今回この本を読んで、少しはわかったような気がしました。
勝負は試合の前についている! 米国スポーツビジネス流「顧客志向」7つの戦略/鈴木友也(すずき・ともや)

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例によってAmazonからコピペ。
大富豪、元スター選手、弱冠33歳のコミッショナー…破天荒な作戦、ルールの抜け穴、札束攻勢、絶対優位の交渉術…名誉と財産をかけて繰り広げられる戦いは、圧倒的な創造力に満ちている。
―米国スポーツビジネス流「顧客志向」7つの戦略。
この本を書いた鈴木友也サンは1973年生まれ。アクセンチュアから独立してNYでスポーツマーケティング会社を経営しているヒトです。
上述したこの本の内容紹介を見てしまうと、なんか相手を出し抜いてジブンの利益を追求するみたいな「ズルい」イメージを抱いてしまうかもですけど、決してそんなことはありません。
基本スポーツは相手がいなければ成立しないビジネスです。
対戦相手とは商売上のライバルでありながら、共存共栄していく必要がある点が普通のビジネスと違ってくる点ですね。
この本でも、こういったスポーツの特徴を踏まえて、さまざまな7つの事例を説明しています。
ワタクシはこの中でMLBのレッドソックスとドジャースの例が新鮮でした。
レッドソックスはこの10年間で最も経営革新に積極的だった球団として取り上げられています。
共同オーナーのヘッジファンドの投資家と、ハリウッドのTVプロデューサーの二人が設立した持ち株会社を中核に、レッドソックス、フランチャイズ球場、マーケティング会社、TV局を傘下に収めて、プロスポーツビジネスを展開していったのです。
まず本拠地球場のフェンウェイ・パークを座席の増設、敷地内の再開発などの手法で、「伝統ある」「ノスタルジック」な高付加価値の最大化を目指しました。

こういったことができたのも、レッドソックスが球場も所有していたからです。
おかげで、フェンウェイ・パークは1998年から10年連続で最もチケット代が高い球場であり、2003年から2010年まで、すべてのゲームのチケットが完売したという記録を持っています。 → Wiki
さらに球場デートイベントを企画して、さらに傘下のTV局でそれを放送して、と既存の経営資源のシナジー効果をこれでもかこれでもかと追求していきます。
この持株会社(フェンウエイ・スポーツ・グループ=FSG)はレッドソックスで蓄積したノウハウを、そのまま他のスポーツにも拡大適用していきました。
FSGはプロビーチバレーゲームの大会運営受託、NASCARに参加するレーシング・チームへの資本参加から、今ではプレミアリーグの名門リバプールFCを買収しています。
FSGの成功は、スポーツビジネスにおけるマーケティング手法はスポーツの種目を超えて通用することを示しています。
日本でも新潟アルビレックスがサッカーや野球のチームを運営している例を知っていましたけど、FSGほどシナジー効果を追求しているとは思えませんね。
もうひとつはドジャースです。
今から50年以上前に、球場のためにフランチャイズを移転した球団がドジャースです。
NYにいたドジャースは、球場の拡張を市に要求しましたけど、断られます。
当時のNYには、ヤンキースにジャイアンツと3球団が競合していたために、ドジャースは観客動員が伸び悩んでいました。
その時LA市は、今のドジャースタジアムの土地の無償提供と、市中心部から球場までのハイウェイ建設という好条件を提示しました。
プロスポーツのフランチャイズ都市というステータスを手に入れるために、球団に好条件を提示するという初めてのケースだったそうです。
そのため、ドジャースは球団経営の収益性・効率性を高めるためにそれまでのフランチャイズ都市に見切りをつけるという大胆な決断をして、東海岸から西海岸への移転を行った訳ですね。
今では当たり前のことになっていますが、球場を新しく作ってくれないからといってフランチャイズを移転するというのはスゴいことだと思います。
ワタクシは2000年にドジャースタジアムに行きました。
郊外でありながら都心部からハイウェイですぐに来ることができるというロケーションの良さは印象的でした。

http://blog.livedoor.jp/gaap33/archives/513657.html
この本は、スポーツビジネスの本ですけど、通常のビジネスやマーケティングの教育資料としても有用な本だと思いました。
U.S.でできていることがなぜ日本でできていないのかを考えてみたいと思いましたけど、それはまた別の機会に。