ガチャ!
「ちょっと待って!ここ片付けるね!」
…え?
玄関を開けてすぐにしゃがみこんだ翔…
「いつもはもう少し片付いてるんだけど!」
翔が玄関の靴を無理矢理端に追いやった…
「どうぞ!」
それとは対照的に爽やかな笑顔で
俺をエスコートしようとする翔…
いや、どうぞと言われても
廊下が段ボールで塞がってるし…
「狭くてごめんね!」
…狭いのは間取りのせいではない…
廊下に段ボールを積み上げる神経が
理解できない…
「適当に座って!お酒用意するね!
その前に暖房!えっと…リモコンはどこだ…」
…嘘だろ……
なんだ…この部屋…
部屋と言うより……倉庫…?
本当にここで暮らしてるのか…?
「…あった!」
どこからかリモコンを探しだして
エアコンを稼働させたはいいが…
「…適当に座れって…」
「あ!ベッドで!」
「えっ…」
かろうじてベッドだけ物が溢れていなかった。
仕方なくベッドに座ると…
「ハイボールでいい?」
「…おぉ!」
一応…キッチンもあるみたいだ。
でも…ここから見てもわかる…
キッチンだけは…まともと言うか…
確か翔は料理をしないと
言っていたらだろうか…
「お待たせ!」
物だらけのローテーブルの上に
無理矢理グラスを2つ置いた。
「ごめんね~散らかってて~」
「…いや…別に…」
翔はローテーブルの前に座ると…
「今ちょっと仕事が忙しくてさ~
家で仕事するといつもこんな感じに
なっちゃうんだよ~」
「…へぇ…」
「あ!買ってきたツマミお皿に出す?」
「いや!いい!そのままで!」
「そう?」
「でも…なんか変な感じ!
智さんがうちにいるのが…ふはっ!」
「…俺も思う…」
…翔がこんなにだらしないとはな。
「…よかったら…泊まっていく?」
「…え?」
「あ!変な意味はないよ?
飲んだら帰るの面倒だし!ね!」
「いや…大丈夫…」
…ここでは寝れる気がしねぇから。
「…そっか。」
翔がしょんぼりした…
「…あのさ…」
「え?」
「……思わぬ形であの二人に俺たちのこと…
報告する感じになったけど…」
…???
「…そのぉ…俺たちって……」
翔が上目遣いで見てきた…
「…ん?」
「……付き合ってるってことで…いい?」
「っ、!」
ドキッとして噎せそうになった。
「…智さん…?」
「……いいんじゃ…ねぇの?」
「っ、!!」
翔が目を開いて、その後すぐに
顔をゆるゆるにして笑った…
「よかったぁ~!」
そう言って嬉しそうに酒を飲んだ…。