昨夜、NHKで放送された『歴史探偵』の平賀源内の回を観ました。

 本草学者として、多彩な才能を発揮した源内の西洋的な学問でのジャンル分けを超えた天才ぶりをわかりやすく伝えた良い番組であったと思います。

 番組では、 源内を当時の日本での区分に従って、「本草学者」と  位置付けていたのですが、荒俣宏さんが捉えているように、「博物学者」と捉えてもいいのではないかとも思います。ただ「博物学者」や「天才」 という言葉で評価したのでは、中華世界起源の本草学を日本的にアレンジしたものに基盤を置いたものである源内の学識の一端をしか伝えたことにならないのではないかとも思えます。欧米の同時期の学問との類似性を指摘するだけでは、源内を真価に迫れないようにも思えるのです。今回の放送 の中で特に興味を引かれたのは、源内が伊豆で見つけたボウショウ(硝酸ナトリウム)が今でも伊豆の温泉で採れるということでした。源内が見つけた鉱物としては石綿の方が有名ですし、硝酸ナトリウムは火薬の原料になる硝酸カリウム(硝石)と混同されそうなのですが、この硝酸ナトリウムの ことは、初めて知りました。 現在では、有害な物質となっている石綿や火薬の原料と関連付けられる硝石と並 ベられるよりは、遥かに よかったように思え ました。

 『大奥シーズン2』で描かれた源内の姿の印象が鮮烈に記憶に残っているうちに、源内の史実での姿を描いたこの番組を観ることができたことを、 嬉しく思います。

 科学や学問を、欧米で構築された近代のものを基準として捉えることから脱却して考えることに、 私たちは、そろそろ歩み出してもいいのではないかと、この番組を観て、私は、改めて思いました。