なんなの、なんなの、アイツなんなの!?

あんなの、教師なの!?そんなの許されていいのか、日本!

私…実はまだキ娘ってやつで…ごにょごにょ。
告白されて付き合ったことはなし。だって知らないのに付き合うなんてできないよ。

…ホントに訴えてやりたい。私のファーストキス奪いやがって。

気付いたら教室の前まで歩いてきてた。
教室で待ってた凪が寄って来た。

「葉実ちゃん、終わった?」

「え…」

そうだ、明日の数学の用事で呼ばれたのに、いきなりあんなことになるから忘れてた。

「ああ…うん、まぁ」

「葉実ちゃん?何か…あったの?」

ボッと頬が熱くなる。思い出したら…ダメだ。

「ななな何でもないよ?」

「そ、そう?」

その後は凪を引きずるようにして帰宅した。

帰宅途中では、凪が
「明日から新任する先生って、どんな先生だった?」

「…別に」

きっと顔一面に不機嫌が出てた気がする。

ホントに思い出せない、会ったことあるんだろうか…

嘘だとしても、ホントだとしても。
…私の昔の恥ずかしい写真なんて持ってたらイヤだし。

うぅ、してやられた気分。


「ただいまぁ…」

家に着くと、パタパタとママが出迎えてくれた。

「おかえり、葉実~。今日これからママちょっとお出かけしてくるから♪」

「これから?誰と?」

「パパと♪」

まだまだラブラブな夫婦で…。
でもそれは娘の私にも何か嬉しい。

「分かった~楽しんできてね」

「そうそう、今日ね、靂くんが来ることなってて…」

靂くん?誰?
きょとんとする私に、ママは。

「あら、覚えてないの?あんなに仲よかったのに…昔は靂くんと結婚する~とまで言ってたのに♪」

はぁ!?誰が?私が?

「ママ…誰なの、靂って」

「草薙靂くん、今日からこっちに戻ってきてね、そうそう、葉実の行ってる高校に赴任するって言ってたかも♪」

ま、まさか…

草薙って…

アイツのこと!?

「…すごく混乱してる…私…」

「来たら、お茶でも出しておいてね♪あまり遅くならないようにするから、待っててもらって」

「イヤイヤイヤ!速攻帰ってもらう!」

「…どうしたの?あ、もう会ったの?」

「ああああ会ったけど…」

「じゃぁいいじゃない、じゃ、ママ行くからね~」

バタン

「ま、ママぁ…勘弁してよぉ…」

next
俺は草薙 靂、今日から高校教師になれた(笑)

赴任先は、羽ばたき学園。進学校で有名…らしい。

そ。俺、初めての赴任先なわけ。
ここの土地も初めて。
…まぁまるっきり初めてと言う訳じゃないんだけど。
昔、ちょっと…な。

ま、それはいいとして。
なんでここに雑誌で見たことのあるやつが寝てるのかねぇ。
あ、ここって藤宮 臣のいる学校だったっけ。
男に興味はござーせんのでね。


ま、始業チャイムなったことは伝えたし。ここにいるくらいだから頭はいいんだろうから。

さて、俺はなんでここにいるのかは…
そりゃ迷ったからでしょ(笑)
無駄に広いよな…この学校。

さて、まずは職員室探しを始めようか。


…15分後。

ようやく職員室到着。明日から、2年生の数学を教えるんだと。

「草薙先生、ちょっといいですかな」

「なんでしょ、教頭先生」

「いやー、草薙先生若いから、生徒達にはどうしても身近に感じられると思うので…。まぁそれが長所でもありますが、生徒達には節度を持って、接するようにですね―」

あ~、この手の話苦手なんだよな。
俺は、生徒にとって身近な存在であり、まぁ身近な人生の先輩であり。
あとは生徒自身が道を見つけるわけだから。それでよくね?

「あー…言いたいことはわかりました、気を付けます」

「お願いしますよ」

数学担当で、まぁ教材室として、使ってないらしい旧校舎の音楽室が与えられたぞ。

…うわ、床ギシギシしてるし。
しかも、数学関係の本なんて一冊もありゃしない。
ま、呈のいいお払い箱だな。
その方が俺には有り難いけど。

今まで一人でいたし、な…。


キィ…パタン。
音楽室に誰か来たな。
あ、さっきクラス担当の先生に数学担当の生徒を寄越すように伝えたから、そいつかな。
明日からだから、プリントや準備頼まないと。

「…あの~、2年の数学担当の御月ですけど。せんせ、どこ?」

女の子か…。御月…あ、なんか昔の思い出が蘇る名前…。

「あー、奥入ってきて」



…あ。

「2年数学担当の御月です。…草薙先生、ですか?」

御月…

「お前…葉実…?」

一瞬、彼女の体がびくっと動いた。
そりゃそうだろ。
いきなり名前呼んでしまったし。
反応あるってことは…やっぱりコイツ、御月 葉実か。



…美人になったなぁ。

「…名前、聞きました?」

「あれ」

コイツ、俺のこと覚えてないんでやんの。
ここは、感動の再会してギュ~してチュッの場面じゃないのか?

ガックリきて、深々と溜め息をついちまった。

「…あんた、なに?」

今度は俺が一瞬ビックリした。
…コイツ、こんな美人なのに口悪いでやんの。昔はこんな子じゃなかったのになぁ。

「俺のこと、覚えてないんだ」

「…全然」

「言ってくれるじゃないの」

おもむろに俺が立ち上がると、彼女はビクっと硬直した。

一歩進むと、彼女が一歩下がる。
逃げてるつもりか?
俺の方が、リーチあるんだぜ?

ぐっと彼女の腕を掴んで引き寄せ、俺の腕の中に。

彼女はビックリしたようで、もがき始めた。

「なっ、ななな何を…!」

「捕まえた」

「ば、バカ言わないで離して!」

「やだ」

「や、やだって…」

「久しぶりの再会なのに、覚えてないのか…残念」

「ひ、久しぶりっていつ…」

「ここは、ハグしてチューじゃない?」

ある意味これは言い訳。引き寄せられたのは俺。
生徒だけど、彼女は…また別。

思わず、口づけていた。

途端、思い切り足を踏まれ。

「っ~だぁ!!」

思い切り爪先きたぞ。腕の力が抜けて、するりと彼女はすり抜けた。

「…こ、こ、この…このエロ教師!いきなりなにすんだ!う、訴えてやるからな!」

それはまずい。

「いっつぅ~…訴えるのもいいけど。そしたらお前もヤバいって分かってる?」

「な、何が…」

「俺、お前の昔の恥ずかしい写真、持ってるんだけど」

…実はウソ。でもこうしないと、俺の人生もピンチだ。

「な、な…」

「頭のいいお前なら分かるよな~この意味、だから―」

「この、変態教師!運のいいやつめ!二度と私に近付くな!」

と、音楽室を勢いよく出ていった。
あーあ、悪者みたいなセリフ言っちゃって。

でも、ひとまず危機は免れた…ほ。
そっか…ここには、葉実がいたんだ。
しかもあんな美人になって。

…楽しい教師生活になりそうだ。

…藤宮 臣、高校2年目。

高校1年のとき、ここに来た。それまでは親の仕事先、イギリスにいた。

なぜ一人で戻ってきたのかは…それは、凪に会うため。

アイツは覚えてないかもしれないが…昔、小さいとき、よく公園で会って遊んでた。

その時から、小さくて白くて可愛くて…
名前も「凪」と覚えやすくて。

昔、親も仕事で家にいないことが多くて…よく公園で遊んでた時、初めて凪に会った。

でも親が外国に引っ越すことになって、俺も行かなきゃいけなくて…

それを凪に言ったら…凪、すごく泣いてた。
きっとその後で…なんだっけ、御月だったか?アイツに会ったんだろう。

イギリスでもやっぱり親は家にいること少なくて、それで猫を飼い始めたんだった。
初めて飼った猫がメスで、名前は俺が決めていいと親は言った。

そして、飼った猫に「ナギ」と名付けたんだ。
いつかまた会えるように、忘れないようにと…


にゃーん。

白い子猫が俺にすりよってくる。
それを俺は片手で掬い上げる。

「…ナギ」

校舎裏にいる猫の中で一際小さくて、コイツだけ白くて。
ノロいからいつもご飯にありつけるのは最後で、それでいておっちょこちょいで…

凪に、似てるし。

石段に座り、ナギを膝に乗せて、頭を撫でながら、そんなことを考えてた。

すると…

俺はいつの間にか眠っていたらしい。

「…ーい、君生きてる?」

…誰、だ?
知らない男の声が聞こえる…。

「ああ、生きてた。もぅ授業始まるけど…サボり?」

体を起こし、声の主を見上げると。
スーツを着こなし、20代の男の姿が。
…こいつ、誰だ?

「あ。…君、藤宮くんか。君、どこでも寝るのか」

「…何か」

「わはは、すごいな~。まぁ一応授業始まるのは伝えたから、あとは任せるけどな。じゃ、風邪引かないようにな」

そう言い残し、男は手をひらひらさせて去って行った。

…なんなんだ、アイツ。教師…なのか?

あ。

名前聞かなかったけど…ま、いいか。興味ないし。