遥か昔。
まだ私が小学生の頃の話。
ある日の夕方、
父がほろ酔いでご機嫌な様子で帰ってきた。
確か社員旅行から帰ってきたところだったと思う。
父
「お土産あるぞー!」
の声に、嬉々として私は父のもとに。
珍しいお菓子や珍味の中に
見たこともない茶色い塊が…
父
「これはイカ徳利っていうんだ。
イカでできているんだぞ
これで熱燗を飲むとうまいんだそうだ」
日本酒が好きだった父に
お土産屋さんが勧めたんだそう。
私たちも初めて見るイカ徳利に
興味津々
父が母に、さっそく作ってくれと言っている。
母は、お酒を温めなきゃと言って台所に。
その後ろ姿に父が
「電子レンジで温めればいいって言われたぞ」
母は、そうなの?じゃあ簡単ねとか言いながら
ご機嫌な父につられてニコニコしていた。
私は父に、イカをどうやって徳利の形にできるのか
たずねていた。
その時、
ピュ~~~~
ポンっ!!
大きく軽快な音がリビングに鳴り響いた
驚いて、父と顔を見合わせる私。
父も片方しかない目を見開いてる
きゃーー
お父さ--ん
母がすごい悲鳴をあげた
私と父はすっ飛んで母の元へ
電子レンジの扉が開いていて
中からお酒が滴っている。
イカ徳利はと見ると
グニャっと潰れてぺったんこ
「ええええええーー」
父のがっかりした声と顔
子供心になんだか父が可哀そうなって
私
「パパ私が大きくなったら買ってあげる
元気出して」
父は苦笑いして頭をなでてくれた。
潰れたイカ徳利を未練たらしく(笑)
コップに入れてお酒を注いで飲んだ父の一言。
「不味い・・・」
それ以来、旅行などでイカ徳利を見ると
父
「あれは不味い!
生臭くて飲めたもんじゃない」
と言っていた。
でも~
私、大人になってから気が付いたけど
あれはイカ徳利にお酒を入れて
電子レンジで温めるんじゃなくて、
お酒だけを電子レンジで温めてから
イカ徳利に入れるのが正解だったんじゃないかと…
イカ徳利のピューポンっの話は
父のお気に入りの笑い話になって
何度も楽しそうに話していたから、
正解は求めなかった
でも私の仮説は正しいと思う(笑)