
安定は、時に人を不安定にする。
結局、ないものねだりなんだ。
優しく握り返したつもりの手は
気付けば、彼を放すまいと必死に握り締めていた。
愛おしく指でなぞった唇には、
きっと爪を立てて傷つけてしまった。
思い通りにいかない歯痒さの中で、
また、思い通りの“思い”が何なのかも解らないまま
これでいいの
これでいいの、って
呪文みたいに唱えてここまできた。
永遠なんてない、
そう気付いたのは、もういつのことだったか忘れてしまった。
経験は人を賢くする。
そして時に、臆病にする。
疑心暗鬼な毎日の中で、その憶測や妄想が現実との境を失う時、
あたしは少しだけ幸せすらおぼえる。
何もなかったひと月前より、不安定ながらも今の方がずっと刺激的で幸福。
そう思える余裕さえ幸福。
ひとりの夜、
携帯から聞こえる彼の声が眠気を誘う。
彼の“愛してる”と“大好き”の違いを悟ったあたしの耳に今夜響いたのは、
『大好き』。
不安定は、時に人を安定させる。
結局、ないものねだりなんだ。

