入院した翌週の朝、いつもより早い時間に
担当医と、見たことのない白衣の男性医師がバタバタとやってきた。
担当医の女医さん
「朝早くすみません。入院時に受けて頂いた血液検査で
甲状腺に異常が見つかったので」
男性医師
「甲状腺の病気の担当になります○○です」
えっ
どういうこと
何やら甲状腺機能亢進症っていうらしい。
重症筋無力症の人は甲状腺の病気も併発していることが多いらしい。
増悪の真っ只中でボーっとしていたので
甲状腺の病気の薬が増えるってお話しか覚えてない
それからは、プレドニンが増える度に増悪を繰り返し
調子が良い時は午前中にリハビリと作業療法
午後はのんびりと過ごす。
夜は眠れずに物思いにふける…
という生活サイクルが出来上がった。
それが入院生活が2か月を超えると、猛烈なホームシックが…
朝から晩まで、帰りたい~帰りたい~
とにかく帰りたい
頭の中が、帰りたいでいっぱいになった。
担当の女医さんにお願いしても
「もうすぐプレドニンが30ミリに達するし、
ちょうど3ヵ月で退院できますよ。
ホントはもう少し入院伸ばしたいんですけどね」
いやーっ
いやじゃーっ
今すぐ帰りたいんじゃーっ
心の中で叫びつつ
「できれば早めに退院したいんです」
涙目で訴える。
「ん~無理ですね~」
おっとりニコニコ優し気におっしゃった。
こうなったら…
週1くらいで神経内科部長の回診がある。
部長を先頭に10人くらいの医師と研修医がぞろぞろとやってくる。
すごい迫力で医療ドラマみたい。
いつもはあまりの迫力に怯えてオドオドしてしまうが
この日の私は違った!
「先生!部長先生!」
神経内科部長
「ハイハイ、何ですか?」
「帰りたいんです!退院したいんです~!」
そこまで言ったら、涙が溢れた。
私は泣きながら訴え続けた。
「3月終わりの娘の誕生日までに帰りたい~
もう家に帰りたい~」
子供みたいにビービーと帰りたい~帰りたい~と
恥ずかし気もなく泣き喚いた
神経内科部長
「うんうん、担当の先生と相談してみるからね」
部長回診の後ろの方にいた担当女医さん
焦った顔で部長先生のそばに駆け寄る。
おんおん泣き続ける私の
横で真剣な顔でお話合いを10分程。
「ハイハイ、もう泣かなくていいよ。
あのね、明日からプレドニン30ミリになるでしょ?
それで様子みて、大丈夫になったら帰っていいからね。
そうすると退院は早くて24日だけど、娘さんの誕生日
間に合うかな?」
泣きすぎて声が出ないのでぶんぶん頷く。
「でもね、ひとつ約束してほしいんだ。
退院してもすぐに仕事に戻ろうとしないでね。
退院して1ヶ月お家でゆっくり静養して、
担当の先生の受診してオッケーもらってからにね」
担当女医さんを見ると、苦笑いで頷いてる。
やったーっ
その日からしばらくの間、看護師さんが代わるがわる来ては
「あの部長先生に直談判したんだって」
と笑われてしまった。
部長先生は声大きいし、迫力もあるし
怖がる患者さん多いんだそう。
実際に、研修医や医師、看護師には厳しいらしい。
でも患者にはすごく優しいので、部長先生のファンも多いそう。
私もファンになりました