パタン!
玄関のドアが閉まった…。
「……っ、はぁ~…」
やっと息ができた感じがした。
閉まったドアをじっと見つめながら…
翔が帰っていく姿を思い出していた。
寂しそうな…拗ねたような顔…
ドアから出ていく後ろ姿…
肩がガクンと落ちていて…
ドアが閉まる直前に振り返り目が合った…
『…バイバイ!』
そう言って最後は眩しいくらいの笑顔だった…
俺は手を上げるのがやっとだった…
ドアが閉まり…呼吸をして……
持っていたスエットに視線を落とした…
「……翔の…匂いがする…」
これだけじゃない…
部屋の中に…翔の匂いが残っている…
ソファに身を預け目を閉じて…深呼吸をした…
一瞬…翔が俺に……キスをしようとした…
俺が止めなかったら……
確実に…してた………
あの瞬間を思い出すと…
胸がドキドキ鳴り出した…
手を胸に当てた……
俺……翔が好きなのか…?
…それとも…意識…してるだけ…?
翔が…俺を好きだから……
だから………
ガタッ!
ソファから立ち上がり
テーブルの上のマグカップを2つ掴んだ。
…俺のと…和の…
部屋の中にも和の物…と言うか…
和用に俺が買ったものがいくつもある…
「…っ、!」
俺はキッチンへ向かいごみ袋を出した。
そして引き出しを開けて和の箸を掴んだ…
「……きっと…もう使うことはない…」
パシャ…
それをごみ袋に入れた。
和の食器…洗面所の電動歯ブラシ…
寝室の枕…クローゼットの中の衣類…
気が付いたらごみ袋がパンパンになっていた。
それを玄関の所まで運んだ…
「…これも…」
玄関には和用に俺が買ったサンダル…
勝手に俺のサンダルを履くようになって…
和用にって買い足したお揃いのサンダル…
もうどっちがどっちのサンダルか
わからないくらい…
和は俺のサンダルを履いてたよな……
パシッ…!
俺は2つともサンダルをごみ袋へ入れた。
「……もぅ……これで…」
口をグッと詰むってごみ袋の口を結んだ。
不思議だけど涙はもう出なかった。
でも…まだ胸の中がザワザワしていた。
複雑な気持ち…そう表現していいのか…
どうか…
とにかく…行動を起こそうと決めた。
「よしっ!」
俺は着替えて出掛ける準備をした…。