経営という仕事は、勉強よりも博打に通じるべき??エステー鈴木会長の言葉 | 生命(いのち)を輝かせる言葉の森

経営という仕事は、勉強よりも博打に通じるべき??エステー鈴木会長の言葉

前回の楠木氏の言う「経営センス」に通じるものがあるお話をひとつ。

実績のある経営者の言葉は、基本的なことを徹底する言葉と、もう一つ、世の中の常識の盲点を突く言葉の2種類があると思います。

エステーの鈴木会長は一旦社長を退いた後にリーマンショック後の立て直しのために社長復帰し、ご自身が独裁経営という言葉をつかって社業を伸ばしてこられました。

ダイヤモンドオンラインの記事では、次のような一節がありました。http://diamond.jp/articles/-/34569

(引用ここから)

よく次代の経営者を育成する「なんとかゼミ」ってやっているけど、あれみんな嘘みたいなもんですね。勉強で経営者が育つもんかって。トップの仕事って総合格闘技みたいなもんですよ。今の社長が手塩にかけて育てようとしても、そんな人はものになりませんわ。

 そんなことよりも、「お前に飲み代3000万円やるから1年間で使ってこい」ってね。日本で一番いい料亭行って、芸者呼んでどんちゃん騒ぎやった方が、ずっと金の使い方が分かるし、度胸もつくし、一緒に酒を飲む相手も選ぶようになる。お酒の席というのは、一番、人を見る目ができますしね。そのくらいやった方がいいですよ。

 知識がなんぼあっても、経営者にはなれませんわ。知識があればいいんだったら、MBA(経営学修士)出たやつが、みんなうまくいってるはずだけど、そんなことありませんよ。MBAはいい役員になるのには、向いていると思いますけれど。

 ただ、トップになるには勉強は体に悪い。それだったら丁半博打でもやった方がいいですわ。だって日本海軍の山本五十六以下のリーダーは、どうせ戦争のない時はやることないですからね、年中ブリッジ(トランプゲーム)をやっていた。鄧小平だってね、ブリッジをやっていたわけですよ。

 ブリッジと言うと格好いいけど、要はみんな博打をやってるんですよ。博打に何があるかって言うと、博打が一番、自分の五感を研ぎすますしね。経営は相手のあることなので、この瞬間に何をやるかを決めなくてはいけない。勉強は相手のないところでやっているシャドウボクシングみたいなもんです。あんまり役に立たんのですわ。

そうかと言ってね、真剣を抜いて勝負するっちゅうわけにもいかないでしょ。だからそれに一番近いのはね、丁半博打ですわ。競馬、競輪はね、自分が相対する相手がいないですからね。宝くじもだめですね。カジノも相手のいないゲームはだめです。一番時間効率いいのは、丁半博打だと思いますよ。清水次郎長じゃないけど、あれをもっと推奨すべきじゃないかな(笑)。

だってあれは瞬間的な判断力でしょう。丁(偶数)か半(奇数)か、だけでしょ。だいたい経営トップのやることには、「やるか、やらないか」。もうひとつ撤退するか。この3つだけなんですよ。それを優れて追いつめられた状況で、決断しなきゃいけない。その際に、だいたいいい情報はないですわ。手下がみんないい情報を持っていて、少しずつ小出しにするので、親分には全部は届かない。それで自分の存在価値を高めているわけですからね。経営スタッフとか経営企画って、だいたいそういう連中が多い。

 持っている情報の99%は出すけれども、最後のエキスの1%は自分がとっているんですよ。ですからそれがなくて、経営トップは未来を判断するわけでしょ。未来は誰も教えてくれない。だから経営学とかナントカ後継者塾というのは、あんまりあてにならないと思うんですが、どうでしょうか。


そうかと言ってね、ワントップじゃまずいと思っていましてね、いまエステー・リフォーメーションっていうのをやっているんですよ。現代サッカーのような全員守備、全員防御ができる組織を目指している。やっぱり私みたいに独裁であっても、チームワークは必要なんですよ。ただ、最後は会社というのは、独裁でないと動かんのですよ。そうでないとスピードが違う。

学校とか、政治というのは理路整然としてればいいわけでしょ。ところが会社っていうのは、とろとろやってると敵がいますからね。敵に食べられちゃうんですよ。スピード競争をやってる。だから決断力のあるトップがいないといけないんです。で、そのトップは、生まれ備わった博才があるとか、運が強いとか、勘がいいとか、度胸がいいやつとか。こういうやつがね、やっぱりトップとして出てきます。

 だから、僕なら僕が死んじまっても、何とかなりますよ。そうじゃなかったら、代が替わるたびに会社は潰れてしまう。ですから何とかなるんですよ。ただ、その場合も、トップを支える強烈な軍団がいないといけない。

 今やってるエステー・リフォーメーションは略してSTR。営業・スタッフ・役員と、大きく3つのSTRに区分けしましてね、それぞれのSTRが1日中ディスカッションやるんです、テーマを出してね。今解決すべき問題は何かっていうことを各部署の責任者が本音で議論するんです。これによって、すごくコミュニケーション良くなってきています。

 とくに、いわゆる内勤というやつは、だいたい蛸壺に閉じこもっている。飯食いに行くのもパソコンで連絡を取り合う、なんて話があるくらいでね。部と部の壁とか、課と課の壁があって、わざわざ別の部署に行ってフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションをしないんですよ。よその部門に行くとね、敵の陣営に殴り込みに行く感じがしているらしい。どうもねコミュニケーションが悪いんですよ。最大の問題はコミュニケーション、横断的なコミュニケーションなんです。

 例えば、役員会やってるとは言えね、朝から晩までテーマをもうけて徹底的に議論することなんてないですよ。それでSTRで、もっと儲かるようにするにはどうしたらいいんだとかいう話を、徹底的にやる。「ここにいる役員は3人ほどいなくなったら、すっきりすんじゃねーか」ってまず脅かす、挑発するわけですよ。

 で、そういうことをやったら必ず夜飲みに行くんです。飲みニケーションやってるんですよ。私それを本社だけじゃなくて、地方の支店でもやってるんです。私も大変。アル中になっちゃいますよ。だけど会社が変わってきましたから。

(引用ここまで)

トップは博打に強くならないといけない、
とはいえ、チームからの情報を仕入れるため努力をしてこそ、博打にも強くなれる。
というところがポイントなのだと思います。

情報を仕入れるのは、トップ以外にとっては自分の情報を囲い込むことで自分の利用価値を高めるものという