百火繚乱 -12ページ目

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

黒子が襖を静かに開けて、薫が来たことを告げた。
薫が入ってきて、茉子は席を外す。
「申し訳ありませんでした」
枕元に座る薫に栞が謝る。
「謝らなくていい。お前はきちんと屋敷を守った」
「・・・ショドウフォンを」
薫から受け取ったショドウフォンは、枕元に置いてある。
「お前が持っていろ。栞の物だ」
「薫様?」
「それを持つ限りお前は侍だ。忘れるな・・・二度とアヤカシなどに惑わされるな」
厳しく言いながら、薫が辛そうに横を向く。
「姫?」
「姫と呼ぶな・・・言ったはずだ。お前しかおらぬと。志葉の血を引くものは、もうこの世に私と栞しかおらぬ。栞は私のたった一人の家族だ。私を、一人にするつもりだったのか?」
栞にしか見せない薫の涙。
栞が姫と呼ぶ事を、薫は嫌がる。
家臣ではなく、家族だと思っているから。
薫は丈瑠より孤独だ。仲間もいない。わがままを言うのも、涙を見せるのも栞だけだ。
分かっていたのに。薫には自分しかいないのに。
「薫様、もう大丈夫ですから、泣かないでください。姫は、泣いてはいけません」
「泣いてなどいない」
薫が横を向いたまま涙を拭いた。
せめて薫のためにだけでも、生きていなければならなかったのに。
「申し訳ありません」
自分の弱さを痛感する。
「謝るな。殊勝な栞は気味が悪い。もう二度と御免だ。栞は私の心配だけしておればいい」
強がる薫に、栞が微笑んで頷いた。


夜、休んでいた丈瑠が栞の部屋に戻ってくる。
栞は眠っていて、丈瑠は枕元に座って書を読み始めた。
ふと気配がして、栞を見ると泣いている。
そっと頬に触れると、栞が目を開けた。
まだ夢現の様に視線が彷徨う。
「栞?」
栞の視線が丈瑠の上に定まって、ようやく笑顔を見せた。
「夢を見たのか?」
栞が曖昧に微笑んで、丈瑠の手を不安そうに握る。
あの時、丈瑠の手を拒んだ栞を思い出す。
「・・・栞にとって、生きる事は辛いことか?」
目を合わせずに丈瑠が問う。
とても静かで、悲しみを含んだ声。
「眠っている栞の顔は、とても穏やかで、もしかしたら、このまま眠らせてやった方がいいんじゃないかと何度も思った。でも、それでも目を覚まして欲しかった・・・俺のために」
だから無理矢理、嫌だという栞を連れ戻した。
栞が、驚いた顔をする。
「・・・眠っている間、ずっと夢を見ていました。私は森の中にいて、丈瑠様の声がずっと聞こえてた」
『俺を一人にするな』
泣いている様なとても悲しい声だった。
夢だと思っていたのに。
「・・・丈瑠様にとって、私は必要ですか?」
恐る恐る尋ねる。
丈瑠を必要としているのは、栞だけだと思っていた。
丈瑠が、寂しそうに笑って、頬に触れる。
「お前は何でも分かっている様な顔をして、そんな事も分かってなかったのか?」
栞の目から涙が溢れた。
「だから簡単に、アヤカシに命をくれてやろうなどと思ったのか?」
丈瑠が手を強く握る。
丈瑠の手はこんなに温かいのに、丈瑠は今確かにここに存在するのに、どうしてこの手を離そうなどと思ったのだろう。
「ごめん、なさい、ごめん・・・」
栞の声が途中から嗚咽に変わる。
「もういい、悪いのは俺の方だ。勝手に伝わっていると思っていた」
そのまま丈瑠が近付いて、そっと口付けた。
「早く元気になれ。お前をちゃんと抱きしめたい」
小さく囁く丈瑠に、泣きながら栞が頷いた。



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