昨日から、日本に住む私の母が来てくれています。

引越しの準備を手伝って、私と一緒に帰国する予定です。

ただ今回こんなことがあって不安定になってしまっているので、

予定を繰り上げて少し早めに来てくれました。


母が来てからかいの様子は少し変わった。

普段は私以外の知り合いになつかないのに、

1日で母になつき、笑顔も少し見せるように。

今日は母が床でご飯を食べている時に寄って行ったり、

「わうわうわう」と宇宙語で話しかけるようなこともあった。


今日はあられの手づかみ食べが初めてできるようになった。

1つつまんで、短くなると持ち替えて全部食べられる。

今までは何か渡しても潰しているだけだったのに。

あとは、少しだけ要求が出てきた。

鳥のぬいぐるみ。ボタンを押すと泣くのだけど、

自分ではできないので私のところに持ってくるようになった。


一方で、一人の世界に入ってしまうことや、

こだわりのようなものも増えてきた。

今までは部屋のドアを自分で閉めたら、

必ず「わー!」と叫んで私達を呼んだのに、

今はドアを閉めたらそのまま1人で横になってぼーっとしている。

砂いじりがさらに大好きになって、

放っておくとずっと、近くの歩道の植木の下で砂をつかんでサラサラ落としている。

散歩中はこちらに見向きもしない。

「抱っこ」と寄ってくることもなくなった。

私が帰っても反応しなくなった。


寂しい。息子に必要とされたい。

少し前まではこんなんじゃなかったのに。

いつかまたこちらを向いてくれるんだろうか?

食べられない・眠れない日々が続いていた。

他の子供との違いが目立ってきて、

プリスクールやプレイデートからも遠ざかっていた。

そんな中、申し込んでいた市の発達検査を受けられることになった。

これで必要があると認められたら、地区のサービスとして、

週1回の訪問が受けられるようになる。


教育センターでのミーティングでは、

3人の専門家がついてくれた。

言語・発達・心理のプロ、全員が女性。

おもちゃがある小さな部屋に通されて、ミーティングが始まった。

「心配事は?」と聞かれ

「私達は、息子が自閉症ではないかと思っています」と伝えた。伝えながら涙が出た。

そして今ある状況をすべて話した。こちらを見てくれない。笑わない。他の子供との違い、

言葉の遅れ…。つたない英語だったけれど、3人はとてもしっかりと耳を傾けてくれた。

主人も私の言葉にもらい泣きをしていた。

 

課題。言語療法士のリンダさんを中心に、課題が進んだ。

この日のかいは、私達の言うことに比較的耳を傾けていた。

手に持つボール。「ちょうだい」と言うと素直に渡した。

リンダさんが「かい!」と呼ぶと2回目で振り向く。

いつもは無視するパパの声にも振り向いた。

ただ、やはりひどい場所見知り。

しばらくは私にしがみついて離れなかった。

そして床に降ろしたところでまた課題。

指差しの方向を見るか、模倣をするか…。

かいはリンダさんが一度クレヨンで絵を描き、

その後自分がやるということを少し模倣できた。

そして、私の「だめ」という声も聞き取った。

そして何より、リンダさん達とは目が合う。観察できる。

ただ最後にリンダさんが紙を引き裂いた音でパニックを起こした。

普段からそのような感じの音が大嫌いで、

一度大泣きしたことがあり…けれど、「昼寝の時間だから」で片付けられてしまった。


「かいは自閉症ではないかもしれない。ただ、顕著な言語の遅れがある」

という診断だった。詳しいレポートは後日、直接家に持ってきてくれる。

他の人を怖がったり目を合わせなかったり…は、

早すぎて判断できないとのことだった。

昼寝の時間だからあまりフェアな判定ではないということをあちらは言っていたけれど、

いつも狭い部屋では泣き叫ぶこと、そしてあんなに泣いていたのに、

ミーティングが終わってから廊下を元気に走り回るかい。

やはり昼寝のせいじゃない…。

次のミーティングで相談しようと思い、その日はもやもやしたまま終わった。


この頃からかいはつま先歩きを始めた。

足の裏をしきりに気にする様子も出てきた。

16ヶ月検診で引っかかってから、

私は少しずつかいのことが気になり始めていた。

指差ししないし、「お腹がすいた」「のどが渇いた」そんな要求をあまりしない。

でも、共感を求めることはあった。

おもちゃを上手に鳴らしながら、いないいないばあをしながら、「すごいでしょ」「どんなもんだい」と顔で語りかけてくることが多々あった。

けれど意味のある言葉はまだない、「どうぞ」「ちょうだい」も「バイバイ」もできない。

検診以来、私たちはかいに色々教えようと頑張った。

英語の環境に囲まれていたかいに、

初めて日本語での声かけを意識して、始めた。

その結果かいは「バイバイ」「どうぞ」「ちょうだい」ができるようになった。

が…私が不安定になっているのもあったからと思う。

かいはどんどん不安定になり始めた。

夜、寝なくなった。今までも夜泣きはあったけれど、

3時頃から30分おきくらいに起きる。それも何かを怖がっているかのように、泣く。

おっぱいですぐに寝るんだけど…頻繁に起きるようになった。

ある時、大変なことに気付いた。

いつものようにベビーカーにかいを乗せ、車でお買いもの。

エレベーターの前でかいを覗き込んで「今日は疲れたね?」

…合わない。視線が合わないのだ。

こちらが覗き込んでも、目を合わすのを避けるかのように逸らす。

どこで何度やろうが同じだった。かいはこちらが目を合わせようとしても、

視線が合わないのだった。

どうしてこんな大事なことに気付かなかったんだろう。

書いていても涙が出てきます。

それからかいはぼーっとすることが多くなった。

機嫌がいい時は寄ってくる。

でも目の焦点が合っていないことも多くて…

そしてひどい人見知りと場所見知りが復活した。

今まで楽しく遊んでいたジムも、

泣きながら外に逃げ出そうとする。

外に出れば砂のある場所に行き、手で掴んでサラサラ落とす…

しばらくそれを繰り返す。

公園に行けば同じ滑り台の下にもぐって砂をサラサラ…

そして同じ段差を上り下り。

いつからこうなったんだろう???

バイバイはできる。

いないいないばあもする。

あやせば笑う。でも…

すべてのコミュニケーションはかいからの一方的なもののように思えた。

ある日、かいが寝てから主人とまた大喧嘩した。

きっかけは、私が主人に朝早く起きてもっとかいと関わってほしいと言ったことだ。

「お前が『駄目になる』とか言うからかいが駄目になるんだ」

「もう日本に帰れ」

その言葉に号泣した。自分でも驚くくらい涙が出た。

そのまま日本にいる母に電話して泣いた。

「かいは絶対おかしいのに…」そればかり繰り返した。

電話が終わってしばらくして…

「かいはちょっと変わっているだけだと思っていたけれど、どこかおかしいのか?」

と、主人が初めてかいの発達を口にした。

「…自閉症かもしれない」

私は初めて主人にそのことを伝えたと思う。

それから主人もネットで自閉症のことを調べ始め、

あまりにもかいがそれに当てはまっているので絶句した。

夫婦で後悔の日々が続き、家には重い空気が流れた。

かいには明るく接してるんだけど、涙が出たりしてうまくいかない。

そしてかいはどんどん笑わなくなっていった。

今までは運転中も後を振り返ると目を合わせて「にこっ」と笑っていたのに。

布団の上で体操するとずっとこちらを見ていたのに。

いつしかそんなこともなくなった。

階段をすごい勢いで転げ落ちるのはこういうことなの?

まだ、これを書いている今も受け入れられない。