百火繚乱 -14ページ目

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

丈瑠と入れ替わりに、彦間と医師が部屋へ入り、丈瑠はそのまま座敷へ入った。
「丈ちゃん」
丈瑠がふらついて、駆け寄った源太の肩に手を付く。
「大丈夫か」
「さすがに参った」
日食の消耗戦の後、五日間、ほとんど寝てない上に、三途の川まで行って来た。
「でも俺たち、ちゃんと間に合ったんだよな」
源太が涙を拭く。
「・・・ああ」
丈瑠が素直に笑顔を見せた。
あの時、栞は確かに手を伸ばした。その手は届かなかったけど、栞はちゃんと帰ってきた。
「あとは私が付いてるから、もう休んで。そんな姿じゃ、栞ちゃんが心配する」
茉子の申し出を、今度は丈瑠も素直に受けた。
源太に付き添われて、座敷を出ようとした丈瑠が、立ち止まる。
「眠っている間の記憶はなかった・・・あまり、責めるな」
茉子に、半分顔を向けて言う。茉子が笑って頷いた。
「分かってる。悪いの丈瑠だし」
丈瑠が小さく笑って、今度は本当に出て行った。


医師の診察が終わり、丈瑠の代わりに茉子が栞の部屋に入った。
「丈瑠様は?」
栞が目で丈瑠を探す。
「少し休むって。栞ちゃん五日も眠ったままだったんだよ。その間ずっと、寝ないで付いてたから」
そう言われれば、丈瑠はとても疲れて見えた。
「栞ちゃんって、ほんとに丈瑠が好きだよね、こんなんでよく・・・」
茉子が言葉を切って、呆れた顔をする。
「付いてるの私じゃ駄目?」
栞が慌てて小さく首を振った。
茉子が笑ってから、真顔に戻る。
「ごめんね、栞ちゃん。薄皮太夫は私を捜してた」
栞が思い出す。確かに広間で、太夫はシンケンピンクを探していた。何か因縁があるのだろう。
「茉子さんのせいではありません。私が弱かっただけです」
「太夫に、同情したの?」
茉子に聞かれて、目を伏せた。
「そうじゃなければ、あんな抜け殻の様な薄皮太夫に、栞ちゃんが負けるはずない」
「・・・私を、新座さんの花嫁だと思っている様でした」
「私にもそう言った。あの女を殺してきたって」
栞が頷く。
「だからなの?その女性の代わりに栞ちゃんが切られれば、太夫の未練を消してあげられるとでも思った?」
栞が右手を握りしめる。さすがに茉子だ。全て見透かされている。
「何となく分かる。薄雪の事を考えると、私も太夫を憎みきれなかった。でも、それでも、倒さなければならない相手だから」
だから迷わず切った。
「分かっています。そうできなかったのは、私の弱さ。丈瑠様にもずっと言われていました」
いつか命取りになると。
茉子が栞の右手に手を添えた。
「でも・・・本当にそれだけ?」
茉子にじっと見つめられて、栞の視線が泳いだ。
「・・・薄雪の気持ちが分かりました」
ただ一人の相手をひたすらに愛しただけ。
「私も同じだと。その愛を失った時、自分は外道に堕ちない道理がどこにあるだろうか。と」
「栞ちゃん、それは違う。世の中、思いの叶わない人なんていっぱいいる。その人達がみんな外道に堕ちてたら、この世は大変な事になる。でも、そんな事はあり得ない。薄雪は、初めからドウコクに魅入られていた。だから外道に堕ちただけ」
それでも、薄雪の気持ちが分かった。
「だから死んでもいいと思ったの?丈瑠より先に、一人残される前に」
「そんなこと・・・」
栞が唇を噛む。
思わなかったとは言い切れない。
本当はずっと怖かった。いつ命を懸けてしまうかもしれない丈瑠のそばにいる事が。
覚悟はできているつもりだった。でもあの日、突然もう丈瑠は戻ってこないのだと知らされて、覚悟など何もできていなかったことを思い知った。地面が無くなったかのように、ずっと落ちていく感覚だった。再び丈瑠に抱きしめられるまで、何をしていたのかも定かではない。あの日から、ずっと怖くて堪らなかった。
それでも、丈瑠のそばを離れる事ができなかった。
そうだ。薄雪のためじゃない。ただ怖くて、楽になりたかっただけだ。
だからあの時、太夫のために死んでやろうと思った。薄雪の恨む女性の代わりに死ねば、太夫の未練を断ち切る事ができる。そして、苦しむことなく丈瑠から離れられる。
栞の目から涙が零れた。
今幸せなまま死んでもいいと思った。でも、切られる瞬間丈瑠が浮かんで、結局身をかわした。
そうでなければ、刀は心臓に達していた。
「何でそんな事。栞ちゃんがいなくなったら、みんなが悲しむと思わなかったの?丈瑠が、どれだけ悲しんだか分かってる?栞ちゃんが眠っている間、誰とも代わらずそばにいた。ほんとは、動かしちゃいけなかったのに、お姫様のお屋敷から連れて帰ってきたのも丈瑠だよ。もしこれが、私か、私たちの誰かでも、丈瑠はそんな事はしない。心配はしてくれても、動かすなって言われたら、向こうの屋敷に預けてくるし、ずっと付いていたりもしない。栞ちゃんだからだよ。誰も代わりになんかなれない」
「・・・ごめんなさい」
泣きながら、栞が謝る。
「もう、二度としちゃダメ。栞ちゃんの代わりはどこにもいない。栞ちゃんが丈瑠を失う事を恐れる様に、丈瑠も栞ちゃんを失いたくないんだよ。忘れないで」
茉子がそっと栞の涙を拭いてくれた。




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