丈瑠達が富士の樹海へ着き、薫も富士山頂へ登り終え、全ての準備が整って、そして、太陽が欠け始めた。
薫は富士山頂で、モヂカラを込めて結界を張る。
屋敷に残った栞はそれを感じて、モヂカラを同調させていく。
見えないモヂカラの結界が、街中を覆い始めた。
樹海では、あちこちの隙間が赤く光り始めた。
ナアナアナアナア-
ナナシの声が響き始める。
丈瑠達が、シンケンマルを構えた。
「行くぞ」
「はっ」
無数に湧いて出てきたナナシに、六人は向かい合う。
「やっぱりナナシだけか。楽勝楽勝」
ナナシを切りながら、千明が声を上げる。
「気を抜くな、千明」
流ノ介の声が飛ぶ。
「そ。多勢に無勢よ」
茉子も叱りながら、ナナシを次々に切り倒す。
日食終了までおよそ三時間。
長い持久戦になりそうだった。
志葉の屋敷
栞は遠くに確かに感じる薫のモヂカラに合わせて、結界を張り続ける。
モヂカラに誘われて、そこかしこの隙間が赤く光っては消え光っては消えして、怪しい空気が漂い始めた。
何とか結界が効いているのか、ナナシが出る事はなく、栞は更にモヂカラを込めた。
そして、皆既日食。太陽が月の蔭に完全に隠れ、辺りは夜と同様の闇に包まれる。
ほんの数分だが、外道衆の力が一番強くなる、一番危険な瞬間。
丈瑠達は、樹海の闇で戦っていた。
急に暗くなるので、目が闇に慣れない。
ナナシの気配だけを感じて切り倒していく。
恐れていたアヤカシは出る事はない様だが、ナナシだけでも大した数だ。
切っても切ってもどんどん湧いて出てくる。
「くっそう、さすがにきついな」
息の上がった源太が呟く。
「源太、弱音を吐くな。まだ半分だ」
近くにいた流ノ介が聞きとがめた。
「へいよ」
源太が改めてサカナマルを構え直した。