ちょっと脱線します。

SFAや営業支援というと、“スーパー営業パーソン養成ギプス”か何か特別なもので、これを使うと営業パーソン全員の業績が飛躍的に躍進することを期待される経営層やマネジメントの方は存外と多いのです。

更に意外なことに、営業経験者で且つ好業績を達成した経験者でもある筈の営業マネージャーや役員までも、同様な期待を寄せられるケースが非常に多い、というか、ほとんどすべてのケースがそうです。

営業行為は、個々人の人間関係、相性や、会社対会社の諸条件など、複合的な要素を土壌として行われていることは改めて述べるまでもありません。
数学の方程式のように、特定のアルゴリズムに案件情報を代入すれば、そのアルゴリズムを使う人、すなわち営業組織・チームや営業パーソン個人に関わらず、必ず成約や業績向上に結実する、そんな便利な万能ツールはありません。
人間は神様ではありません。

SFAをはじめとする営業支援の取り組みやツールの全般に言えることですが、スーパーマンの量産化を期待したり、歩留まりの高い養成カリキュラムを期待するのは、現実的ではありません。

人間なんて個々人が違っていて当たり前です。
相手も違う。
なのに成績優秀者と同じ行動をすれば同じような業績が出せるに違いないだなんて発想は、あまりに稚拙すぎます。

SFAはナッレジベースであり、リマインダーであり、分析ツールであり、改善事項の定着支援ツールでもあります。

「人が人が、云々」と文句を言う前に、できることが沢山ありますでしょう、それをシステマチックにやっていきましょう、というのが営業支援のベースにある考え方です。
一部の人しか旨くいっていない方法を続けて、人を入れ替えたり人件費を下げるやり方に固執するよりも、ドンドンやり方を見直していきましょう。
成果の出たやり方を残し、旨くいかないものは積極的に見直しましょう。

凡事徹底という言葉があります。
先ずは、
・すべきことをしているか
・すべきでないこと、避けるべきことをしていないか
・顧客のニーズや購買条件、購買プロセスにアテンドできているか
の3点を可視化し、確認できるようにするのが第一歩です。

第一歩を確実に定着させるためには、ドクトリンを明確にすることが先決です。

ドクトリンとは、戦略や戦術の上位にある基本的概念です。
会社の営業行為のベースとなる考え方、フレームワークともいえるでしょう。

どんな教育研修をおこなうのか、戸別訪問なのか店舗集客なのか、マーケティングはマスを対象とするのか個客とするのか、そんな一段高めの視点で営業活動全体の構成を見直していきます。

そんな馬鹿な、そんなのとっくに出来ていると思われる方が圧倒的大多数でしょう。
ところが、案外そうではありません。
仮に単純化して、
 ドクトリン -> 戦略 -> 戦術 -> 個々人のパフォーマンス
の4層構造で考える場合でも、一貫性、妥当性、網羅性といった観点で検証すると、個々人のパフォーマンス云々の前段階で疑問符が山ほど付いてしまうケースがほとんどなのです。

荒っぽい表現を許していただくならば、優れた作戦と武器を使うことによって、平均的な中庸層の人材に一層活躍していただきましょう、というのがSFA活用の目指す効能です。

そのためには、まずスーパーマン依存症を捨てることです。
精神論を排除することです。
他者依存と精神論に頼っていては改善はありません。
製造現場のQC活動に精神論はありません。

旧式の小銃を持たせ、使える弾は1日に5発、命中精度が低いから近づいて撃たないと当たらない。
武器は少なく近づかねばならないから白兵戦に持ち込まざるをえず、鬨の声を上げて銃剣突撃を繰り返す。
相手は若造で練度も低いかもしれないけれど、マシンガンをバリバリ撃ってくる。
どちらが強いですか?

白兵戦か、火力戦か、もっと高度に旧ドイツの編み出した電撃作戦か。
これがドクトリンの観点です。

SFA、営業支援ツールとは、人を替えずに方法を変えることによって、継続的な改善を行うためのツールです。
人を替えても、やり方が同じなら結果は大同小異ですよ。