迦毛大御神 ③
阪野智啓氏 神輿画 元伊勢籠神社の神幸祭、葵大祭では「御生神事(みあれしんじ)」という神の再誕を示す重要な祭祀が行われるが、これは下鴨神社で行われる同様の神事とも深く関連しているという。名称の経緯として、籠神社の祭は元々「藤祭」だったが、賀茂社が「葵祭」と称するようになって以降、籠神社でも「葵大祭」と呼ばれるようになったと云われ、籠神社ともゆかりの深い京都・賀茂社の葵祭では、祭員が冠に葵の葉を付けるのに対し、籠神社では豊受大神ゆかりの藤の花を挿すのが古例となっている。 籠神社と賀茂氏との関係について、籠神社・海部氏に伝わる極秘伝には以下のようにある。「彦火明命、亦の名を天火明命・天照御魂神・天照国照彦火明命・饒速日命。また極秘伝によれば、同命は山城の『賀茂別雷神と異名同神』であり、その御祖の大神(下鴨)も併せ祀られているとも伝えられる。」とあり、海部氏と賀茂氏は近縁ということである。京都府宮津市大垣 丹後國一宮元伊勢籠神社 京都府京都市北区上賀茂本山 上賀茂神社・立砂 本ブログ『迦毛大御神②』で記したように『播磨国風土記』では、賀茂別雷命の父は「火雷神(天目一箇命/天之御影)」と記述されている。『先代旧事本紀』によると、天津神の「天御陰命」は、同じく天津神である「饒速日命」と共に天の磐船に乗って随伴した三十二神の一柱であり、護衛した神々を仏説を用いて喩えれば、仏の三十二相にあたる。「事代主神」の八重は「八十種好」と対応し、あわせて三十二相・八十種好となる。饒速日命を主神とする神々の顕現は、厳上観音・三十三身一尊ともいえ、各氏族の系図は微妙に異なるが、示される神の表現は氏族系譜に巧みに組み込まれており、明らかにされている日本の活きた知恵の一端である。 そして、『三輪髙宮家系』に於いて都美波八重事代主神(つみわやえことしろぬしのかみ)と天事代主籤入彦命(あめのことしろぬしくじいりひこのみこと)は別神、二柱の親子関係と位置づけられている。 天事代主籤入彦命は、「およそ天地の間、天上界地上界、宇宙間すべての物事を照覧し給う」於天事代 於虚事代 玉籤入彦 厳之事代主神と称され、子は鴨王である天日方奇日方命(櫛御方命)。 饒速日命の別名は櫛玉饒速日命、天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊。 賀茂氏の祖神、賀茂建角身命(かもたけつぬのみこと)の妻は伊可古夜日売(いかこやひめ)。子は玉櫛媛(たまくしひめ/活玉依毘売)である。『賀茂之本地』では、天津神の父を持つ賀茂別雷神(かもわけいかづちのかみ)の天の御名は阿遅鉏高日子根(あじすきたかひこね)とあるが、阿遅鉏高日子根は大国主神の御子でもあることから、国津神であるともいえる。しかし、大国主神・事代主神の神魂は、枝別れる雷光の如く、多次元同時存在の大物主として国之常立神を大元とされ、同じく天津神・饒速日命の神魂もまた大物主神である。そしてその別名は、倭大物主櫛瓺玉命(やまとおおものぬしくしみかたまのみこと)であり、三輪明神である。元伊勢籠神社 倭宿禰命 もとを正せば、勇猛でありながら幼い頃に悔いを背負って泣いてばかりいた素戔嗚命(すさのおのみこと)は天津神であるが、後に国津神の主柱ともされる特殊な立ち位置の神であり、「下のものは上のもののごとく、上のものは下のもののごとし」である。エメラルドタブレット『出雲国風土記』楯縫郡神名樋山(かんなびやま)条では、阿遅鉏高日子根の妻は天御梶日女命(あめのみかじひめ)。また、同一神ともされるこもある天甕津日女命(あめのみかつひめ)との間に、雨の神である多伎都比古命(たきつひこ)をもうけた。古老が伝えて言うには、阿遅須枳高日子命の后の天御梶日女命が、多宮村までいらっしゃって多伎都比古命(たきつひこ)をお産みになった。そのとき お腹の子供に教えておっしゃられたことには、「汝のお母様が御祖の向位に生もうと思うが、ここがちょうどよい。」とおっしゃられた。とある。『出雲国風土記』において、天甕津日女命の夫は赤衾伊能意保須美比古佐和気能命(あかぶすまいぬおおすみひこさわけのみこと)と記される。『出雲国風土記』「秋鹿郡伊農郷」「郡家の正西一十四里二百歩の所にある。出雲郡伊農郷(いずもぐんいぬごう)に鎮座していらっしゃる赤衾伊農意保須美比古佐和気能命(あかふすまいぬおおすみひこさわけ)の后、天瓺津日女命が国をめぐりなさったときに、ここにいらしておっしゃられたことには、「伊農よ。」とおっしゃられた。だから、足努る(あしはやる)伊努という。〔神亀三年に字を伊農と改めた。」赤衾伊能意保須美比古佐和気能命は、伊努郷の穀霊神。伊努神社の祭神であり、『延喜式』神名帳・出雲国出雲郡「伊努神社」の中に「神魂伊豆乃売(かむむすびいずのめ)神社」があり、合祀されたとされる。伊努神社 島根県出雲市西林木町伊豆能売神(いずのめかみ)は災厄を直す神であるが、同地域では日妻大明神(日乃都麻明神/ひのつまみょうじん)との関係が暗示される。 賀茂氏の祖神、賀茂建角身命の別名は三嶋溝杭命(みしまみぞくいのみこと)。「溝」は水を流すための細長い水路であり、悔い改め穢れを洗い流す意でもある。三嶋溝杭命の妻神、伊可古夜日売命を主祭神として祀る代表的な神社には、京都府亀岡市にある宮川神社があり、丹波国桑田郡の延喜式内社「神野神社」に比定され、神野神社の祭神は別雷神、配祀神として嵯峨天皇が祀られている。宮川神社 京都府亀岡市宮前町宮川神尾山饒速日命に随伴した三十二神《三十二人をして、並びに防衛と為し天降し供へ奉らしむ》○天香語山命:尾張連等祖○天鈿売命:猿女君等祖○天太王命:忌部首等祖○天児屋命:中臣連等祖○天櫛玉命:鴨県主等祖○天道根命:川瀬造等祖○天神玉命:三嶋県主等祖○天椹野命:中跡直等祖○天糠戸命:鏡作連等祖○天明王命:玉作連等祖○天牟良雲命:度会神主等祖○天背男命:山背久我直等祖○天御陰命:凡河内直等祖○天造日女命:阿曇連等祖○天世平命:久我直等祖○天斗麻彌命:額田部湯坐連等祖○天背斗女命:尾張中嶋海部直等祖○天玉櫛彦命:間人連等祖○天湯津彦命:安芸国造等祖○天神魂命:葛野鴨県主等祖○天三降命:豊田宇佐国造等祖○天日神命:対馬県主等祖○乳速日命:広湍神麻続連等祖○八坂彦命:伊勢神麻続連等祖○伊佐布魂命:倭久連等祖○伊岐志邇保命:山代国造等祖○活玉命:新田部直等祖○少彦根命:鳥取連等祖○事湯彦命:取尾連等祖○八意思兼神の児表春命:信乃阿智祝部等祖○天下春命:武蔵秩父国造等祖○月神命:壱岐県主等祖