わりないか?』
 
と自分のことよりばあちゃんを
心配しているじいちゃんが
なんだか不憫でした。
 
 
 
じいちゃん、
僕はずっとじいちゃんの味方やで。
だから早く元気になって帰って来てや。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

一休さんに無事短期入所を
果たしたばあちゃんですが
ゆう子さんの心配は
なくならなかったようです。
 
 
 
ゆう子さんはあれ以来仕事を終えると
職場から逃げるように出発。
マイカーでばあちゃんの施設の
一休さんに向かいます。
 
 
 
冬の17時半はもう暗く
夜の高速道路が苦手なゆう子さんは
一般道で施設に向かいます。
夕方の道路は混み
一休さんに到着する頃には
もう19時くらいになるみたいです。
 
 
面会が20時までの一休さんに
 
 
「遅くにすいません、すいません」
 
 
と頭を下げ、施設に駆け込み
ばあちゃんの部屋に向かいます。
 
 
 
一休さんはまだ新しく綺麗な施設で
ばあちゃんの部屋は2人部屋ですが
ばあちゃん1人だけなのです。
 
 
 
「ゆう子ちゃん!来てくれたの!
ありがとう。わぁうれしいわー」
ばあちゃんは大袈裟に喜びます。
 
 
 
しばらく話しをするともう20時。
今日もじいちゃんの病院には行けません。
じいちゃんの病院も面会は20時と決まってます。
 
 
 
ゆう子さんはまた一般道を走り帰ってきます。
だいたい時間は9時半くらいです。
また家族4人の弁当を買ってきたようです。
毎日仕事と一休さんの往復
ゆう子さんには晩ご飯を
作り置きして帰ってから手料理なんて
そんな体力も気力も器用さもありません。
 
 
 
じいちゃんみたいに
僕を鳥かごから出して遊んでくれるなんて
夢の夢です。
 
 
 
晩ご飯の時は決まって
旦那さんのけいちゃんと
娘のまこちゃんに
細かく報告し愚痴って
ストレス解消してるようです。
 
 
「入院してるおじいちゃんの
お見舞いに行かず
おばあちゃん所だけ行くのって
普通はないよなー
 
 
 
でもおばあちゃんが帰りたいって
言い出したら大変やから
一休さんに行くしかないわぁ
 
何が怖いって、おばあちゃんに
そう言われるのが一番怖いわぁ」
 
 
 
何となく僕にも察しはつきます。
 
 
言い出しかねないばあちゃん。
 
 
ゆう子さんがんばって。
僕も愚痴聞くやん!
 
 
 
 

最初が気になったらこちらから。

 

 

 

 

 

       第1章のエピソードが

       気になったらこちらから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残念ながらじいちゃんと一緒に

入院できなかった僕は

ぐれそうになりました。

 

 

でもか弱い僕はばあちゃんと一緒で

じいちゃんのいないうちでは暮らせません。

 

 

不本意ながら僕は

じいちゃんの娘のゆう子さんの

うちで預かられる事になったのです。

 

 

2人の入院を聞きつけた

ゆう子さんは驚いて飛んできました。

 

 

ゆう子さんによるとじいちゃんは

隣の人のベッドに手の届きそうな

ベッドに横になっていたそうです。

2人部屋くらいの病室に4人の

ベッドが横に並べてあり

 

 

ここは4人家族旅行の

ホテルの部屋かぁ

 

 

とゆう子さんは旦那さんの

けいちゃんにぼやいてました。

ゆう子さんの旦那さんを

じいちゃんもばあちゃんも

そう呼んでいます。

 

 

2人はけいちゃんが大のお気に入りなのです。

息子のいないじいちゃんたちは

話を聞いてくれる優しい

けいちゃんをほんとの

息子のように大事にしています。

 

 

 

そしてゆう子さんの心配は

どうもばあちゃんの事のようでした。

あのばあちゃんがしかもあの病院で

おとなしく入院していられるのか?

 

 

 

普段はじいちゃんの手厚い介護を

受けてる自由なばあちゃんです。

ゆう子さんはばあちゃんの性格を

よく知っています。

 

 

 

ゆう子さんがばあちゃんに

振り回されている様子は

僕も知っています。

 

 

 

ゆう子さんのぼやきは

まだまだ続きます。

 

 

 

僕はじいちゃんの様子を

もっと聞きたかったのですが

状態が落ち着いてると知った

ゆう子さんの関心は

専らばあちゃんのことのようでした。

 

 

 

ばあちゃんの病室は

二等辺三角形のような形で

3つのベッドはそれぞれ

壁際につけてありました。

残りの2人もおばあさんで

1人はずっと独語を話していましたし、

もう1人はずっと寝たまんまでした。

 

 

 

ゆう子さんが病室に来ると

ばあちゃんは「ゆう子ちゃん!」

話は止まりません。

 

 

 

ばあちゃんの言うには

ここでは話し相手もいないどころか

ずっと寝てるだけで

ベッド横のポータブルトイレと

ベッドだけが生活空間で

えらいことになったと

状況を嘆いていたそうです。

 

 

 

ゆう子さんは僕と一緒に

うちに来る?と提案しました。

 

 

 

ゆう子さんちはゆう子さんも

フルタイムで仕事をしているので

昼間はばあちゃんは1人になります。

 

 

 

しかし

 

 

 

すでにばあちゃんは

行動を起こしていたのです。

 

 

 

 

以前からお世話になる

ケアマネジャーの

谷野さんに電話をし

一日も早く退院したいと訴えてました。

 

 

 

時折マンションを訪ねてくれ

色々相談や話を聞いてくれる

谷野さんは自転車に乗り

病院に駆けつけてくれました。

 

 

 

ばあちゃんの性格をよく知る

谷野さんはじいちゃんの入院中

ばあちゃんを預かってくれる施設を

探してくれたようです。

 

 

 

「一休さんに行くことになったの!」

 

 

 

『一休さん?』

 

 

 

『一休さん』はおばあちゃんを

預かってくれる施設だと

ようやくゆう子さんは

理解しました。

 

 

 

ばあちゃんすごいなぁ。

僕なんて預かってもらう所の希望

誰も聞いてくれへんやん。

 

 

相変わらず僕の事を

女の子と勘違いしたままなのか

碁石をお腹の下に入れると

ニヤニヤ、いえニコニコするじいちゃんですが

この前から咳が出て少ししんどそうです。

 

 

 

「風邪やと思うけど

お母さんにうつしたらあかんから

病院行くわ」

 

 

ばあちゃんを心配したじいちゃんは近くの病院に行きました。

肺炎になってるから入院と言われたじいちゃんは

 

 

 

「家に介護せなあかん

家内がいるから無理ですわ〜」

 

 

そう言うてきたとばあちゃんに説明してる

そんな時、電話が鳴りました。

 

 

 

そうですか、そうですか。

と聞いていたじいちゃんは電話を切ると

 


「お母さん

藤田病院に一緒に

入院することになったで」

 

 

心配した先生が紹介書を書いてくれた病院に

なんと夫婦で入院出来るように手配してくれたようです。

 

 

 

ばあちゃんはその病院に入院することに不満そうでした。

 

 

 

その病院は姑のお千代さんが昔

短期間入院していたことがあり

古くて狭い病室の

ばあちゃんには余り印象が良くない病院だったのです。

 

 

 

「嫌やわ〜あの病院。」

 

 

でも1人で自宅に残るのはばあちゃんにとっては

もっと嫌なことのようでした。

かといってばあちゃんのわがままで

入院できないじいちゃんに

もしものことがあったら

と思うとこれまた困るようで

 

 

 

ばあちゃんは観念し入院を決めました。

 

 

 

「じいちゃん!

僕も一緒に入院させてくれるんやね〜?」

 

 

 

 

ばあちゃんがいない家では

僕は自由です。

じいちゃんの大好きなビールの相手をします。

ダイニングテーブルに広げた毎日じいちゃんが隅々まで

読む新聞の上が僕の居場所です。

テーブルの上ではどうも滑ってしまい

居心地が悪いのです。

 

 

新聞の上で僕はじいちゃんが置いてくれた

餌をついばみます。

チョンチョンと新聞の上を歩いたり

じいちゃんの肩にとまったり。

帽子の上にだってとまります。

たまに帽子を脱いだじいちゃんの頭に間違ってとまろうとして

滑り落ちそうになったこともあります。

 

 

僕にとってじいちゃんと過ごす時間は

至福のときなのです。

 

 

ダイニングテーブルの横の台には

立派な囲碁台があります。

じいちゃんは囲碁の新聞ページを見ながら

白色の石と黒色の石を並べて遊びます。

僕は白色の石が好きなのでお腹の下に入れてかぶさります。

 

 

じいちゃんの石を並べる手がとまりました。

 

 

「卵温めてるんかぁ!そうかそうか〜」

 

なんか気のせいかうれしそうに、ニヤリとしたようでした。

 

 

デイサービスから帰ってきたばあちゃんに

 

 

「碁石を温めてたんや、こりゃメスやな」

 

 

 

違うでぇじいちゃん!僕男の子やねん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じいちゃんたちの朝ごはんは 

毎日だいたい決まってます。 

ご飯に納豆と味噌汁

ザ•古き良き日本食

あとは佃煮があったり漬物があったり。

焼き魚がつく時もたまにあります。

 

 

じいちゃんとばあちゃんはテレビを見ながら

朝ごはんを2人で食べます。

 

 

今日はどうやらテレビの中の人の話をしてるようです。

 


「この人は変わらんなぁ、いや〜あの人老けたわぁ」

 

 

「へーこんな事あるんやなぁ」

 

 

2人はよくしゃべります。

 

 

僕は食べ終わって鳥かごから出してもらうのを  

大人しく待っているのにそんなのおかまいなしの2人です。

 

 

「おばあちゃん、りんごむいたろか?」  

じいちゃんはじっとしている事がありません。  

切ったりんごをばあちゃんの前に出すと 

今度は洗濯機の中から洗濯物を取り出し 

慣れた手つきでシャツをハンガーにかけたり 

ベランダでタオルをピーンと伸ばして手際よく干していきます。

 

 

婦人服のブティクをしていたじいちゃんには

お手のものらしいです。

 

 

 

そう言えばじいちゃんは家の中でも 

いつも帽子をかぶっています。 

帽子姿のじいちゃんはなかなかの男前なのです。 

だからたまにお風呂上がりのサザエさんの中の

 

 

波平のようなじいちゃんにギョッとさせられます。

 

 

『もーびっくりするな〜』

 

 

あっ、電話が鳴りました。

 

 

どうやら今日はばあちゃんの週2回のデイサービスの日のようです。

お迎えの車がマンションに到着する前に電話があるのです。

 

 

「おはようございます、はい降ります。ありがとうございます!」

そう言うと前の晩に用意していたバックを持ち

ばあちゃんを乗せた車椅子を押して1階に降ります。

 

 

ばあちゃん、かつら忘れてる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じいちゃんは車椅子ごと

ばあちゃんを洗面所まで

移動させます。

『せーの』の掛け声で

ばあちゃんを立ち上がらせ

洗面台の前にある木の椅子に座らせます。

 

 

 

ばあちゃんは

洗面台の大きな鏡を見ながら

髪を丁寧にとかし

歯磨きをして顔を洗うのです。

ばあちゃんの髪はじいちゃんと違い

ちゃんと毛が残ってます。

でもおしゃれなばあちゃんは

それでは物足らないようです。

 

 

 

洗面所には

アデ○ンスとアート○イチャーで

オーダーメイドしたカツラが

2つ置いてあります。

体面を気にするばあちゃんは

何度も試着して

カツラを作ったそうです。

 

 

 

そんなばあちゃんを

じいちゃんは見栄っ張り

とうれしそうに言ってました。

 

 

 

今日は外出しないのか

カツラは付けないようです。

 

 

 

『出来ました!

よろしくお願いしまーす!』

 

 

 

ばあちゃんの大きな声に

じいちゃんは朝ごはんを

用意する手を止め

車椅子で今度は

ダイニングテーブルまで連れてくるのです。

 

 

 

 

『これしとこか?』

じいちゃんはテーブルの脇にある

カチューシャをばあちゃんの

頭につけてあげます。

前髪をカチューシャで上げたばあちゃんは

スッキリした顔になり可愛くなります。

 

 

 

その後決まってじいちゃんは僕に

『おはよう、ちょっと出て来るか?』

と挨拶をし

僕の鳥かごの入り口を開けようとします。

 

 

 

「やめて、やめて。ご飯食べるのに」

 

 

 

といつもばあちゃんに静止されます。

毎日毎日このやり取りが続きます。

 

 

 

もしかしてこの2人

寝たらこのやりとり

忘れてるんやろか?

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

じいちゃんの朝はばあちゃんを起こし

 

 

車椅子に乗せることから始まります。

 

 

千林商店街にあった洋品店『ピンク』の店の中で

 

 

10年以上前にばあちゃんは転んだそうです。

 

 

左足の股関節が折れて人工股関節になり

 

 

徐々に歩くのが不自由になりました。

 

 

用品店『ピンク』はじいちゃんがばあちゃんと

 

 

結婚してから始めた、今でいうブティクちゅうもんらしいです。

 

 

僕はようわかりませんが、ばあちゃんが

 

 

あの頃は店やってお客さんに買ってもろて

 

 

よかったなぁ、またやりたいわ。

 

 

といつも言っているので

 

 

儲かってたんかもしれません。

 

 

 

そう言えばばあちゃんはオシャレにはうるさいです。

 

 

たまに来る長女のゆう子さんに

 

 

『何かじじむさいなぁ、若いねんからおしゃれし。』

 

 

と僕から見たら若くもないゆう子さんに言います。

 

 

ゆう子さんが帰るとじいちゃんに娘のことを

 

 

『着たきりすずめ』と悪口を言ってました。

 

 

僕の親戚のすずめを悪く言うなんて、

 

 

しかもあのゆう子さんと一緒にするなんて

 

 

僕はちょっぴり、ばあちゃんを睨みましたが

 

 

ばあちゃんは全く気づいてません。

 

 

憎まれっ子世にはばかる。

 

 

僕はちょっとことわざにはうるさいんです。

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じいちゃんのうちは千林商店街から

 

 

ほど近いタイル張りのマンションでした。

 

 

6階までエレベーターで上がった奥まった扉の家でした。

 

 

玄関に入るといきなりたくさんの釣り竿が

 

 

飾ってありました。

 

 

じいちゃんは一番奥のリビングに僕を連れて行き

 

 

ベランダ近くの本棚の上に鳥かごを置きました。

 

 

そこは陽差しが明るくて千林の

 

 

鳥獣店の店先の暗い雰囲気とは全く違いました。

 

 

なんかええやん、すぐに僕はここが気に入りました。

 

 

ただ1つ気になったのは、じいちゃんと住んでいるばあちゃんが

 

 

明らか僕を歓迎していなかったのです。

 

 

『なんでそんなん買ってきたん?』

 

 

じいちゃんに言い放ったばあちゃんは足が不自由なのか

 

 

リクライニングのような椅子に座わりじっと動きません。

 

 

『手乗りにしたろうと思って』

 

 

じいちゃんはうれしそうです。

 

 

 

 

でも帽子を脱いだじいちゃんを見て

 

 

僕はちょっとだけ後ずさりしました。

 

 

背筋をピンと伸ばしハキハキ話すじいちゃんは若々しく見えましたが

 

 

頭はサザエさんのお父さんの波平のように

 

 

ツルツルだったのです。

 

 

大丈夫やろか?

 

 

こんな高齢の夫婦の家

 

 

僕の方が長生きするんちゃう?

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

じいちゃんは僕をじっーと見てこう言ったのです。

 

 

可愛らしいなぁ、うちに一緒に帰ろか?



忘れもしません、だって



誰かがうちに連れて帰ってくれる



なんて想像もしていなかったのですから。



今思えば僕もまだウブなひなだったのです。



後で僕はがっかりする出来事が起こるなんて



またウブなひな文鳥には



予想することさえ出来なかったのです。

 

 

 

以上が僕とじいちゃんの馴れ初めです。

 

 

 

小さな可愛い女の子に飼われる想像をしていた僕の



ちょびっとのがっかりは

 

 

 

じいちゃんのうちには、ばあちゃんしかいなかった事でした。

  

 

 

 

じいちゃんは店主に言われるまま鳥かご、高級小鳥のえさ

 

 

水浴び容器、とまり木にブランコ、、、

 

 

一式を揃えてくれました。

 


お会計を済ませるじいちゃん

 

 

僕より高いやん!

 

 

つづく