診断までシリーズ前回の補足です。
(今回はちょっとマニアックな話です)


息子1歳1ヶ月の時、



『MRIに異常があります。
 白質容量が低下し、脳梁も薄いです。
 ただし、理由はわかりません。』



と突きつけられたら私たち家族…









この

『頭のMRIに異常がある』 

という所見は、私たちを大いに悩ませました。






内科医の私としては、
やはり検査をしたからには診断をつけたいのです薬


診断の基本として、
身体所見や検査の結果、
『異常がある』
『異常がない』
を組み合わせてどのような病気の可能性があるか(鑑別疾患)を考えます。






『白質容量低下 乳児』


『脳室拡大 乳児』


などと検索しても、出てくるのは必ず
息子とは、経過も症状も違う病気でした。


結局、画像所見からは何の手がかりも得られないまま、その7カ月後に臨床症状と遺伝子検査からアンジェルマン症候群の診断に至るわけですが、その後も自分の中で画像所見について引っかかっていました。








『2005年のアンジェルマン症候群の診断ステートメント』

というものがあるようです。

それには、
『MRIやCT上は構造上正常な脳を認める。軽い皮質萎縮や髄鞘形成不全を認めることもある。』

というようなことが書いてあります。そして、『一部の報告では異常のある症例があるが、あくまで症例報告レベルであり、1998年のステートメント通り大まかな構造上の異常はない』といった説明があります。



ということは、息子は特別??
アンジェルマン症候群の中でもますます神経発達が遅いのか???
(この場合、母親ではなくあくまで科学者?の視点からの疑問です)




そういえば、と文献を探したところ、しっくりきた論文があったので、こちらで紹介させてください(これが本題!)




Abnormal myelination in Angelman syndrome
(Harting, Inga, et al.European journal of paediatric neurology 13.3 (2009): 271-276.)

この論文は、著者の病院でMRIを受けたアンジェルマン症候群の児9人(7.5ヶ月~5才)のMRI画像について検討したものです。端的に言うと、

『2才まではそのほとんどに髄鞘化の遅延(運動発達同様、神経線維の発達が遅い)と白質・脳梁の異常があったが、大きくなってきた子は髄鞘化が完成していた』

『アンジェルマン症候群の頭部画像が正常と言われることで、まだ症状がはっきりしない乳児期に画像異常を認めたアンジェルマン症候群の赤ちゃんを誤診断へと導いてしまう』


という内容でした。

昔はMRIではなくCTのみで判断していたので、それらの異常を医者側がみつけられなかったのではないか、ともありました。



おぉ、うちの子はまさにそれ!キラキラ


このブログで息子の画像について記事にしたところ、他のエンジェルちゃんも画像異常もしくはグレーだったとの書き込みを頂き、この論文の主張はもっと支持されてもよいのだと思いました!







診断が早くついても結局発達の程度はかわらないでしょうし、予後も全く変わりません。ですが、診断がつくまでの周囲の不安やモヤモヤ感などは医学とは関係なくても取り去りたい!
画像所見を認めた時点で、アンジェルマン症候群の可能性がある、と知りたかった。






できれば、ちゃんと調べた上で
もしこの論文の主張が正しければ、

ステートメントを


『アンジェルマン症候群の頭部画像は正常な場合もあればしばしば乳児期には異常を呈する。』


と、書き換えてやりたい!










そのためにはもっと患児数が必要です。
(既にもっと症例数が多い新しい報告があるのかもしれませんがみつけられませんでした。ご存知の方がいらっしゃったら教えてください)

有志の皆さんから画像所見を集めて、数を増やして論文にして、日本から世界へ発信できるのにな~






なんてちょっと思いました。
自分の専門科が小児神経だったら絶対やったのになー。。