智さんを待ちながら…何度も帰ろうした。






寒さが辛かったんじゃない。






傷心の智さんは…絶対に俺には

会いたくないって思ったから。







俺を見ると雅紀やニノを思い出す…







そしたら…

余計に苦しめるんじゃないかって…







俺じゃ智さんを癒せないって

わかったいるのに…








智さんを慰めるためじゃなくて…







俺がただ…

智さんに会いたくて仕方なかった…







俺のわがまま…






俺の身勝手…







こんな俺を見た智さんを何度と想像した。










きっと怒るだろうなって。






『帰れ!』って怒鳴られるかもなって。







それでも……








スマホであの日の智さんの動画を

無音で何度も観ていた…







俺の名前を呼ぶ智さんの口元…







ふにゃんと笑う表情…







俺に向かって手を振る仕草…






声がなくても耳に智さんの声がこだましてた…









「…会いたい…」






智さんに会いたい…






ただ…その思いだけで一晩中待っていた…。














「翔ちゃんっ!早く入って!」






「部屋がなかなか温まらない!あ!毛布!」






智さんの匂いが充満している部屋に入ると

頭がクラクラしてきた…







ソファに座らされ智さんに頭から

毛布を掛けられた…








「コーヒーしかないけどいい?」







そう聞かれていたけど答える気力がなかった…







智さんの匂いが付いた毛布に包まれると…

思考能力が停止した…






そして……






パタリとソファに身を預けた……











「翔ちゃん!?」






智さんの声が遠くで聞こえた…






大丈夫…大丈夫だから……






そう言いたいけど声が出ない…







そして、俺の記憶がそこで途切れた…。

















「翔ちゃんっ!翔ちゃんっ!」






毛布をめくって顔を見た…







「グー…グー…グー…」







「…へ?…寝てる…?」






寝てるとわかって体の力が抜けた…






「…よかった…」






安堵したらなぜか笑いが…








「ふはっ…ったく…人騒がせなやつめ…」







毛布を整えて体を包み込んだ。






そして…頬に手を当てた…







「…冷たい…」







風邪引かなきゃいいけど…







そのまま眠ってしまった翔ちゃんが

やっぱり心配になった。







起こして風呂に入れた方がいい?







でも…気持ち良さそうに寝てるし…







「…そうだ!」







寝室から掛け布団を持ってきて

翔ちゃんの上に掛けた。






そして、部屋の暖房の温度を上げた。









「頼むから風邪引くなよ…」






布団を整えて…翔ちゃんの顔を見た……






こう見たらホントイケメンだよな。






ちゃんとまともに見たの…初めてだな。










俺は…翔ちゃんの寝顔を

黙ってずっと見ていた…。