世論調査というものがある。全国1億2700万人の人口で、有効回答数は多くとも2000、通常は1000前後というのが基礎データである。つまり、1700強の市町村があることを考えると、一市町村に一人も回答者がいない場合も多い、ある意味すかすかなデータである。

しかしながら、マスコミ各社の調査を見ると、その傾向や概数はおおむね一致し、選挙を数回経験してきた立場から言ってもかなり結果予測までできるものである。不思議なことであるが、全体的な傾向は、わずかな母体数でもつかめてしまうということだ。

残念ながら7月中旬から末にかけての調査では、安倍内閣の支持率が不支持率を下回った。第2次安倍政権発足以降はむろん初めてのことである。しかし、そのこと自体には驚きはない。なぜならば、小泉内閣を除いては、そもそも支持率を5割キープしたような内閣は戦後ほとんどないし、最近ではこれほどまでに長期間(2年半)にわたって支持率と不支持率が逆転していないことの方が珍しかったからだ。

民主主義国家においては、3回も連続で同じ政党が選挙で勝つことの方が珍しい。そのくらい人々の気持ちは移ろいやすいものである。現状に多少なりとも不満があれば、もう一方の選択肢に「やらせてみよう」という気持ちが起きやすいのは、何も日本だけではなく、世界中のことである。先日伺ったオーストラリアでも全く同じことであった。

とはいえ、それは仕方ないよね、と言って済ませられることでは全くない。これほどまでに急激に国民の支持を失っているのはなぜか、政治に携わる与党議員は一人一人が真剣に、そして自戒を込めて考えなければならない。誰かの失言や、法案が悪い、などと言って人のせいにしてはいけない。むろん、原因を分析する中でそのような理由はあるだろうが、そのことも含めて結局は一人一人の議員に対して責任は連帯されるものである。それが、与党議員の責任である。

一言で言えば「驕り」なのであろうが、そんな簡単な一言で済ませるべきではなく、毎日の生活態度、発言等々、すべてにおいて国や国民、そして未来に対して責任を果たせているのか、国民の代表としてふさわしいか、反対や批判に対しても真摯に向き合っているか、日々私たちは自問自答しなくてはいけない。

初出馬の際には、誰しもが、「自分がいなければこの国は良くならない」という志を抱いていたはずである。それがいつの間にか、選挙に勝つため、自分のため、政党のため、になっていないか。

改めて、この厳しい一連の調査を目の前にして、与党、なかんずく自民党は、一人一人が上記のような自戒を真剣にするべき時だと思う。そこから、もう一度、この国で唯一の政権担当能力を持った政党として、しっかりと打つべき政策を打って国を前に進めなくてはいけない。