いきなりリビングから母さんの叫び声が聞こえた。
急いでリビングに行く。ドアをあける。
そこには 真っ赤に染まった母さんと赤くなった包丁を震えた手で
持っている父さんがいた。静まり返ったその場にはただ冷蔵庫の音と
包丁から垂れる赤い赤い母さんのしずくが落ちる音だけだ。
あとから来た妹が泣きだした。父さんの目から何かが流れる。
そしてぽつりとつぶやいた。
「哉、ごめんなぁ。」
父さん?なに?小さくて聞こえないよ?母さんが動かないよ?
なんで?その手に持ってるのは何?
父さんが動いた。手に持ってるものが父さんの首へと。
わかった。なにをやろうとしてるのか
「父さん!」
その声はか細い声で父さんの耳には届かなかった。
そして父さんも赤く染まってしまった。
妹が今度はもっと泣きだした。
どーしてどーして?俺はどーすればいい?
昨日まで笑っていた母さんの顔は泣いたまま動かない。
父さんも動かない。 みんな泣いている。
ペットのゴンもずっとほえている。
みんな泣いている。昨日までたくさんあった笑顔は
ひとつもない。
そうだ。
母さんと父さんは死んだんだ