日本経済新聞の私の履歴書、松本幸四郎さんの言葉にはっとしました | 生命(いのち)を輝かせる言葉の森

日本経済新聞の私の履歴書、松本幸四郎さんの言葉にはっとしました


松本幸四郎さんは、九代目幸四郎として知らない人がいらっしゃらないくらいの名優です。

その幸四郎さんが、12月の「私の履歴書」の筆者になられていますが、その一回目(12月1日)の内容が素晴らしいのです。
この一年を振り返りつつ、自らの視座をしっかりと持って歩みを止めない姿勢に打たれました。

一部略しますが、少々引用させていただきます。

(第一回題名) 本当の夢

2011年も師走を迎え、「アマデウス」の舞台で地方を回っている。今年はどんな年だったのか。
個人的には私が九代目幸四郎を襲名してから30年であるばかりでなく、祖父が七世幸四郎を襲名して100年にあたる。祖父は1911年に会場した帝国劇場で襲名したのである。

しかし、何よりも3月11日、未曽有の東日本大震災に襲われた年として歴史に残るだろう。この時は東京の新橋演舞場で歌舞伎の舞台に立っていた。役者に何ができるかと考えたが、役者は舞台で演じるしかなく、1人でも、2人でも見てくださるお客様がおられれば、やらなければならない。スタッフの中には被災地出身の方たちもいたが、歯をくいしばって頑張っていた。その姿に頭が下がった。

役者は、勇気、感動、希望を与えるという、なかなかできないことを仕事にしている。常にそれを肝に銘じてきたつもりだが、大震災という悲劇が起きた中で、役者としての自分が改めて問われていると思った。

また、こうも感じた。原発や火力発電などで生じるエネルギーは、”補助用品”にすぎないということだ。昔はテレビや冷暖房がなくても人は生活していた。現代人は新たに生み出された”補助熱源”に頼り引っかき回され、収拾できなくなってしまった。

人間が一人生きていくエネルギーは、我々の心と体の中にあると思っている。自分の中に本来のエネルギーがあることを思い出していいのではないか。私自身が連日、生身の身体で演じている役者であるだけに、人間本来のエネルギーを信じていなければやっていけない。

(中略)

「ラ・マンチャの男」を長年やり続けてきたことが認められ、2005年、スペインのカスティーリャ・ラ・マンチャ栄誉賞を受賞した。夏にスペイン行きが決まり、マドリードの後、ドン・キホーテが巨人と信じた風車に出合うため、カンポ・デ・クリプターナへ向かった。丘を越えると4つの風車が現れた。その時、口をついて出たのは、「今まで見ていたのは夢のための夢だ。男60を過ぎてこれからみる夢こそが本当の夢」という言葉だった。

来年には古希を迎える。普通、「履歴書」は入社試験など新しい人生を迎えるために提出する。この履歴書を墓碑銘とせず、これからの夢の語る一歩としたい。

(引用ここまで)

少々読み替えて、これから見る夢こそが本当の夢とするなら、震災を乗り越えた私たちへのエールと受け取れないでしょうか。

私たちも、夢を語らないといけませんね。

私は、そう受け止めました。

ありがとうございます。