前回の続きです。
おじいちゃんの姿がないことに気付いた私は、辺りを見回しましたが、また見失ってしまいました。
何だか周りの様子が変です。
見失ったり、急に現れたりするおじいちゃん。
子宝犬のところで私を不思議そうに見るおばさま方・・・。
落ち着かない気持ちのまま、私は寶生弁財天様へと向かいました。
すると、黒いくたびれた鞄を持ったおじいちゃんの後ろ姿がちらりと見えました。
辨財天様のお社の前を通り、右に曲がって階段へと向かうようです。
(現在は立て替えられていますので、当時と位置が異なります)
訳もなく私は走り出しました。
どうにも抑えきれない、何かが私を急き立てます。
もう夕方で、参拝の人はまばらになっていましたが、その人達の間を縫っておじいちゃんを追いかけました。
待って!おじいちゃん!私もう一度、せめてご挨拶がしたい!
もう一度ありがとうと言いたい!
行かないで!
知らないおじいちゃんなのに、そんな不思議な感覚を抱いていました。
荷物を抱えていたので、思うように足が進みませんでしたが、時間にしてほんのわずかだったと思います。
お年寄りの歩みが、そんなに早いとは思えません。
ですが、階段まで来た時にはもう誰の姿もありませんでした。
急いで駆け下り、左右の道を探すも、おじいちゃんの姿はありません。
交番のある交差点まで走りましたが、信号待ちをしている中にも、向こう側にも、どこにもおじいちゃんがいないのです。
その時急に私の胸の、心の奥からなんとも言えない感情がわーっと押し寄せて、私はそこに立ちすくみ、なぜだか涙がポロポロとこぼれてきました。
そう。
全て合点がいきました。
あのおじいちゃんは、神様でした。
他の人には全く見えない、私だけにしか見えなかった神様だったのです。
私を怖がらせないために、わざとくたびれた装いをして、ニコニコと笑顔で、でもものすごく威厳があって、人懐っこくて。
他の人には見えないから、誰もいない空間に私がお礼を言ったり、笑顔で会釈したりを気味悪がっていたのです。
私が
「神様は私がお詣りしているのをどう思っているのかな」
と思っていた答えを、自らがおじいちゃんの姿になって
と、私に直接教えて下さったのだ・・・と、その時になりやっと気付きました。
